能力持ちの若き夫人は、冷遇夫から去る

基本二度寝

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十三 結婚後五月 A

「悪い。段取りに手間取った。本当はもっと早くに診せたかったんだが」

何時も通り、庭にやってきたクエッカをアレンは薔薇のアーチのトンネルの場所まで誘導すると、待っていたのは業者の格好をした男女の姿。


「あの…?」

クエッカが何を言う前に、女はクエッカのつば広帽子を取り、ワンピース仕様の簡易ドレスをズルリと脱がし、肩にかけていた前開きの衣装を手早く着付け、自身はクエッカの衣装をさっと身につけると、日除けのつば広帽子の紐を顎できゅっと締めて、薔薇のトンネルから出ていった。
あまりの手際に、クエッカは悲鳴を上げる間もなく検査衣姿になっている。

「うちの看護師だ。あの技術を身につける為にちょっと時間がかかったんだ。悪かったなお嬢さん」

業者の男は鬘を脱ぐと、医療器具を身につける。

「あんたには屋敷からの監視がついているって聞いたからな」

女は、いつもクエッカがしているように、花の状態を確認するような動作をしている。

「えっと…先生?これは」
「勝手なことをすまん。今は黙って大人しくしててくれ」

「さて、お嬢さん。あんたの身体を診せてもらおうか」




診察の時間は限られている。
業者の出入りは記録がつけられていたので滞在時間は長くはいられない。
移動と着替えも含めると、クエッカの診察自体は二、三分が限界だった。

「どうだった」

アレンは夜、酒場に呼んだ業者姿の男を見つけ声をかけた。

「外傷は多くはない」
「そうか、俺の考えすぎか」

「ばーか。多くないってだけでないわけじゃない。小さい傷なら何ヶ所か。…一番気になるのは、…あのお嬢さんずっと腹さすってただろ」

「…ここ一月ほど。腹でも殴られていたのかと」

業者姿の男は首を振る。

「外傷も痕跡も無かった。妊娠の可能性もない。ストレス性の炎症か、…なんか盛られてるんじゃねぇか」

「…食事」

「必要なら診断書は出すぞ。国際医療機関の医者の名前なら、そこらへんの町医者を買収した診断書なんかより信頼性がある。
小さい傷でも同じ場所に何度も付けられている。治りきる前に新たにつけているんだ。一目ではわかりにくい悪質な虐待だ。俺ほどの腕じゃなきゃ見過ごされてるな」

アレンは黙ってグラスを握る。

「あまり肩入れするなよ。の嫁に」

それに答えないまま、アレンはグラスを煽った。

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