異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

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4章 渡界人の慧眼

4-1 我はウォルター・ランドステイ⑩ 魔導士の最期

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 「ほざきおったな、若造!!」

体は3歳、だが顔は80とも90とも言えるような醜悪な皺だらけの顔でウォルター・ランドステイなる魔術師は悪鬼の如く体を大の字にして威嚇した。そのままなら多分滑稽な様態だったろうが、後ろの窓からの光を受けて床の映ったそいつの影は炎に包まれた巨大な悪魔そのものだった。

「ここではもう、活動できそうもない。この体のまま別の世界へ行くとしよう。転生より転移の方がずっと簡単だからな」

アエア オオウ アアオウオイオ オオイオアアイイオ イオウオアウ イエオ アオイアアエ


奇怪な呪文を唱えると空間全体が震え私は立っていられなかった。見ると子供の周りに虹色の光が幾重にも舞って、背後に黒い裂け目が徐々に広がろうとしていた。そしてその中へ子供の体から抜け出た燃え盛る人魂が青白い尾を引いて飲み込まれようとしていた。

だがこの状況に渡は身じろぎひとつせず、朗々と呪文を唱えた

アエア オオウ オオアイオ ウアイオ アオイオ アウエイイオ ウウオエオ アエイアアエ


その途端別の裂け目が渡と子供の間に現れて、まるで掃除機に吸い込まれる綿ゴミの様に人魂は新たに現れた裂け目へと吸い込まれていった。

そして何分、いや何時間立ったろうか。裂け目からさっきの途は一際小さい線香花火のような光を発する魂がひょっこり顔を出すと子供の体へと入っていった。

「これで大丈夫だ。勇君の魂は元の体に戻ったよ」

「じゃあ、万事解決という訳だ」

だが渡は難しい顔をしていた。

彼は使用人を呼んで母親のひかり氏を正気づかせると、まず、ベッドで寝ている愛息の魂を取り戻した事を伝えた。

「少しお話があるのですが」

「え、ええそうでしたわ。まだ報酬の話をしていませんでしたわね」

「それも関係あるのですが、どこか落ち着いて話せる場所はないでしょうか」

「でしたら私の部屋へどうぞ」

3分後私達はひかり氏の私室の椅子に腰かけていた。

「1つ申しておきたいのは今回の件はまだ終わっておりません。というのも当家の愛息と魂を交換した魔導士が転生の術を掛けた時の状態が未だに判っていないからです」

渡の説明を母親は半分も飲み込めていないようだった。だが彼は構わずに続ける。

「これが実に厄介で最も懸念すべきは奴が死の直前に魂を移した場合です。何もしなければ魂と肉体は調和状態を保とうとします。この場合、死人の中に入った愛息の魂も死に瀕している可能性が高いのです」
その言葉を聞いて母親は俯き嗚咽した。だがサッと顔を上げ涙を拭うと

「勇は後どの位生きられのでしょうか?」

「それは分かりません。彼の魂の強さに全てが掛かっている、としか申し上げられません。ですので彼が目を覚まさない場合や急死された場合は私の失敗という事でお金は一切頂かないつもりです」

「・・・・そうですか。ですがあなたはこの奇怪な症状、と申して良いのか分かりませんがこの状況から勇を救い出して下さった事に変わりはありません。落ち着いたら謝礼は必ず致します」

それで会見は終わった。私達は大伴家を出てアパートへと帰ったのだった。
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