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二廻目 初恋の香り
第39話 Utopia計画
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「――なんだ、ここは……?」
長い階段を下りた先には、見たことの無い機械がいくつも並ぶ広い空間が待っていた。
ただ白だけが映る、映画館のシアターを思わせる横長の巨大なモニターに、それよりかは小さいが同じように何も映さないモニターがいくつも並んでいる。部屋の中に照明はついておらず、辺りは薄暗い。頼りないモニターの明かりだけが唯一の光だった。
ここがPLOWの制御室かと思うも、人の気配はまったくしない。なぜだろうかと頭を捻らせていると、更に階下へ続く階段を見つけた。無﨑の姿が見当たらないことから、ここではない下の階にいることが予想されたが、今はこの謎の空間について知ることを優先するべきだと思い、適当なデスクに近付いてみる。
「……これは……春佳?」
デスクの上に飾ってあったのは、春佳と――おそらく霧山さんが笑顔で写っている古ぼけたツーショット写真。おそらくというのも、霧山さんの姿が今のものよりもとても若かった。一〇代後半ぐらいだろう。
……しかし、それだと今から三〇年ほど昔の写真になるが、それなら春佳はどうして今の見た目のままで写っているのだろう? 古ぼけた写真からして、PLOWの加工技術……とは思えないが……。
「ん……?」
その時、何かに触れてしまったのか、ピコンという音と共に暗くなっていたモニターの画面がパッと点いた。反射的に画面を見ると、そこには想像だにしていなかった文字が現れる。
『Utopia計画について。決行日は滞在最終日である八月一六日。PLOWの要所を爆破し倒壊させることで――』
「な、なんだこれ……?」
その一文に心臓を鷲掴みにされたような心地になる。八月一六日……つまり今日だ。
「PLOWを……爆破……?」
さまざまな感情がごちゃ混ぜになって頭がうまく働かない。
冗談みたいなことが書かれているが、冗談にしては性質が悪い。そもそも、こんな立派な施設と設備に、こんな文章を残しておく必要性も感じられない。こういった場所には大抵本当の事しか――。
「……そんなまさか……」
どこか真実味を感じてしまう文章に血の気が引いていく。一体誰が何のために? そんな思いが過るが、どちらにせよ一つだけ確かなのは、明らかに来てはいけない場所に来てしまった。見てはいけないものを見てしまったということだけだった。
無﨑を追う前に、この事実を蛍に教えなくてはならない。そう思い、ポケットから携帯電話を取り出す。
「残念だが、そこまでだ」
「――っ⁉」
「先に言っておくが、動かない方が身のためだ。動いたら……どうなるかは分かるな?」
背後から聞こえたのは無﨑の声。反射的に振り返ろうとするも、その一言で身体が硬直してしまう。動いたら撃つ、という普段なら冗談だと思うような台詞も、古森の姿と先ほどの文章を見た後だと嫌に現実味を帯びて聞こえていた。
「……どうして古森を撃った?」
時間稼ぎと思われない程度の疑問を口にしつつ、携帯を握った親指で気付かれないように操作する。電話は無理だとしても、メッセージならこの状況でも送れるだろう。
「別にどちらでも良かったんだよ。古森信治郎でも真木文乃でもね。だが、まさか身を挺して彼女を守るとは思わなかった」
耐えきれないといった様子で無﨑は楽しそうに笑う。その笑い声に怒りを覚えるも、なんとか気付かれずにメッセージを送ることは成功した。
送信した内容は、今すぐホテルに来てくれという旨のもの。どう状況が変わるか分からない現状で、短文だが蛍が動いてくれるであろう内容を送信する。
古森にはすでに医療スタッフが付いてくれているだろうし、俺の身を案じてくれていた蛍なら急いで駆けつけてくれるだろう。もしあのモニターに書かれていた通り、本当にPLOWが倒壊する規模の爆発が起きるような事態になっても、PLOWから離れたホテルなら助かる可能性は高くなる。
古森や真木さんを助けたいという気持ちもあるが、本当に爆発が起きる確証もないし、あの出血ではホテルに避難したところで同じ結末を迎えてしまうだけだ。
「もういいかね?」
無﨑からの問いかけに背筋が凍る。もしかして気付かれていたのだろうか? ……いや、そんなわけない。もし気付いていたのだとすれば、わざと見逃したことになる。
「……なんのことだ?」
「まぁいい。こうなってしまった以上、計画は一から練り直しだ」
……計画……先ほど見た〝Utopia計画〟とやらだろうか。
その件についても気にはなったが、今は先に聞きたいことがあった。
「さっきお前はどちらでも良かったと言ったが、何か恨みでもあったのか」
どうして古森を撃ったのか。その明確な理由が分からない。
「過ぎたことを気にするんだな。そんなことを気にしてる時と場合だとは思えないが。よほどの大物か、それともただの馬鹿か」
「答えられないのか?」
