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ニ
「っみつけた!」
ソルダートは自国から二つほど跨いだ国を越えて、彼らを見つけ出した。
小さな村の外れに住み着いた若夫婦。
彼らを見つけるのは難しいものではなかった。
ーーー
自国から聖獣の気配が消えたと、教会の神官が城に乗り込んできたのは、ソルダートの無能さが周囲に知られた頃だった。
聖獣は国を安定させる。
その聖獣が国から去った。
急にそんな事を言われても、ソルダートはなんの事かわからなかった。
「ソマリ様達はどこですか!」
あの平民らの名を叫ばれ、眉を寄せた。
「あれらは捨てた。私に魅了魔法を掛けていたからな」
「馬鹿な真似を…」
神官は絶望し、膝をついて許しを乞い始めた。
聖職者にあるまじき行為、ソルダートへの呪いの言葉も口にする。
「貴様」
「魅了魔法がなんですか!それを望んだのは貴方でしょう」
「はぁ…?私が何を望んだと」
「怪我をしたソマリ様を助けた貴方が言ったのですよ。
願いはあるかとソマリ様に聞かれて『父親のように皆に愛される王になりたい』と貴方は確かに言った!」
記憶を探っても、混濁がはげしくよく思い出せない。
魅了魔法の解除による記憶障害が残っているらしい。
「だから…ソマリ様は貴方に『魅了魔法』を掛けた。『皆が貴方を愛するように』と」
「なんだと…私を、魅了していたのではないのか?」
「なぜそうお思いになられたのか!
ソマリ様は殿下に感謝していただけで、愛情を向けていたのはシンリ様ではないですか」
頭を殴られた気がした。
ソルダートは無意識にソマリに愛されていると思っていた。
ソマリが自身の婚約者だと思い込む程に。
よくよく考えてみれば、この国の貴族ではないものが、王族に嫁ぐことなどできない。
そんな平民の子供でも知っている常識が抜けていた。
はっきりしている記憶の中ですら、一度も、彼女から愛を告げられたことはなかったのに。
ーーー
「おや?ソルダート殿下。珍しい客だ」
村から外れた森の中。
たった一年しか経っていないのに、己の護衛だった男は更に身長を伸ばし、服の上からもわかる位の筋肉を纏っていた。
焚き木用の薪を作っていたのか、切り株に挿したままの斧に手を掛けたまま、此方に目を向けられた。
男の身体に損傷はない。
あの獣の谷から、身体の部位を失うことなく抜けられたと言うこと。
彼らには聖獣の加護があったということか。
「よく此処がわかったな」
「…うちの神官が、聖獣の加護を追えばソマリ達を見つけられると言っていた。
…この国に聖獣の加護が与えられたと知ってやって来た…」
「ふぅん」
シンリは面白そうに目を細める。
「で?」
「…ソマリに会いたい」
「無理だな」
「…頼む」
「今は気が立ってるから、そっとしておいたほうがいい」
「…ソマリはそんなに私に怒っているのか」
優しい女だった。
怒った顔など見たこともない。
「いや?今はそういう時期なんだよ。人は違うのか」
ソルダートは首を傾げた。
「雌は子を守るために、過敏になって周囲に攻撃的になるんだ。俺以外の雄には、な」
ソルダートは自国から二つほど跨いだ国を越えて、彼らを見つけ出した。
小さな村の外れに住み着いた若夫婦。
彼らを見つけるのは難しいものではなかった。
ーーー
自国から聖獣の気配が消えたと、教会の神官が城に乗り込んできたのは、ソルダートの無能さが周囲に知られた頃だった。
聖獣は国を安定させる。
その聖獣が国から去った。
急にそんな事を言われても、ソルダートはなんの事かわからなかった。
「ソマリ様達はどこですか!」
あの平民らの名を叫ばれ、眉を寄せた。
「あれらは捨てた。私に魅了魔法を掛けていたからな」
「馬鹿な真似を…」
神官は絶望し、膝をついて許しを乞い始めた。
聖職者にあるまじき行為、ソルダートへの呪いの言葉も口にする。
「貴様」
「魅了魔法がなんですか!それを望んだのは貴方でしょう」
「はぁ…?私が何を望んだと」
「怪我をしたソマリ様を助けた貴方が言ったのですよ。
願いはあるかとソマリ様に聞かれて『父親のように皆に愛される王になりたい』と貴方は確かに言った!」
記憶を探っても、混濁がはげしくよく思い出せない。
魅了魔法の解除による記憶障害が残っているらしい。
「だから…ソマリ様は貴方に『魅了魔法』を掛けた。『皆が貴方を愛するように』と」
「なんだと…私を、魅了していたのではないのか?」
「なぜそうお思いになられたのか!
ソマリ様は殿下に感謝していただけで、愛情を向けていたのはシンリ様ではないですか」
頭を殴られた気がした。
ソルダートは無意識にソマリに愛されていると思っていた。
ソマリが自身の婚約者だと思い込む程に。
よくよく考えてみれば、この国の貴族ではないものが、王族に嫁ぐことなどできない。
そんな平民の子供でも知っている常識が抜けていた。
はっきりしている記憶の中ですら、一度も、彼女から愛を告げられたことはなかったのに。
ーーー
「おや?ソルダート殿下。珍しい客だ」
村から外れた森の中。
たった一年しか経っていないのに、己の護衛だった男は更に身長を伸ばし、服の上からもわかる位の筋肉を纏っていた。
焚き木用の薪を作っていたのか、切り株に挿したままの斧に手を掛けたまま、此方に目を向けられた。
男の身体に損傷はない。
あの獣の谷から、身体の部位を失うことなく抜けられたと言うこと。
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…この国に聖獣の加護が与えられたと知ってやって来た…」
「ふぅん」
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「で?」
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「無理だな」
「…頼む」
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怒った顔など見たこともない。
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