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1章無色透明な習作
21 勇者の伝記10 再び王都へ
しおりを挟む「ガース、小さな個体は任せるぞ。俺とリューネは大型の4体を狙う」
「「はい」」
役割を決めると私とリューネは小さなトカゲ共を後ろにいなす。そして後ろに待ち構えていたガースが(肉体強化の魔法をあらかじめかけていた)その小トカゲを素手で粉砕する。
小さいといっても人間の子供くらいの大きさはある。
「ヨッシャ、どんどんこい」
だからガースが多少調子に乗るのも分からなくはない。
「シャッ!」
大きなトカゲの1体が突撃してくる。
私は盾を構えてその突撃を逸らすとその背中に剣を突き立てる。その後ろから2体目の巨大トカゲが私に噛みつこうと口を開けた
瞬間、リューネの唱えた火球がその口の中に炸裂した。
爆発し、砂となったトカゲ共は瞬時に再生すると素早く穴の中へと隠れる。
「ライッヒヒ、残念だったなあ」
「どこまで持ちこたえる事が出来るかな」
倒されなかった2体はそう言うと首穴の中に身を隠すと今度は4体同時に首を出すと同時にまた穴の中に引っ込む。
「的を絞らせないつもりでしょうか」
「だろうな。ウッ」
私達は南北の穴から飛び出してきた二体を躱す。同時に東側の1体が火炎弾を口から吐いて来た。
私は盾を構えて防御するが熱と衝撃に盾にひびが入り割れた。
「勇者様、スキルを」
ガースが叫ぶ。
しかし私はためらっていた。
(このままではジリ貧だ。スキルは残り2回しか使えない。残りの四天王と悪神に使うとしたらもうここでは使えない。かといって温存してここでやられたら意味はない)
そうしている間に穴という穴からトカゲ共が一斉に現れ、ジリジリと距離を詰めて私達は包囲される形となってしまう。
ピチャピチャピチャン
この洞窟に入って何度も聞いた天井からの水滴
その生暖かさに私はある考えが閃いた。
「リューネ、俺に今できる限りでいい、筋力強化の魔法を最大で掛けてくれ」
「は、はい」
「ライッヒヒヒ、遂に破れかぶれになったか」
「かもな。だが当たっていると思う、ぜ」
そう言うと私は天井目掛けて剣を投げる。水滴が落ちてきた場所目掛けて。
トカゲ共の驚愕の表情を見て私は勝利を確信した。
「ドラッヒャアアアアッ」
天井からの悲鳴と共にトカゲ共が一斉に砂になる。
同時に天井が崩れる音がして
「落ちてくるぞ。よけろ」
まだ困惑顔の2人を連れて退避する。
ドズウウン
私達がいた場所に天井となっていた岩が落下する。
そこには崩落した天井から差し込む太陽の光に照らされた、天井だった岩ごと剣に貫かれたトカゲの本体である四天王ドライトリーが虫の息で痙攣していた。
「やはりな。お前は最初から私達の近くにいたんだな。私達の苦しむ姿を間近で見る為か?」
「そうだ。よくあの中に本体がいないと見破った」
「今までの奴らがそうだったからな。お前もそう言う傾向があると思ったんだ。だがどこにいるのかが問題だった。あの水滴がお前のヨダレだったと気が付いた時場所が分かったんだ」
「見事・・・だ」
そう言うとドライトリーは分体同様の砂となる。
私は2人を抱えて天井に出来た穴を筋力強化で強化された脚力で飛び出すと洞窟から脱出した。
「すごいです、勇者様。王国は作物も水も、金属も元に戻りました。今まで誰も成し得なかった偉業です」
尊敬の眼差しを向けるリューネに
「最後の四天王と悪神がまだ残っている。一旦王都へ戻ろう」
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