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王太子を私室に連れて行かせるように護衛に命じた。
護衛らは国王に厳命されている。
王太子の言葉は無視し、マグノリエの指示に従うように。
国王も、ようやくエルセンシアを手放した王太子に安堵し、二度と彼女に近づけさせるなとマグノリエに命じた。
最初からエルセンシアを息子の妃にするつもりは王にはなかった。
息子が気に入っている玩具としか認識していない。
王は息子を愛してはいるが、孫には高貴な王家の一族の血を求めている。
外国から嫁いできた妻を持つ侯爵家の血を王家に混ぜるつもりはない。
だから、エルセンシアが婚約者に決められ、動揺するマグノリエに対し国王は「後に侯爵令嬢との婚約は解消する。国母は王家の血を引くマグノリエだけだ」と言い聞かされた。
エルセンシアが妃教育と称して受けさせられていたものはただの高位貴族の教育だ。
王家の機密を知らされてもいないから婚約解消は予定通り速やかに終われた。
本当ならばもっと早くに行われる想定だったのだが。
マグノリエは、王太子と侯爵が遭遇したことにより、ようやく彼の真意を知った。
まだエルセンシアを諦めていないのだ。
傷付いた彼女を手元に置いて癒やしてやれば、その心が向けられるのだと思っているのだ。
だから、彼はあの時。
エルセンシアが襲われたと報告したあの日、王太子は言葉を失い、そして笑ったのだ。
口角を上げて、場違いな笑みを浮かべる王太子に、マグノリエは慄いた。
良からぬことを考えているのではないかと。
侯爵は国王に奏上し、王都からの退去の許可申請をして認められていた。
侯爵は娘を少しでも王太子の住む王都から遠ざけたい、王としても息子を惑わせる女が王都から去ってくれた方が都合が良かった。
侯爵家に割り振られていた仕事は別の貴族に引き継がれる。突出した能力があったわけでもなかったので、誰に引き止められることも無い。
マグノリエはこめかみを抑える。
私がこの男のこれからを導かねばならないのか。
エルセンシアに狂い、王として役割をこなせぬなら種馬になるしかないこの男を。
国王には退位を諦めてもらうしかない。マグノリエの産んだ子が次王になるまで。
いまだ護衛の拘束から暴れる王太子の姿に、彼を再教育するよりも、今はまだ影も形もない、産まれてくるはずの我が子の教育に力を入れたほうが良いだろうなと、マグノリエは何度目かの息を吐いた。
護衛らは国王に厳命されている。
王太子の言葉は無視し、マグノリエの指示に従うように。
国王も、ようやくエルセンシアを手放した王太子に安堵し、二度と彼女に近づけさせるなとマグノリエに命じた。
最初からエルセンシアを息子の妃にするつもりは王にはなかった。
息子が気に入っている玩具としか認識していない。
王は息子を愛してはいるが、孫には高貴な王家の一族の血を求めている。
外国から嫁いできた妻を持つ侯爵家の血を王家に混ぜるつもりはない。
だから、エルセンシアが婚約者に決められ、動揺するマグノリエに対し国王は「後に侯爵令嬢との婚約は解消する。国母は王家の血を引くマグノリエだけだ」と言い聞かされた。
エルセンシアが妃教育と称して受けさせられていたものはただの高位貴族の教育だ。
王家の機密を知らされてもいないから婚約解消は予定通り速やかに終われた。
本当ならばもっと早くに行われる想定だったのだが。
マグノリエは、王太子と侯爵が遭遇したことにより、ようやく彼の真意を知った。
まだエルセンシアを諦めていないのだ。
傷付いた彼女を手元に置いて癒やしてやれば、その心が向けられるのだと思っているのだ。
だから、彼はあの時。
エルセンシアが襲われたと報告したあの日、王太子は言葉を失い、そして笑ったのだ。
口角を上げて、場違いな笑みを浮かべる王太子に、マグノリエは慄いた。
良からぬことを考えているのではないかと。
侯爵は国王に奏上し、王都からの退去の許可申請をして認められていた。
侯爵は娘を少しでも王太子の住む王都から遠ざけたい、王としても息子を惑わせる女が王都から去ってくれた方が都合が良かった。
侯爵家に割り振られていた仕事は別の貴族に引き継がれる。突出した能力があったわけでもなかったので、誰に引き止められることも無い。
マグノリエはこめかみを抑える。
私がこの男のこれからを導かねばならないのか。
エルセンシアに狂い、王として役割をこなせぬなら種馬になるしかないこの男を。
国王には退位を諦めてもらうしかない。マグノリエの産んだ子が次王になるまで。
いまだ護衛の拘束から暴れる王太子の姿に、彼を再教育するよりも、今はまだ影も形もない、産まれてくるはずの我が子の教育に力を入れたほうが良いだろうなと、マグノリエは何度目かの息を吐いた。
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