異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

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1章 無色透明な習作

17勇者の伝記6 四天王を追って

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 森の中は薄暗く、ジメジメしていた。

「外も陰気だったが中は更に陰気な所だね」

最後尾のガースが森に生えていたリンゴに似た木の実をかじりながら言った。

「それ、大丈夫なのか」

「何でです?」

私はそばを流れる紫色の川を指さす。

四天王イーワンが倒されて元に戻ったのは土壌だけである。

水はまだ敵の手に落ちたままなのだ。

が、ガースには何のことか分からないらしい。

「勇者様はそのアプロンの実が毒に侵されてないかと言っているのよ。木が育つには水が必要だから。そして近くの水はここよ」

案内役で最前列にいるリューネが呆れたように言う。

ガースはそれでようやく危険に気が付き慌ててアプロンの実を投げ捨てる。

「おかしいと言えば、この道さっき通ったんじゃないか?」

「そう言えば」

リューネは立ち止まり辺りを見回す。

「この灌木は一際大きくて目印になるんですけどこの場所はとっくに通り過ぎているはずです」

「俺達を迷わせる魔法か何かが仕掛けられているのか」

ザザザザ

私の声に答えるように森がざわめき、木々がその枝を振り上げ、根を動かしながらこちらに襲い掛かって来た。

「なんて森だよ!?」

「皆魔物にされているのよ!普段は美しい森なのよ。勘違いしないでよ」

木の大軍に襲われ私達は逃げる。

同じ場所をグルグルと。

「また同じ場所だ」

目印の灌木は古いせいかはたまた別の目的があるのか、魔物化していなかった。

「ガース、反対側に走って!」

「馬鹿言うな。敵に突っ込むってことだろうが。死にに行くようなもんだ」

「説明は後!補助魔法色々かけてあげるから、さっさと走りなさい。勇者様、私達の後からついて来てください」

私が頷くとリューネは走力上昇や風の刃の魔法を矢継ぎ早に唱える。

「こうなりゃ、俺も自棄だ」

ガースも意を決して魔物の大軍に突っ込む。

ガースの目の前に置かれた風の刃は我々の行く手に先行して立ちはだかる木の魔物を文字通り木っ端微塵に粉砕していく。

気が付くと私達は急な上り坂を駆け上がっており、目の前に大きな湖が毒々しい紫色をたたえていた。

「よく正解がわかったな」

そのガースを無視してリューネは私に

「魔力の流れが私達の進行方向とは逆に向いているのに気が付いたんです」

「だからその元をたどれば正解の道に出ると踏んだ訳だね。リューネ、君は凄いな」

「えへへ、勇者様に褒められた」

「で、この後どうするんです?四天王が水の中にいるんなら釣りでもしますかね?」

面白くなさそうにガースがぶっきらぼうに言う。

「それなんだが」

私が2人に話しかけたと同時に水の中から巨大な何かが出てきて私に巻き付くと同時に水中に引きずり込んだ。
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