SAVE_YOU

星逢もみじ

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六廻目 罪の記憶

第119話 解決……?

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「……夢、か……」

 ベッドの上、点滅する景色を隠すように瞼を閉じ、頬を伝う涙をそのままに想う。

 今回のは正真正銘の夢だった。何度も思い出す、最も新しい過去の記憶。あそこまで鮮明な夢を見てしまったのは、おそらく死の間際、アンの一言を思い出してしまったのが原因だろう。

 だが、悪夢を見るというものも決して悪いことばかりではない。夢は現実と錯覚するほど強く感情を揺り動かしてくる。今、PLOWを取り巻く事柄を解決するには、確固たる決意が必要になるだろう。弱い精神のままでは到底解決することはできない。そう思えば、あの絶望の日々を鮮明に思い出すことができたのは良いことなのかもしれない。

 ――そうして現実世界に戻ってきた俺は時計を確認する。八月一五日の午前八時。どうやら無事に戻れたようだった。
 ……蛍はあの後無事だっただろうか。俺が死んだ直後に時間が戻ったのならいいが……。

 そして吾御崎。俺と共にUtopia計画を阻止しようとしてくれた存在。夢という形で記憶を維持していたのは一度だけと言っていた為、この世界でも同じように協力してくれるとは限らないが、無事でいてくれればと思う。

「……なんにせよ、もう猶予は無い」

 やり直せるのはあと一度だけ。しかもその最後の一度は最終日からの始まりになる。そうなれば作戦を練る時間はほとんど残されていない。

 だが、悲観的になるのは早い。爆弾の解除法は分かったのだ、前回と同じように事前に霧山さんに話を通して協力を仰げばその問題は解決する。最大の問題はその後の無﨑とアンへの対処だが……その事に関しては、一人で頭を捻っていても埒が明かない。

「とりあえず霧山さんに連絡を――」

 覚えておいた直通の電話番号にかけようとして手を止める。

「……いや、その前に蛍に連絡しておくか」

 前回は蛍を危険な目に遭わせないためにと思い、敢えて遠ざける行動を取ったが、結局蛍は俺の前に現れてしまった。結果的に拳銃のトリガーを引く踏ん切りがついたのでよかったが、ああしたイレギュラーが起きる可能性を考慮したら目の届く範囲にいてもらったほうが安心だ。

 そう結論付け、まずは蛍に電話を掛ける。


          ☾


「――それで、無﨑さんとアンをどうにかする方法を一緒に考えてほしいと?」

 霧山さんと電話をした俺は蛍との待ち合わせを前に霧山さんの部屋で直接話す事に成功し、そこで春佳の秘密やUtopia計画の詳細などを包み隠さず話すことによって、俺は霧山さんの協力を得ることに成功していた。

「はい。爆弾の解除については今言った手順で進めれば――」
「いや、もうそれぐらいでいい」
「……ですが、情報はできるだけあった方が」
「そうじゃない。君の言っている事はもうすべてなんだ」
「…………終わったこと? 一体どういう意味ですか?」
「今君が教えてくれたアンと爆弾。そして、Utopia計画と無﨑さん。そのどちらの問題も、もう解決しているということさ。……恐らくね」

 ……解決している? 今俺が言った事すべてが? 何を言っているんだ?

「詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
「……実は君から連絡が来る少し前に、そのアンという女性に話しかけられてね、その時に今君が言った事をそっくりそのまま聞かされたんだよ」

 アンが霧山さんに接触した? 理由は解らないが、しかしそれだと今回はアンが記憶を引き継いでいるのか。……だとすると前回と同じ手は使えない。厄介なことになった。

「――そして、最後に無﨑さんを地下実験場で殺したとも言っていた」
「なっ⁉ 本当ですか⁉」
「ああ……」

 アンが無﨑を……⁉ どうしてそんなこと――いや、記憶を引き継いでいるとするならおかしくはないか。前の世界でアンは暴走したルメ――つまり、無﨑に殺された。だとするなら、裏切られ、殺される前に殺してしまえと考えても何らおかしなことではない。無﨑とアンは協力関係にあったのだ、アンが無﨑の居場所を知っていたのにも納得がいく。

 ……だが、どうにも腑に落ちない。アンが本当に無﨑を殺したのだとしても、どうしてアンはわざわざ霧山さんにそんなことを言いに行ったのか。……答えを得るには、やはりアンに直接聞いてみるしかないだろう。

「それで、アンは今どこに?」
「……死んだよ」
「は⁉ 死んだ⁉」
「私に詳細を告げた後、拳銃で自分の頭を……どうしようもなかった。警察が来るまで動かしたくなかったが、流石にそのまま通路に置いておくことはできなかったから、今は空いている部屋に安置しているんだが……」
「……そんな……っ、彼女は他に何か言ってませんでしたか?」
「拳銃を取り出す前、『無﨑さんとの約束だから協力してあげないとね。それに、これは誰にとってもプラスになる』と言っていたが、どういう意味か分かるかい?」
「……いえ……」

 てっきりアンに前の世界の記憶が存在していて、その復讐をしたのだと思ったが……協力してあげないと……? 誰にとってもプラスになる……? 無﨑を殺すことが? それとも自身が死ぬことがか? ……まるで意味が分からない。

 無﨑を殺したのならもう身の危険は無いはずのに、どうして自殺なんてことを……。まさか捕まるのを恐れて? いや、それとも自責の念に駆られて……か?

 ……どちらも考え難い。アンがそんなまともな精神をしているとは思えない。だが、いくら考えてもその答えを得ることはもうできないのだろう。

「……それで、無﨑は本当に?」
「それを今から確かめようと地下へ行こうと思っているんだ。一緒に行くかい?」
「はい」

 願ってもない提案だ。この目で無﨑の死を確認しなければ安心も納得もできない。

「分かった。ではさっそく――」
「一応護身用の拳銃も持って行った方がいいと思います」
「……春佳の件を聞いた時点で君のことはほとんど信用していたが、そこまで知られていると少し怖くなるな」
「すみません。ですが、何があるか分からないので」
「ああ、そうだな」

 そう言って、霧山さんは引き出しの中から拳銃を取り出す。

「それと、吾御崎という女性も連れて行きたいのですが」

 もし無﨑が生きていたら状況によって荒事になるかもしれない。できる準備はしておきたかった。

「いや、それは駄目だ。地下には春佳に関連した情報が山ほどある。部外者に知られたくはない」
「……分かりました」

 残念だが、それが理由なら諦めるしかない。どれだけ話したところで、春佳が理由なら霧山さんは妥協しないだろう。それに、前の世界までの記憶を引き継いでいない霧山さんに危機意識を説こうとしたところで、考えを変えさせるだけの言葉を俺はもっていない。

 ――そうして俺と霧山さんは無﨑の遺体を確認する為、地下実験場へと向かって行った。
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