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四廻目 零れた境界線
第74話 話すべきか否か
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「あ、そうそう。今日また同じ夢を見てさぁ……」
携帯に届いていたメッセージ通り一階で蛍と待ち合わせをしていたのだが、そこに現れたのは蛍ではなく春佳。
どうやら暇していたところ偶然俺を見つけたようで、蛍を待つついでに春佳と雑談することになっていた。
「へー?」
「どっかのベッドで横になってたり、綺麗な女の人と話してる夢なんだけど」
これがPLOWが爆破して――だなんて夢だったら仰天していたが、なんてことないどこにでもあるたわいもない話だった。
「同じ夢か」
何度も同じ夢を見ることは昔からあった。前回見た続きから始まる連続した夢や、何度も同じ光景を見させられる夢。おそらくは、ああいった類のものと同じなのだろう。
「これってなんだと思う? なにかの啓示とかかな?」
「さあ?」
「ぜんっぜん興味無いじゃん!」
「いや、そういうわけじゃないけど」
興味が無いわけではなかったが、所詮夢は夢でしかないし、夢の成り立ちについても特に詳しいわけでもないので語るべき点が無かっただけなのだ。
「そんなことより、本当にこんなとこでサボってていいのか?」
「べ、別にサボってるわけじゃないし? ほら、こうしてお客様とお話してるでしょ?」
「うーん……」
「接客も仕事のうちってこと!」
「そうか……春佳は仕事で俺と話してたのか……」
座ったまま、わざとらしく肩を落としてがっくりと項垂れてみせる。
「え、いや冗談だってば! ただやること無くて暇――じゃなくて志樹と話したかったからで」
「……それをサボりって言うんじゃないか?」
仕事であろうとそうでなかろうと楽しいことに変わりはないのでよかったが、春佳の素直な反応は揶揄い相手には最適だった。
「あーはいはい、もういいわよ。それじゃ、あたしは別の遊びあい――別のお客様の接客にでも行くから」
「なんだもう行っちゃうのか?」
「考え事の邪魔しちゃ悪いし」
……バレていたか。何も知らない顔をしているのに気配りができている。
「ま、何考えてるのかは知らないけどさ」
「春佳も大人になれば分かるさ」
「あー! またそうやって子ども扱いする! まあいいや、またね!」
そう言うと、春佳は手をひらひらさせて歩き去って行く。
「――あら、春ちゃん帰っちゃうの?」
「ん?」
入れ替わりに聞こえる声に振り向くと、蛍が歩いてきていた。最後に会った状況が状況だっただけに、思わず涙腺が緩みかける。
「暇なら今日も一緒に回ればよかったのに」
「そうだな……」
「……何か考え事?」
「分かるのか?」
「まぁ、なんとなくだけど」
顔には出さないように努めていたが、春佳といい蛍といい察しが良くて困る。
……いや、それか自分が思っている以上に分かりやすく顔に出てしまっているのか。自分ではポーカーフェイスだと思っていたのだが、意識を改める必要があるのかもしれない。
「で? 何があったの?」
「あぁ、えっと……」
何をどう話すべきか迷い、口籠る。
本当の事を話すべきだろうか? 仮に話したところで信じてもらえるかどうかは怪しい。いや、こんな荒唐無稽な話、普通は信じてもらえないだろう。
……だが、もし蛍が信じてくれるのであれば、問題解決の大きな足掛かりになるかもしれない。〝三人寄れば文殊の知恵〟ということわざもあるのだ。
「ちょっと場所を変えないか?」
その提案に俺の内心を察してくれたのか、蛍は頷いて付いてきてくれた。
携帯に届いていたメッセージ通り一階で蛍と待ち合わせをしていたのだが、そこに現れたのは蛍ではなく春佳。
どうやら暇していたところ偶然俺を見つけたようで、蛍を待つついでに春佳と雑談することになっていた。
「へー?」
「どっかのベッドで横になってたり、綺麗な女の人と話してる夢なんだけど」
これがPLOWが爆破して――だなんて夢だったら仰天していたが、なんてことないどこにでもあるたわいもない話だった。
「同じ夢か」
何度も同じ夢を見ることは昔からあった。前回見た続きから始まる連続した夢や、何度も同じ光景を見させられる夢。おそらくは、ああいった類のものと同じなのだろう。
「これってなんだと思う? なにかの啓示とかかな?」
「さあ?」
「ぜんっぜん興味無いじゃん!」
「いや、そういうわけじゃないけど」
興味が無いわけではなかったが、所詮夢は夢でしかないし、夢の成り立ちについても特に詳しいわけでもないので語るべき点が無かっただけなのだ。
「そんなことより、本当にこんなとこでサボってていいのか?」
「べ、別にサボってるわけじゃないし? ほら、こうしてお客様とお話してるでしょ?」
「うーん……」
「接客も仕事のうちってこと!」
「そうか……春佳は仕事で俺と話してたのか……」
座ったまま、わざとらしく肩を落としてがっくりと項垂れてみせる。
「え、いや冗談だってば! ただやること無くて暇――じゃなくて志樹と話したかったからで」
「……それをサボりって言うんじゃないか?」
仕事であろうとそうでなかろうと楽しいことに変わりはないのでよかったが、春佳の素直な反応は揶揄い相手には最適だった。
「あーはいはい、もういいわよ。それじゃ、あたしは別の遊びあい――別のお客様の接客にでも行くから」
「なんだもう行っちゃうのか?」
「考え事の邪魔しちゃ悪いし」
……バレていたか。何も知らない顔をしているのに気配りができている。
「ま、何考えてるのかは知らないけどさ」
「春佳も大人になれば分かるさ」
「あー! またそうやって子ども扱いする! まあいいや、またね!」
そう言うと、春佳は手をひらひらさせて歩き去って行く。
「――あら、春ちゃん帰っちゃうの?」
「ん?」
入れ替わりに聞こえる声に振り向くと、蛍が歩いてきていた。最後に会った状況が状況だっただけに、思わず涙腺が緩みかける。
「暇なら今日も一緒に回ればよかったのに」
「そうだな……」
「……何か考え事?」
「分かるのか?」
「まぁ、なんとなくだけど」
顔には出さないように努めていたが、春佳といい蛍といい察しが良くて困る。
……いや、それか自分が思っている以上に分かりやすく顔に出てしまっているのか。自分ではポーカーフェイスだと思っていたのだが、意識を改める必要があるのかもしれない。
「で? 何があったの?」
「あぁ、えっと……」
何をどう話すべきか迷い、口籠る。
本当の事を話すべきだろうか? 仮に話したところで信じてもらえるかどうかは怪しい。いや、こんな荒唐無稽な話、普通は信じてもらえないだろう。
……だが、もし蛍が信じてくれるのであれば、問題解決の大きな足掛かりになるかもしれない。〝三人寄れば文殊の知恵〟ということわざもあるのだ。
「ちょっと場所を変えないか?」
その提案に俺の内心を察してくれたのか、蛍は頷いて付いてきてくれた。
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