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三 前日
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初めての贈り物は?
私の好きな色は?
私と行った初めての外出先は?
アルシオーネは再婚約などするつもりもない。
トルクトが答えられないだろう質問を投げた。
「贈り物、は。宝石、だったか。いや、装飾品…だ」
広い答え方をしたなと思う。
アルシオーネは思わず苦笑した。
「正解は、『当主論』という教本です」
「え…?」
トルクトは目を丸くした。
「侯爵様に熟読するように言われたのでしょう?面倒だからお前が読めと押し付けたではないですか。忘れましたか?」
「それは、贈り物とは…」
「それ以外に頂いたものはありませんが?
次、好きな色は?」
アルシオーネはさっさと次の質問に移る。
「青だろう?」
なぜ自信満々に自身の目の色を答えるのか、理解に苦しむ。
「ブラウンです」
「は?何故」
「何故と言われても。身近にある色ですから。この屋敷に来られた方はすぐに気づかれますけれど」
伯爵家はブラウンを基調とした家具で揃えられている。
壁紙もカーテンも敷物も、ベージュとブラウンでそれに合わせたものだ。
アルシオーネの腰に敷いてあるクッションも肌触りも良く落ち着いた色味のダークブラウン。
トルクトは目の前のアルシオーネの耳で揺れる飾りが、褐色の宝石シンハライトだと今更ながらに気づく。
「最後は、初めての外出先ですね」
「それは、」
引っ掛けだと思った。
トルクトはアルシオーネと出かけたことなどない。
「答えは、『ない』だ」
アルシオーネは目を丸くした。
正解だとトルクトは確信し、口角を上げた。
「いえ…『王城』ですけど。婚約手続きのために共に出向いたではありませんか。まさか、そんなことすらお忘れだったのですね…」
「な、なっ!それは、外出とは言わないではないか!」
「そうですか?ならば、贈り物もなく、婚約者の纏う色すら覚えておらず、共に出かけたこともない。
釣書を送ってくる、私のことをよく知りもしない殿方と貴方、大差ないとは思いませんか?
いえ、釣書に花束を添えてくださる方もいますから、同等に扱うのは失礼ですね。事前に調べて、ブラウンの装飾を釣書に使っていた方も居られましたし」
トルクトは間違えた。
質問の回答に、という意味ではなく、アルシオーネへの対応を。
全て終わってから、知ったところで意味はない。
「では、トルクト様。お約束通り二度と私に近付かないで下さい」
「アルシオーネ!すまない!本当に申し訳ないという思っている!」
トルクトは最後の手段に出た。
敷物に膝を付き、頭を擦り付けた。
「君が婚約者でなくなるなら俺は死ぬ!君を想って死んでいく!」
目の前で死の宣告をされれば、折れるだろう。
命を天秤にかけさせた。
頭を上げて、アルシオーネを盗み見る。
アルシオーネは微笑んでいた。
トルクトは安堵した。これで元に…
「そうですか。さようなら」
アルシオーネはこの上なく、美しく笑っていた。
私の好きな色は?
私と行った初めての外出先は?
アルシオーネは再婚約などするつもりもない。
トルクトが答えられないだろう質問を投げた。
「贈り物、は。宝石、だったか。いや、装飾品…だ」
広い答え方をしたなと思う。
アルシオーネは思わず苦笑した。
「正解は、『当主論』という教本です」
「え…?」
トルクトは目を丸くした。
「侯爵様に熟読するように言われたのでしょう?面倒だからお前が読めと押し付けたではないですか。忘れましたか?」
「それは、贈り物とは…」
「それ以外に頂いたものはありませんが?
次、好きな色は?」
アルシオーネはさっさと次の質問に移る。
「青だろう?」
なぜ自信満々に自身の目の色を答えるのか、理解に苦しむ。
「ブラウンです」
「は?何故」
「何故と言われても。身近にある色ですから。この屋敷に来られた方はすぐに気づかれますけれど」
伯爵家はブラウンを基調とした家具で揃えられている。
壁紙もカーテンも敷物も、ベージュとブラウンでそれに合わせたものだ。
アルシオーネの腰に敷いてあるクッションも肌触りも良く落ち着いた色味のダークブラウン。
トルクトは目の前のアルシオーネの耳で揺れる飾りが、褐色の宝石シンハライトだと今更ながらに気づく。
「最後は、初めての外出先ですね」
「それは、」
引っ掛けだと思った。
トルクトはアルシオーネと出かけたことなどない。
「答えは、『ない』だ」
アルシオーネは目を丸くした。
正解だとトルクトは確信し、口角を上げた。
「いえ…『王城』ですけど。婚約手続きのために共に出向いたではありませんか。まさか、そんなことすらお忘れだったのですね…」
「な、なっ!それは、外出とは言わないではないか!」
「そうですか?ならば、贈り物もなく、婚約者の纏う色すら覚えておらず、共に出かけたこともない。
釣書を送ってくる、私のことをよく知りもしない殿方と貴方、大差ないとは思いませんか?
いえ、釣書に花束を添えてくださる方もいますから、同等に扱うのは失礼ですね。事前に調べて、ブラウンの装飾を釣書に使っていた方も居られましたし」
トルクトは間違えた。
質問の回答に、という意味ではなく、アルシオーネへの対応を。
全て終わってから、知ったところで意味はない。
「では、トルクト様。お約束通り二度と私に近付かないで下さい」
「アルシオーネ!すまない!本当に申し訳ないという思っている!」
トルクトは最後の手段に出た。
敷物に膝を付き、頭を擦り付けた。
「君が婚約者でなくなるなら俺は死ぬ!君を想って死んでいく!」
目の前で死の宣告をされれば、折れるだろう。
命を天秤にかけさせた。
頭を上げて、アルシオーネを盗み見る。
アルシオーネは微笑んでいた。
トルクトは安堵した。これで元に…
「そうですか。さようなら」
アルシオーネはこの上なく、美しく笑っていた。
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