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五
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「おかしいとお思いになられませんでしたか?」
「…なにを」
予言などと言われて、王太子は理解できるわけもない。
「私は一度も妃教育を受けておりません」
「……」
王太子は気づいていなかった。
思い起こして、今、ようやく気づいた。
妃教育はそれと知らせずにキャミーに施されていた。
全て、予言に沿った物語を作り上げている。
はじめから決まっていた未来。
王太子が惹かれたキャミーは本物なのだろうか。
そうなるように作られていたのではないだろうか。
王太子の前でのキャミーとそれ以外のキャミーの様子の違いは知っていた。
自分と同じ恋する相手の前に態度が変わってしまうのだと思っていた。
「カーラ。僕は、婚約を破棄する…つもりはない」
王太子は力なく宣言した。
筋書きにない台詞を吐いた。
周りの戸惑う声があがる。
しかし、カーラは動揺しなかった。
ここで筋書きを変えられて困るのは、国王や振り回された周囲の者だけでなくカーラも同じだった。
「かしこまりました。殿下。婚約破棄承りました」
「っカーラ!」
王太子の台詞の間違いを、聞かなかったことにする。
カーラの機転に乗っかり、周囲は王太子を取り囲んだ。
会場から去るカーラの後を追わせないように。
「キャミー様との新たな婚約、おめでとうこざいます!」
王太子が宣言する台詞を側近たちが代わりに発し、話を進めようとする。
「待て!お前ら、私は、婚約破棄など」
「王太子殿下!万歳!」
「カーラ!カーラ!!」
元婚約者を呼ぶ声は、王太子とキャミーの婚約を祝福する声にかき消された。
「…なにを」
予言などと言われて、王太子は理解できるわけもない。
「私は一度も妃教育を受けておりません」
「……」
王太子は気づいていなかった。
思い起こして、今、ようやく気づいた。
妃教育はそれと知らせずにキャミーに施されていた。
全て、予言に沿った物語を作り上げている。
はじめから決まっていた未来。
王太子が惹かれたキャミーは本物なのだろうか。
そうなるように作られていたのではないだろうか。
王太子の前でのキャミーとそれ以外のキャミーの様子の違いは知っていた。
自分と同じ恋する相手の前に態度が変わってしまうのだと思っていた。
「カーラ。僕は、婚約を破棄する…つもりはない」
王太子は力なく宣言した。
筋書きにない台詞を吐いた。
周りの戸惑う声があがる。
しかし、カーラは動揺しなかった。
ここで筋書きを変えられて困るのは、国王や振り回された周囲の者だけでなくカーラも同じだった。
「かしこまりました。殿下。婚約破棄承りました」
「っカーラ!」
王太子の台詞の間違いを、聞かなかったことにする。
カーラの機転に乗っかり、周囲は王太子を取り囲んだ。
会場から去るカーラの後を追わせないように。
「キャミー様との新たな婚約、おめでとうこざいます!」
王太子が宣言する台詞を側近たちが代わりに発し、話を進めようとする。
「待て!お前ら、私は、婚約破棄など」
「王太子殿下!万歳!」
「カーラ!カーラ!!」
元婚約者を呼ぶ声は、王太子とキャミーの婚約を祝福する声にかき消された。
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