異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

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3章 候補者は4人

10  異世界コンペ⑤

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 「そうだな。渡さんの言う通り、互いに疑心暗鬼にならず協力するには徹底的に外部からのノイズをシャットダウンしてしまう事が重要だ。一つ想像して頂きたいが、ある目的の為に訓練を受けていた複数人の内何人かが脱走や脱落して後に適性があるからと戻って来た時にきちんとこなしていた人間が彼らとうまくやっていけるだろうか?私はノーと考えるね。渡さんは人間関係を理想的に見過ぎている。もちろんその理屈は外部から来た全くの赤の他人にも適用される事は言うまでもない」

真龍警部は無表情に言い放った。彼の言う事は冷徹だが人間心理の的を得ている、と私は思う。私自身彼自身の言ったような事態を見もして体験さえしてきたからなおさらだった。

だが渡も冷静だった。このような反論が生まれてくるのは当然というように。

「無論その理屈は正しいですよ、真龍警部。しかしそれは彼ら探索隊だけの話に収まるでしょうか?景勝氏が貰ったというこのチラシによればこの件はまず非常に抽象的な文言で人を集め、今ここで話されている最終目的さえ聞かされているのは一部の人間だけという状態なのは何故でしょう?」
正面の鏡の3人の人物はいずれも答えない。その態度を自らの答えに対する肯定と受け止めたのだろう、渡は断言した。

「あなた方自身が彼らを信用していない、もしくは見下しているからだ。つまり、探索隊がカオスを持ち逃げしたり、命惜しさにダーハムその他の勢力に引渡してしまうと恐れている」

「当然だろう!ダーハムの手の者に渡ってみろ、あらゆる次元を脅かす暗黒世界が誕生する事を意味するんだぞ!それを阻止するという崇高な理念を理解しない奴らの多い事・・・・!」

真龍警部の右隣の男が激昂して反論するが途中で真龍警部に口を塞がれ、ハッとして黙ってしまう。

「つまりこの探索と遠征において信頼関係が最大の武器となるのです。我々のあらゆる関係性においてね。このコンペはそこを徹底するために情報や人となりを開示しておく為の物でもあるのです。その上でお聞きします真龍警部。あなたの施設で最も頼りに、最も信頼している人間を送り込むつもりですか?」

「能力はね。私はあらゆる他人の人となりは完全に信用はしない主義でね。その上でというなら1人は最も信頼している人間を推薦している」

「ではその人物と私達が推している2名をそちらで訓練させても構わないでしょうか?」

渡のこの申し出に真龍警部もさすがに面食らったようだった。

「正気かね?」

「専門性のある訓練はそこしか受けられないでしょう?」

「確たる信念と目的があれば耐えられる、というのか?」

渡は頷く。黒崎美鈴も同意した。

「ではいいでしょう。あなた方の推す人材2名を明日にもこちらに寄こして頂きたい。あなた方の言う事を確認する為にもね」

真龍警部のこの言葉で終始私を不快にさせてきた人間コンペは終わった。

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