異世界転生請負人・渡界人~知られざる異世界転生の裏側公開します

紀之

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4章 渡界人の慧眼

4-1 我はウォルター・ランドステイ終章 悲劇と戒め

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 もしハッピーエンドを望むならここでこの物語を終えるのが読者としては良いのだろう。

だが私としても、渡界人にしてもこの物語を異世界転生や異世界転移を望む者達への一種の戒めとして残す事を望んでいるので、冒頭で宣言したようにその後の結末を余さず書き残したいと思う。

アパートへ帰り着くと渡は早速異世界カーウデクストの女神マハに連絡を取った。

それによれば先程こちらの世界からカーウデクストへ1つの老いた魂が向かった、との事だった。

「では、そちらからこの世界への魂も1つ、向かったのですね?」

「はい。その老いた魂の持ち主ですが、こちらの世界では無名の人間でしたよ」

女神マハは極めて事務的な口調で言った。つまり私達が体験したあの老人の人生などは神からすれば、転生・転移させる同情を引かない人物という訳である。

「それで、その肉体はどうでしたか?」

「勿論、既に白骨化していましたよ。隠者の末路などそんな物です」

その報告に私は身震いした。渡の方をちらと見ると彼は特に表情も変えず、淡々とそうですか、とだけ答えた。

「どうも色々とお手数をお掛け致しました、女神マハ」

「ええ。ですが危機を未然に防げてこちらも良かったですよ。今後も良き関係を築いていけるよう、願っていますよ」

そう言うと女神の姿は鏡の中から消えていった。

1分後渡はどっと椅子に倒れ込むと両肘をついて拳を握って俯くと

「君、暫く一人にしてくれないか」

と掠れた声で言った。私はその通りにして自分の部屋へと帰った。

3日後勇君が亡くなった事が母親のひかり氏からの手紙で知らされた。

「遅かった。全てにおいて僕らは遅すぎたんだ」

「でも、どうしようもなかった」

「違うよ。いいかい、今度の事は僕達大人のエゴが原因だという事を忘れてはいけないよ」

「ウォルター・ランドステイだけじゃないのか?」

「勿論だ。僕ら大人は子供の教育に情熱を傾けすぎるんだ。まるで子供である事が悪い事であるように、大人になる為の知識を幼児の頃から詰め込み過ぎている。だから母親以外魂が入れ替わった事に不自然さを感じないどころかその知識や行動を神童だとか言って称賛した結果、発覚が遅れたんだ。世界を反転させてしまえば、これは君含めて異世界転生や転移したがる人間にも言える事だ。異世界の子供や周りの人間の人生を文字通り消しかねないリスクがあるという事を肝に銘じるべきだという事を改めて今日思い知らされたよ」

「・・・・なら将来の為にこの事件を記録しておくよ」

「そうしてくれ。そして僕がこの仕事で調子に乗るような事があったら、君、『ウォルター・ランドステイを忘れたか』と遠慮なく言ってくれ」
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