「ふむ。答えられるか、られないかと問われれば当然答えられるが。――これから死ぬ人間と話をするほど暇ではないんでね」
「――っ‼」
長い階段を下りた先には、見たことの無い機械がいくつも並ぶ広い空間が待っていた。
ただ白だけが映る、映画館のシアターを思わせる横長の巨大なモニターに、それよりかは小さいが同じように何も映さないモニターがいくつも並んでいる。部屋の中に照明はついておらず、辺りは薄暗い。頼りないモニターの明かりだけが唯一の光だった。
ここがPLOWの制御室かと思うも、人の気配はまったくしない。なぜだろうかと頭を捻らせていると、更に階下へ続く階段を見つけた。無﨑の姿が見当たらないことから、ここではない下の階にいることが予想されたが、今はこの謎の空間について知ることを優先するべきだと思い、適当なデスクに近付いてみる。
「……これは……春佳?」
デスクの上に飾ってあったのは、春佳と――おそらく霧山さんが笑顔で写っている古ぼけたツーショット写真。おそらくというのも、霧山さんの姿が今のものよりもとても若かった。一〇代後半ぐらいだろう。
……しかし、それだと今から三〇年ほど昔の写真になるが、それなら春佳はどうして今の見た目のままで写っているのだろう? 古ぼけた写真からして、PLOWの加工技術……とは思えないが……。
「ん……?」
その時、何かに触れてしまったのか、ピコンという音と共に暗くなっていたモニターの画面がパッと点いた。反射的に画面を見ると、そこには想像だにしていなかった文字が現れる。
『Utopia計画について。決行日は滞在最終日である八月一六日。PLOWの要所を爆破し倒壊させることで――』
「な、なんだこれ……?」
その一文に心臓を鷲掴みにされたような心地になる。八月一六日……つまり今日だ。
「PLOWを……爆破……?」
さまざまな感情がごちゃ混ぜになって頭がうまく働かない。
冗談みたいなことが書かれているが、冗談にしては性質が悪い。そもそも、こんな立派な施設と設備に、こんな文章を残しておく必要性も感じられない。こういった場所には大抵本当の事しか――。
「……そんなまさか……」
どこか真実味を感じてしまう文章に血の気が引いていく。一体誰が何のために? そんな思いが過るが、どちらにせよ一つだけ確かなのは、明らかに来てはいけない場所に来てしまった。見てはいけないものを見てしまったということだけだった。
無﨑を追う前に、この事実を蛍に教えなくてはならない。そう思い、ポケットから携帯電話を取り出す。
「残念だが、そこまでだ」
「――っ⁉」
「先に言っておくが、動かない方が身のためだ。動いたら……どうなるかは分かるな?」
背後から聞こえたのは無﨑の声。反射的に振り返ろうとするも、その一言で身体が硬直してしまう。動いたら撃つ、という普段なら冗談だと思うような台詞も、古森の姿と先ほどの文章を見た後だと嫌に現実味を帯びて聞こえていた。
「……どうして古森を撃った?」
時間稼ぎと思われない程度の疑問を口にしつつ、携帯を握った親指で気付かれないように操作する。電話は無理だとしても、メッセージならこの状況でも送れるだろう。
「別にどちらでも良かったんだよ。古森信治郎でも真木文乃でもね。だが、まさか身を挺して彼女を守るとは思わなかった」
耐えきれないといった様子で無﨑は楽しそうに笑う。その笑い声に怒りを覚えるも、なんとか気付かれずにメッセージを送ることは成功した。
送信した内容は、今すぐホテルに来てくれという旨のもの。どう状況が変わるか分からない現状で、短文だが蛍が動いてくれるであろう内容を送信する。
古森にはすでに医療スタッフが付いてくれているだろうし、俺の身を案じてくれていた蛍なら急いで駆けつけてくれるだろう。もしあのモニターに書かれていた通り、本当にPLOWが倒壊する規模の爆発が起きるような事態になっても、PLOWから離れたホテルなら助かる可能性は高くなる。
古森や真木さんを助けたいという気持ちもあるが、本当に爆発が起きる確証もないし、あの出血ではホテルに避難したところで同じ結末を迎えてしまうだけだ。
「もういいかね?」
無﨑からの問いかけに背筋が凍る。もしかして気付かれていたのだろうか? ……いや、そんなわけない。もし気付いていたのだとすれば、わざと見逃したことになる。
「……なんのことだ?」
「まぁいい。こうなってしまった以上、計画は一から練り直しだ」
……計画……先ほど見た〝Utopia計画〟とやらだろうか。
その件についても気にはなったが、今は先に聞きたいことがあった。
「さっきお前はどちらでも良かったと言ったが、何か恨みでもあったのか」
どうして古森を撃ったのか。その明確な理由が分からない。
「過ぎたことを気にするんだな。そんなことを気にしてる時と場合だとは思えないが。よほどの大物か、それともただの馬鹿か」
「答えられないのか?」
「ふむ。答えられるか、られないかと問われれば当然答えられるが。――これから死ぬ人間と話をするほど暇ではないんでね」
「――っ‼」
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