異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

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1章 無色透明な習作

19 勇者の伝記8 代償

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「大丈夫ですか、勇者様!?」

リューネが炎魔法で焚火をおこして私の濡れた服を乾かしてくれる。

「窒息しそうになったがね」

そう言う私をガースがまじまじと見てくる。

「ガースどうした?」

「いえね、こういっちゃなんだが勇者様は老け顔だったけどもっとふけこんだな、と思いましてね。そんなに白髪は無かったと思うんですが」

私は浄化され、鏡の様な青い色をたたえる湖に自分の顔を映してみる。

映った顔は確かに私より20歳も齢を食った中年男の顔だった。前髪の一部が白くなっている。

「スキルの影響だ」

「スキルって何です?魔法とは違うんですか?」

「多分違うと思う。他のスキル持ちっていないのか?」

「そんな単語自体初めて聞きましたよ」

「ウーム、この国に剣聖とかは?そういう人達が持っている奥義とかそう言う物を指すと思うんだが」

「確かにそういう技はありますけど勇者様のは次元というか世界が違うというか」

どうもスキルは異世界人限定らしい。

「しかし、この技使い続けたら勇者様は爺さんになっちまうんじゃないか」

ガースがポツリと呟く。しかし私の持ってきた剣と盾を見て

「おお凄え!あれは聖剣オーバーザレインボウと堅聖盾コンスタンじゃないか。これさえあれば他の敵なんかイチコロですよ」

元の世界でも旧約聖書で神が人間との間に契約の印として虹を置いた逸話があるが、異世界でも同じようなことがあったのか。

世界が違えど神と人のやる事は変わらないのかもしれない。

「しかし、これはさっきの化け物の体に刺さっていた、戦利品の一つだったのだよ。こんな名剣を凌ぐ敵が現れたという事は確かに皆世界の破滅を信じるだろうな」

「あ~勇者様・・・それはですね模造品なんです。本物は遥か昔に壊れて修復できなかったので模造品が作られたのです。ほら、白銀に輝くだけで色が変化しないのが証拠です」

「おいガース、気を持たせるなよ。城務めのお前がなぜ知らないんだ」

リューネの申し訳なさそうな声に私はガックリしながら当てにならない従者を叱った。

「そうだったかな。ま、俺は頭が悪いんでね。詰め込めるモノは限られてますのでね」

本人はどこ吹く風だ。

「で、でも模造でも最高品質の業物ではありますから、きっと役に立つと思いますよ、多分」

どこまで役に立つかの間違いだろう、と喉まで出かかった言葉を私は相当の苦労をして飲み込んだ。

彼女のフォローを無駄にしたくなかったのだ。

その後しばらく山を登ると岩肌にポッカリと空いた洞窟が見えてきた。

「さあ、ドライトリーのいるのはこの穴だったな。気を引き締めていくぞ」
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