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五
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「な、ななな!何だその格好はっ!」
婚約者が叫ぶ。
「何かおかしいでしょうか?」
ベスフィエラはこてんと首を傾げた。
「お、おかしいだろうっ!?し、下着姿で、など!!」
「ベスフィエラ!貴女何を考えているの!!」
王太子と王妃が同時に叫ぶ。
国王はあんぐりと口を開けたまま止まっていた。
「あら、殿下にはこのドレスが見えないのですね」
「…はぁ?」
「王妃様には見えますよね?貴女が用意したドレスなのですから」
王妃は言葉に詰まり、ベスフィエラの後ろに控えていた顔色の悪い侍女に目を向けた。
「…何を言っているのかわからないわ」
「あら。王妃様が用意した、と聞いたのですが」
「知らないわ!ふざけてないで早くドレスを着なさい!それにその頭はなんですか!」
「この国の流行りの髪型なんですって。王妃様は流行りに疎くていらっしゃる」
「べ、ベスフィエラ様っ」
大人しかったはず王女の反撃に王妃は目を白黒させ、ベスフィエラの暴言に侍女が止めに入る。
「この髪はこちらの私の侍女がセットしたのよ。よい腕なのでしょう?これがこの国の、王太子妃になるであろう王女につけられた従者の能力なのですよ」
ベスフィエラは周囲に説明するように、大げさに腕を開いて侍女を紹介した。
一気に貴族たちの目を向けられ、侍女はブルブルと震え始める。
いつもの、国内の貴族しか集まらない夜会だったならば、こんな格好のベスフィエラは嘲笑を受けたはずだ。
しかし、今回は他国の要人達がいる。
王太子の婚約者だが、婚姻していないベスフィエラの身分はまだ小国の王女だ。
他国の王族への嘲笑など、本来できるはずもない。
それに、たった今公然で暴露されたそば付き侍女の王女への無礼に対し、貴族達は下手を言うまいと口をつぐんだ。
ベスフィエラへの嫌がらせはこの国の、王妃からの命でもあったから、余計に。
「…勝手なことを言わないで欲しいわ。皆様申し訳ありません。この子は少し虚言癖がありまして、手を焼いておりますの」
復活した王妃が、周囲にベスフィエラの異常性を説明し始めた。
この国の貴族は、王妃の言葉に同意を示す。
「虚言癖、ねぇ。王妃様は私を虚言癖の頭のおかしい女だと思っていらっしゃるのね」
「そんな格好でここに来て、どう考えてもおかしいのは貴女でしょう!」
ふんっと高圧的な態度を取る。
この場を、ベスフィエラの変人行為として乗り切ると決めたようだった。
婚約者が叫ぶ。
「何かおかしいでしょうか?」
ベスフィエラはこてんと首を傾げた。
「お、おかしいだろうっ!?し、下着姿で、など!!」
「ベスフィエラ!貴女何を考えているの!!」
王太子と王妃が同時に叫ぶ。
国王はあんぐりと口を開けたまま止まっていた。
「あら、殿下にはこのドレスが見えないのですね」
「…はぁ?」
「王妃様には見えますよね?貴女が用意したドレスなのですから」
王妃は言葉に詰まり、ベスフィエラの後ろに控えていた顔色の悪い侍女に目を向けた。
「…何を言っているのかわからないわ」
「あら。王妃様が用意した、と聞いたのですが」
「知らないわ!ふざけてないで早くドレスを着なさい!それにその頭はなんですか!」
「この国の流行りの髪型なんですって。王妃様は流行りに疎くていらっしゃる」
「べ、ベスフィエラ様っ」
大人しかったはず王女の反撃に王妃は目を白黒させ、ベスフィエラの暴言に侍女が止めに入る。
「この髪はこちらの私の侍女がセットしたのよ。よい腕なのでしょう?これがこの国の、王太子妃になるであろう王女につけられた従者の能力なのですよ」
ベスフィエラは周囲に説明するように、大げさに腕を開いて侍女を紹介した。
一気に貴族たちの目を向けられ、侍女はブルブルと震え始める。
いつもの、国内の貴族しか集まらない夜会だったならば、こんな格好のベスフィエラは嘲笑を受けたはずだ。
しかし、今回は他国の要人達がいる。
王太子の婚約者だが、婚姻していないベスフィエラの身分はまだ小国の王女だ。
他国の王族への嘲笑など、本来できるはずもない。
それに、たった今公然で暴露されたそば付き侍女の王女への無礼に対し、貴族達は下手を言うまいと口をつぐんだ。
ベスフィエラへの嫌がらせはこの国の、王妃からの命でもあったから、余計に。
「…勝手なことを言わないで欲しいわ。皆様申し訳ありません。この子は少し虚言癖がありまして、手を焼いておりますの」
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この国の貴族は、王妃の言葉に同意を示す。
「虚言癖、ねぇ。王妃様は私を虚言癖の頭のおかしい女だと思っていらっしゃるのね」
「そんな格好でここに来て、どう考えてもおかしいのは貴女でしょう!」
ふんっと高圧的な態度を取る。
この場を、ベスフィエラの変人行為として乗り切ると決めたようだった。
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