能力持ちの若き夫人は、冷遇夫から去る

基本二度寝

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九 結婚後六月と一週 B

「なんだ、どうした」

家令から連絡を受け、それでも直ぐには帰宅出来ず一週間が経ってようやく屋敷に戻った。

半年ぶりに屋敷に戻ったボルスターは、家令の真っ青な顔に迎えられ、応接室に促された。

わけもわからず、ボルスターは部屋に入ると、クエッカがソファに座っていた。

隣には小汚い平民の男が座っている。
ボルスターは顔を顰めた。

汚い男とクエッカの距離が近すぎるように感じたからだ。

ボルスターに気づくと、クエッカはすっと立ち上がった。

「旦那様。お久しぶりです。離縁してください」

「………、はぁ?」

クエッカの言葉にボルスターは間抜けな声を出した。



「とりあえず、座ろう」

ボルスターはクエッカの正面のソファに腰を下ろす。
クエッカは夫の横には来ず、当たり前のように小汚い男の横に座った。

そっと男の手を握っているのが視界に入る。

ボルスターは見るからに平民の男を殴り飛ばしたい心情を面に出すことなく、ずっとクエッカの目だけ見ていた。

「我々の婚姻は王命だと言うことを理解しているか?」

クエッカは真っ直ぐボルスターを見て「はい」と答えた。

「王命での婚姻は簡単に離縁が認められない」

「そうですね」

「……理由を聞こう」

ボルスターにしてみれば、寝耳に水の事だ。

仕事が忙しかったから寂しい思いをさせていたかも知れない。

しかし、家令にクエッカの様子を報告させていたから、彼女の事は知っているつもりだった。

彼女はほぼ屋敷から出ることはない。
一日の殆どを庭で過ごし、花と戯れていると聞いている。
家令には屋敷の敷地からは出さぬように伝えてあった。
危険から守るためのことだから仕方がない。
必要な場合は屋敷に呼びつけるように言ってある。
足が悪かった母がいた。
欲しいものがあれば商人、体調を崩せば医者に来てもらっていた。
信心深かった母の為に神父にも月に二度ほど通ってもらっていた。
古くからの顔見知りの彼らなら、信用できる。

本人から外出の希望は特に出てこなかったようなので問題はなかったと思う。

ならば…。寂しさでつい近くにいた男に甘えてしまったのだろうか。
いくら密かな想いを伝えているとはいえ、半年も放置してしまったのだから、彼女にも言い分はあっただろう。

ここはボルスターが大人になって話を聞いてやるべきだと、少し笑って余裕を見せた。


「子供ができました」

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