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1章 無色透明な習作
20 勇者の伝記9 四天王ドライトリーの挑戦
しおりを挟む私達は3人縦列となって薄暗い洞窟を道なりに進んでいく。
洞窟内は何かの石か金属だかが明かり代わりに光っていてほのかに明るかった。
時折、天井からピチャピチャと水滴が落ちてくる。
「この穴は国の鉄鉱山や銅鉱山他あらゆる鉱山に繋がっているんです。ですからここを抑えられると金属を取れなくなってしまいます。ここを発見した時は皆便利がっていましたけどこうなると完全に裏目に出てしまいました」
リューネの説明が終わるかどうかのタイミングでカチリ、と何かの金属音がする。
途端に私とガースの間の両側の壁からゴウ、と火炎が噴き出す。
「罠か?」
「こんな物はありませんでした。きっと四天王がしかけたのです」
「ウーム、他にもあるだろうな。周りを注意しないとな」
自分の踏んだスイッチのせいで危うく死にかけて青ざめているガースを見ながら私は言った。
だが残念ながら私達はその後も多くのトラップに引っかかった。
私自身人の事は言えないが、彼らガムシャラット人は集中力こそ素晴らしいが集中し過ぎて他の物がおろそかになる。前は見てもそれ以外の方向には気にも留めないのだ。
それはガースもリューネも程度の問題だったのだ。
私達はある時は巨大な鉄球に追いかけられ、ある時は危うく左右から飛び出してきたトゲに串刺しになる所だったり、落とし穴に落ちかけたりした。
そんなわけでボロボロになりながら少し開けた場所に出た私達は目の前の大きな岩がゆっくり動いてくるのを見た。
「新手のトラップか?リューネ、魔法を」
「はい!」
だがリューネが詠唱に入るより先に岩はトカゲに変化してジャンプして彼女に襲い掛かった。
私はリューネの前に立ちはだかり、先刻手に入れた剣を振るった。
トカゲは切り裂かれると小さな石ころになりバラバラと散った。
「ありがとうございます。勇者様」
「いや、剣のおかげだ。刃こぼれもしていない」
ピチャンという水滴の落ちる音に私達はビクッと身をすくめる。
果たして先程とは別の岩トカゲが後ろから現れ襲い掛かって来た。
今度はリューネの火炎魔法ファイヤーボールで一撃だった。
「そう言えば、ドライトリーはトカゲの姿をしているって聞いたことが・・・」
「ガース、それは本当か?とすると岩トカゲの軍団が1つの四天王として活動しているのか?」
それならこんな広い坑道や各地の鉱山を支配しているのも頷ける。
「だが、あっけないな」
そこに違和感を覚えるのだが。
「最深部に巣があるのかもしれん。弱くとも数はいるかもしれないから出来る限り力を温存していこう」
その後もカチャカチャ、ガシャンガシャン音を立てて迫る岩トカゲ共を叩きながら私達は遂に最深部へたどり着いた。
大きな穴が4つ東西南北にあり、その周囲にそれよりも小さい穴いくつもあった。
その穴から岩トカゲ共が一斉に顔を出す。大きさは顔を出した穴に比例していた。
「よくここへたどり着いたな。我が名は四天王ドライトリー」
北側の巨穴のトカゲが口を開く
次に東側が
「我々は不死身だ」
「本体を倒さぬ限り、分体は何度でも蘇る」
南側がにやりと笑う
「ライッヒヒヒ、それがどれかお前達に分かるかな!?」
西側のトカゲの哄笑と共に敵は一斉に踊りかかって来た。
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