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十一
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屋敷に戻った侯爵家の面々は、積み上がった慰謝料を前に様々な反応を示す。
カブラスは陽気に喜んでいた。
一生楽な暮らしができる、と。
当主は、計算をしていた。
婚約破棄をさせないために、慰謝料の額を桁違いの金額に設定していた。
商会との縁を逃がすつもりはなかったのに。
半ば脅しのように店を引き合いに出しても、商会長は娘の婚約破棄を選んだ。
それでも、すぐに用意できまいと踏んでいた。
分割になればごねてやろうと思ったのだが。
ぽんと目の前に出してきた。
退路を断たれ、侯爵は婚約破棄を認めた。
まぁ、これだけの金があれば家の存続は可能だろう。
本来、慰謝料に課税はないが、常識外のこの慰謝料には税金がかかる。
三分の一は国に納めなければならない。
商会長は銀行を空にしたと言っていた。
それだけのお金が動けば、王立の財務課が動くはずだ。
脱税は…できない。
金を守るための警備も必要だ。
金を手に入れたのに、その為に必要な経費の算段ばかり気にしていた。
次期侯爵は、不安を抱いていた。
何か薄ら寒いものが背後から迫ってくるような。
商会長はすぐに金を使わない方がいいと忠告した。
商会長が黙って金を支払ったのには理由があるはずだ。
慎重に、そう思っていた。
翌日、国を揺るがすほどにまで事態は発展していた。
早朝から激しく扉を叩く音で目覚めた。
大金を前に頭を抱えていたカブラスの兄は、応接間で夜を明かした為、玄関の騒ぎにいち早く気づいた。
甲冑を身に纏った騎士たちと、官吏たちが来たらしい。
「な、何事ですか」
「商会を潰したのは此方の方ですか」
「は…?」
官吏に新聞を差し出されれば、大きな見出しで、商会の倒産と書かれていた。
「倒、産…」
「あの商会はこの国屈指の大店ですよ。それが突然の倒産です!どういうことですか!」
「どういう、と聞かれても…」
官吏は一枚の書面を突き出した。
「商会の資産がごっそり引き出されています。そして、その資産は一体何処に消えたのか。ご存知ですよね?」
背中を伝う汗が、冷たかった。
カブラスは陽気に喜んでいた。
一生楽な暮らしができる、と。
当主は、計算をしていた。
婚約破棄をさせないために、慰謝料の額を桁違いの金額に設定していた。
商会との縁を逃がすつもりはなかったのに。
半ば脅しのように店を引き合いに出しても、商会長は娘の婚約破棄を選んだ。
それでも、すぐに用意できまいと踏んでいた。
分割になればごねてやろうと思ったのだが。
ぽんと目の前に出してきた。
退路を断たれ、侯爵は婚約破棄を認めた。
まぁ、これだけの金があれば家の存続は可能だろう。
本来、慰謝料に課税はないが、常識外のこの慰謝料には税金がかかる。
三分の一は国に納めなければならない。
商会長は銀行を空にしたと言っていた。
それだけのお金が動けば、王立の財務課が動くはずだ。
脱税は…できない。
金を守るための警備も必要だ。
金を手に入れたのに、その為に必要な経費の算段ばかり気にしていた。
次期侯爵は、不安を抱いていた。
何か薄ら寒いものが背後から迫ってくるような。
商会長はすぐに金を使わない方がいいと忠告した。
商会長が黙って金を支払ったのには理由があるはずだ。
慎重に、そう思っていた。
翌日、国を揺るがすほどにまで事態は発展していた。
早朝から激しく扉を叩く音で目覚めた。
大金を前に頭を抱えていたカブラスの兄は、応接間で夜を明かした為、玄関の騒ぎにいち早く気づいた。
甲冑を身に纏った騎士たちと、官吏たちが来たらしい。
「な、何事ですか」
「商会を潰したのは此方の方ですか」
「は…?」
官吏に新聞を差し出されれば、大きな見出しで、商会の倒産と書かれていた。
「倒、産…」
「あの商会はこの国屈指の大店ですよ。それが突然の倒産です!どういうことですか!」
「どういう、と聞かれても…」
官吏は一枚の書面を突き出した。
「商会の資産がごっそり引き出されています。そして、その資産は一体何処に消えたのか。ご存知ですよね?」
背中を伝う汗が、冷たかった。
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