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侯爵家二男のカブラスは今日も、婚約者ではない貴族令嬢の腰を抱いて、貴族学園に登園した。

貴族と数は少ないが裕福な平民の通う学園。

カブラスの婚約者は平民だったが、この学園に通えるほどの資産があった。
その資産目的に侯爵がこの婚約を決めた。

その婚約のせいで、学園卒業後は平民と結婚し、平民に落ちることは確定してしまった。

どこかの貴族に婿入り出来ればまだ貴族でいられた。
傾いている実家の金銭援助のために、カブラスは売られたと解釈している。
しかし、平民に落ちても侯爵家以上の贅沢が出来る。
それだけは紛れもない事実だった。

「カブラス様」

声のした方へ顔を向けると、平民の婚約者がいた。
地味ではないが、派手でもない。
可不可なくそれなりの顔立ちの婚約者。

貴族も顔負けの流行りを先取りする衣装は、平民を蔑む令嬢すら見惚れる。
表では平民などと口では罵るくせに、裏で彼女の実家の商会と懇意にしているなど、よくあることだった。

「結婚式が待ち遠しいです」

婚約者のメルージュはカブラスに向かって微笑む。
隣に侍らせている令嬢のなど見えないかのように。

いつもそうだった。

彼女にはカブラスしかみえない。
盲目に彼を愛している。

「そうだな。僕も楽しみだよ」
「ふふっ」

彼女の喜ぶ台詞を言ってやる。

結婚すれば平民に落ちるのだから、今は好きにしても良いだろうと、カブラスは思っている。

メルージュだって咎めるようなことは何も言わない。
言われた所でどうということもない。

貴族に逆らう平民などいないのだから。

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