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4章 渡界人の慧眼
4-2 形見の錬金釜⑤ 犯人はどこへ
しおりを挟む私達は元来た道を戻ると家の裏手にある木戸に手を掛ける。木戸は鍵が掛かっておらずキイと音を立てて内側に開いた。
「鍵をこじ開けた形跡はない。それにほら」
渡が指さした地面にはスニーカーらしき足跡が薄く残っていた。渡は注意深くその足跡を消さない様にしながらその周囲を検分した。
「何もないようだね」
「そのようだ」
私達は母屋に続く足跡が無いか地面を観察しながら家屋へと向かったが、生垣周辺と家の周りの土は性質が違い、足跡は最初に発見した1組の靴跡以外発見出来なかった。
「ここだ。ここが製品の保管庫に違いない」
母屋から北に3mほど離れたバラック小屋。かなりの年月放置されていたらしく屋根や壁に使われている金属には錆が浮いている。
「ここは明らかにこじ開けた跡がある」
「鍵穴周辺に真新しい傷がいくつもあるのがその証拠だね」
小屋の中は薄暗く、スマホのライトを点ける。内部には十文字に区切った通路に沿って外側の荒れようとは不釣り合いな新品同然の棚が並びそれら全てに壺や釜、鍋類が種類別に並べられていた。そして棚の傍にはより小さな小物類、カップとか水筒か徳利のような物がやはり通路に沿って2列に並べられていた。
「気を付けてくれよ。うっかり割ってしまったら途方もない弁償金を払う必要が出てくるからね。おや?」
渡は足を止め通路の東側の一隅にスマホのライトを当てた。そこには円筒状の陶器が2本横倒しになって割れていてそのすぐ近くの棚に不自然な隙間があった。
「例の錬金釜はここにあったに違いない。あそこの壁に脚立があるがそれを使わなかったらしいところを見ると侵入した奴はかなり急いでいたようだな」
「それで犯人は誰なんだ?侵入経路と例の錬金釜が盗品だとわかった。だけど出品者とこの盗人が同一人物かはまだ分からないんだぜ?」
「もちろんさ。だから確かめに行こうじゃないか」
「どこに?」
5分後私達は近くの不動産屋に入っていた。
「すみませんが、家を借りたいんですがね。〇△―×■にあるあのヘンテコな空き家なんか最適とおもっているんですが・・・・」
「そこですか?あそこはねえ、空き家じゃないんですよ。家全体が宝の山が詰まっている金蔵みたいに遺族は思っているんでしょうな。実際のところ3つの家があそこの所有権を賭けて15年も争っていますからね」
ペラペラと個人情報を喋る不動産屋の男に一抹の不安と期待を感じつつ、更に突っ込んだ事を聞いてみたが、さすがに男もわきまえているらしくこれ以上の事は聞き出せなかった。
「完全に手詰まりだな」
私はため息をついた。ところが相棒の方は落胆の色も見せず駅に向けてサッサと歩き出していた。
「どこへ行くんだ?」
「コイツを分析してくれるところへね」
渡はジップロックを私に見せた。いつの間に回収したのか、陶器の破片がその中に入っていた。
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