王は想い人を他人に委ねる

基本二度寝

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三 侍女

(まさか、まさか)

王女オリビアの侍女であるアネッサは、聞き覚えのある声に呼び止められて酷く焦った。

王女の側付きとしてこの国にやってきて、アネッサは常に陛下のそばに立つ近衛騎士グレゴワールの姿に見惚れた。
陛下よりも背が高く、陛下よりも厚みのある体格はまさに本の中の理想の騎士そのものだった。

その憧れていた人物から声をかけられたから、アネッサは浮足立ってしまった。

「えっ、あの、そのっ、私、でしょうか…!」

声が裏返ったが、グレゴワールは気にした風はない。

目の前にすっと手紙を差し出され、「返答がほしい。できればすぐに」と求められた。


業務内容だろうか。
しかし、陛下の護衛騎士からわざわざ指示を受けたことなどない。

それとも、なにか粗相をして…?

差し出された手紙を広げるまで、アネッサは不安で思考は悪い方向へ向かっていった。


ところが、手紙の中身は、熱烈な恋文だった。

『アネッサへ』、から始まる文章は、目の前の無骨な騎士が書いたとは思えないほど情熱的なものだった。

(ええっ、まさか、グレゴワール様も私のことを…!?両想いだったなんて…!)

アネッサは沸騰した頭で、丁寧に文面を読み終えた。

『もし、私の想いに応えてくれるのならば、婚姻式の夜、会いに行っても良いだろうか…』

グレゴワールはじっとアネッサが手紙を読み終えるのを待っていた。
なんという羞恥プレイだろう。
じわじわと顔に熱が集まってくる。

「…どうだ「はいっ、あの!その!構いません!お待ちしております!」

「…?それが返答か?」

「えっ、あの…はい…」

食い気味に返事をしてしまい失敗したと思った。
淑女らしく少し恥じらいを含ませた返答をすべきだったのかもしれない。

「オリビア様に確認しなくても良いのか…?」

「それは、問題ありません」

婚姻式の後、オリビア様の初夜の準備を整えれば、侍女の仕事は終わりだ。
あとは、陛下の従者にお任せする流れになっていた。

「わかった。ではそのように」

「あ、…はい」

手紙の情熱さを一切感じさせないグレゴワールの反応に、少し戸惑った。
手紙になると人格が代わるのだろうか。
彼はきっとそういう質なのだろうと納得しておく。

そっと胸に抱いた手紙をアネッサは当日まで何度も何度も読み返し、逢瀬の夜を指折り数えて待っていた。

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