他の者とは違うと自賛する王子は、例に違わず愚者だった

基本二度寝

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七 匂わせエロ(行為なし)

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「あぁ…あるじさま…」
「カリネア。まさかイった?」

カリネアは飛空する主の腕の中で真っ赤になって小さく頷いた。

「堪え性がないね」
「…もうしわけありません…」

「ふふ、まぁいいよ。オレの力は浄化された聖堂では反発するってわかったし」

カリネアの下腹部に男の魔力を乗せた球を押し込んでいた。
聖堂の浄められた力の中でそれは耐えきれず、ブルブルと震え続けてカリネアにじわじわと快楽を与えていた。

かつての主の前で、職場で、元婚約者の前で、知り合いの目のある場所で、カリネアは軽く果てていた。
罪悪感と羞恥心を覚え込まされ、また一つカリネアは主の好みの色に染まる。


カリネアの主、半分魔族の血を持つ男は、割れた結界を越え、王都から出るとほど近い魔物の巣食う天高く聳える塔のダンジョンに入る。

「久しぶりだけど、あんまかわってないな」
「あ、あるじさま…ここには魔物が…」
「大丈夫。権限はまだ持ってる…多分」

男はこのダンジョンの管理を任されていたマスターだった。

人間の住む都に酒をかっ食らうために忍び込み、その間に結界が貼られ出られなくなってしまったのか三十年前のことだった。

カリネアの前の聖女が作り上げた七色の結界はそれまでの貧弱な、半魔の男が簡単に通り抜けられるようなものでは無かった。

もう一生出られないのかと、いつも通り飲んだくれていた所に、聖女が現れ男は脱出のチャンスを掴んだのだった。

しかも聖女は物を知らず、人前で服を脱ぐわ、自分のような怪しい男にホイホイついてくるわ、あっさり真名マナを教えてしまうわ…。

厳重な警護に囲まれていたはずの聖女が、簡単に従属できてしまい拍子抜けした。

カリネアに魔力を注ぎ続けて聖力を穢し、三十年この国を覆っていた結界は彼女に出会ってたった一週間で破壊された。

カリネアは自分の人生の殆どの時間力を注ぎ続けた結界にも、聖女の地位にも未練がなかった。

「もう聖女はミリャーナ様ですから」

だ、そうだ。




「カリネアは魔の物は怖い?」

「…はい」

「じゃあ、カリネアは魔の物が悪事を働く場面に遭遇したことはある?」

カリネアは少し考えて、首を振る。

「オレは魔族の血を引いている。カリネアにひどい事をしたことはあった?」

「…主さまはいつも守ってくださいました。…人に襲われたときも」

カリネアが下着姿になった食事処で、興奮した男たちに乱暴に床に押さえつけられていたのを助けたのが主だった。
カリネアはショックを受けた。

カリネアが何時間も祈祷し、寒さに震えながら禊ぎ、儀式前には断食して餓えに耐えていたのは、彼らのような国民を守る結界を維持し続けるためだった。

カリネアのこの国の民を思う気持ちは、この時あっさり瓦解した。

それに対して、禍々しい気を纏う目の前の男がそんな乱暴な男達を投げて払い、店主に金と拳を叩きつけてカリネアを連れ出した。

教会の修道女が盛り上がっていたような恋の展開に、カリネアは簡単に落ちてしまった。

信仰するだけで助けてもくれない主より、目の前の暴力から守ってくれたあるじに。

従属の契約に躊躇はなかった。
カリネアにとっては主が変わるだけ。

しかも今度の主は、快楽を与え、甘やかす。
躾と言って鞭で打たれることはない。
仕置だと言って絶頂を我慢させられることはあっても。

教会の教本に書かれていた悪魔の性質と新たな主は同質だと気づいたけれど、もう聖女でもないカリネアにはどうでもよかった。

聖女の時には感じなかった幸せを今は感じている。
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