もう一度婚約を、望む貴方は誰ですか?

基本二度寝

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四 前日

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「お疲れ様」

アルシオーネが自室に戻ると、長椅子に座る幼馴染の男爵子息レオネルが『当主論』を閉じた。
その書物は元婚約者の唯一の贈り物。

「やはり、再婚約を望んできたか。俺が相手したほうがよかったんじゃない?」

レオネルはアルシオーネの新たな婚約者だった。
解消したばかりで次の婚約者を決めるのは早いのでは、と父に抗議したが、「婚約解消なり破棄されたら速やかに婚約の手続きを」と、レオネルからの打診があったらしい。
それも、トルクトとの婚約が決まった直後から。

元々仲の良かった幼馴染同士だったので、侯爵からの強い希望がなければレオネルと婚約していたと聞いて驚いたものだ。

「あの人は無駄にプライドが高いから、レオが婚約者だと伝えれば、おじ様たちに圧力をかけたはず…大好きな人たちに迷惑かけるわけにはいかないから」

仲良くしていた男爵や夫人に迷惑をかけたくない。

「うちの親は男爵だけど、結構偉い役職についてるから大丈夫だと思うけど。むしろ、喜んで迎え撃つかな。ルシィは優しいね」

手招きされたのでレオネルの隣に腰を下ろすと、よしよしと頭を撫でられた。
子供ではないのだけれど。
心地よいから怒るに怒れない。

「それにしても、『婚約できないなら死ぬ』ねぇ」
「…ああは言ったものの、死なれたら寝覚めは悪いわ」
「気に病む必要はないよ。世の中そういう輩ほど死なないものだし」

レオネルの瞳に軽蔑の色がある。
騎士団に属するレオネルは人の生死に直面する事がある。
それ故、交渉に命を天秤にかけるトルクトのような輩を嫌悪している。
その点はアルシオーネも同意する。

ぐいと腕を引かれ、レオネルの胸の中に閉じ込められた。


「ルシィ。あの男の事は忘れさせてあげる」

レオネルの言葉に、顔に熱が集まる。
まるで恋人同士の睦言のようだと思った。
婚約者同士なのでおかしなことではないけれど。

「…うん。大した思い出もないから、レオとの思い出ですぐに上書きされると思、ん」

アルシオーネの言葉をレオネルは食らう。
初めての口づけに舞い上がって、アルシオーネの意識はそこで途絶えた。

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