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3章 候補者は4人
11 兄妹の別れ
しおりを挟む「あの、本当に大丈夫なんでしょうか?」
コンペが終わった後、丹下景勝氏は心配そうに渡に尋ねた。
「それは真龍警部が約束を履行しないという点ですか?」
「そうです。あの人なら、というよりあの人の属しているあの組織なら私ともう一人の方をあの施設に入れたが最後別人とすり替えて異世界へ送るというのは普通にありそうな事だと思うんです」
だが妹の灯里嬢はもっと別の心配があるだろうと横から口を挟む。
「兄さん、自分が何をしようとしているのか分かっているの?兄さんは途方もない危険を冒してまで訳の分からない世界に行きたいの?とんでもないわ!命の危険が、自然災害とかならともかく、何とかという邪教集団などという気味の悪い人達によってもたらされるかもしれないのよ!」
「そんな事は分かっているよ。だが仮に奴らが居なくてもメンバー同士でのいがみ合いで自滅しかねる可能性だってあるんだ。その為にも自衛の手段は考えられる限り取るつもりだ。だが灯里俺はね、自分の納得する生き方で死ねるならそれが最高の人生だと思うんだ」
兄の説得に妹は全く理解できないという風に首を振ると私達に目を向ける。第三者から説得してくれと言わんばかりだ。
正直なところ私は彼女の意見にも景勝氏の意見にも賛成だったので考えをうまくまとめる事が出来ず、眉間にしわを寄せていい意見はないかと考え込んでしまった。
だが渡は違う。キッパリと次の様に言いきった。
「灯里さん、私への依頼はあなたのお兄様の行方を突き止める事でした。よって彼を発見した以上はその依頼は達成されたと考えます。そして今景勝さんからの依頼を私は九割九分達成したと考えています。最後の一分は先程の質問への回答で十分でしょう。真龍警部は確かに冷徹な人物ですが約束を違える事はしませんよ。ただ今回の冒険に関しては貴方は自分の全力以上の力を引き出す努力を強いられるであろう事は想像に難くないと思います。その覚悟が無いのなら今からでも遅くありません。辞退された方が良いでしょう」
その厳しい言葉に兄弟共にたじろいだが兄の方は意志の変わらぬ事を伝えると妹の方は口元を覆って外へと飛び出してしまった。私も後を追おうとしたが渡に肩を掴まれて制止された。
「追いかけなくていいんですか?」
私は渡に非難の目を向けながら景勝氏に言った。
「いいんですよ。所詮理解してくれるとは思っていませんでしたから。無事に帰って来て今度の冒険譚を聞かせて初めて理解してくれるとは思います」
「その為の準備は向こうで行う事になります。施設から冒険へ直行でしょうから、今言った事を妹さんにご自分で伝えてから出発なさって下さい。約束出来ますか?」
渡の配慮に内心私は恥じ入るばかりだった。これは家族の問題なのだ。ならば家族で話し合う事でしか解決しない。
赤の他人の出る幕ではないのだ。
「・・・・はい」
景勝氏もそれに気が付いたようで慌てて妹の後を追っていった。
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