素顔を知らない

基本二度寝

文字の大きさ
5 / 10

しおりを挟む
王太子は帰路についた。

帰りの道中は行き道のような問題が一切なく、あっさり帰ることができた。

聖女の存在のせいか、彼女が通る間に限り、大雨は止み、氾濫した川の勢いは無くなった。
橋が流された場所では、聖女が祈ると目の前に虹の橋が架かり対岸に渡った。

これが聖女の力…。

普段目にすることがなかった力。
それを目の前でこんなにもはっきりと体現されてしまえば、王太子は言葉もなかった。

隣国で謝罪を強要されたあの時、王太子は暴れだしそうな怒りを必死に抑えつけたことで、今、聖女の助力をもぎ取ることができた。
よく耐えたと自賛したい所だ。

当然だが王太子の謝罪を聖女は受け入れた。
隣国に戻るという聖女を心配する美しいだけではなく心優しき隣国王の妻に向かって聖女は「問題ない。ちょっとヤってくるわ」と指を下品に立てていた。
記憶にある聖女の言動が一致しない。

少しばかり隣国の城に囲われ調子づいたのか?
…性格が変わりすぎている気もする。

じっと聖女を見つめるが、薄気味悪い黒い髪も黒い瞳もそうある色味ではない。
不気味で珍しい色だった。

彼女を観察し、聖女に間違いないと王太子は確信している。

しかし、なぜか感じる違和感がずっと心の底に引っかかっていた。



「王太子よ!よく戻ったっ!して、聖女は!!」

国王は帰城した息子を早速呼びつける。
王はやまぬ雨、鳴り止まぬ雷が多少静かになった事で、無事聖女の帰国を果たしたのだと知った。

「おまたせしました。陛下。聖女が戻りましたのですぐにでもこの災害は収める事ができるでしょう…!
…しかし、少しばかり聖女の態度が目にあまり」

つらつらと宣う王太子の後ろから、現れた人物に目を向け国王は眉を寄せた。

「…王太子よ。聖女はどうした。何処にいる」

「え…?」

王太子の横に並び立つ女に目を向ける。
薄気味悪い髪色の女が国王に向かって、膝を折って礼をする。

「お初にお目にかかります、国王陛下。
私は聖女セイラと申します。隣国滞在中に、貴国の王太子殿下より助力を求められ、参りました」

「ふ…む?セイラ殿…?」

「…おい、貴様何を言っている。他人行儀な挨拶は俺に対する当てつけか!」

戸惑う国王に、苦々しく聖女を睨みつける王太子。
二人の違う反応を無視をして、聖女は傲慢な笑みを浮かべた。

「貴国で発生しているこの水害をおそらく止めることが出来るでしょう。…ご協力頂けるのであれば」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」 物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。 ★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位 2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位 2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位 2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位 2023/01/08……完結

【完結】 ご存知なかったのですね。聖女は愛されて力を発揮するのです

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 本当の聖女だと知っているのにも関わらずリンリーとの婚約を破棄し、リンリーの妹のリンナールと婚約すると言い出した王太子のヘルーラド。陛下が承諾したのなら仕方がないと身を引いたリンリー。  リンナールとヘルーラドの婚約発表の時、リンリーにとって追放ととれる発表までされて……。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。 この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

婚約破棄でお願いします

基本二度寝
恋愛
王太子の婚約者、カーリンは男爵令嬢に覚えのない悪行を並べ立てられた。 「君は、そんな人だったのか…」 王太子は男爵令嬢の言葉を鵜呑みにして… ※ギャグかもしれない

処理中です...