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依頼者2
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晃の隣に腰を下ろした女性は、春野彩美と名乗った。
先程の話の通り、恋人の前田洸太がアクビスの里に行ったきり帰ってこなくなったという。
「あの。春野さんはどうしてこちらに?」
「え?」
遥の問いに、彩美はキョトンとしている。
「どうしてって、それはここが探偵事務所で……あ。確かホームページを見て、それでこちらにしようって決めて」
至る所に視線を向けながら考え込む彩美を見て、遥はその手元を指さした。
「その抱えている資料、アクビスの里のものですよね。あなたがうちを選んだ理由は、そこに見えているマークがうちの事務所のマークと似ていたからではありませんか」
彩美は資料をテーブルに置く。
その表紙には“アクビスの里”の文字と共に、紫檀色の蓮の花が描かれていた。
「うちの事務所も、そのアクビスとやらと同じく蓮の花を掲げています。まあ、色は紫檀ではなく碧色ですが」
「もしかして、こちらの探偵事務所はアクビスと何か関係が?」
「いやいや、そういう意味で言ったのではありません。逆に言えば、関係がありそうな事務所にわざわざ訪ねに来なくてもなあ、と少々疑問に思いまして」
彩美の目つきは一瞬鋭く変わったが、すぐに元に戻る。その一瞬の沈黙を逃すまいと九条は口を開いた。
「あの、先ほども申し上げましたがこれは探偵そこらにどうにかできる問題ではありません。宗教とは個人の信仰ですから、事件性がない限り警察でも手が出しづらいのです。ましてやこんな若いお嬢さん方にできることなんて」
「いや。その依頼うちで引き受けましょう」
声のした方に、皆が振り向く。
視線の先、開けっ放しにしていた涼子の事務所へとつながる内扉の側には、男性がひとり立っていた。
「あなたは?」
「ああ、彼はうちのスタッフで白井翔太といいます。映像の編集や機械関係を扱うので、この上に彼も事務所を構えているんです」
九条の問いに涼子が答えれば、九条は眉毛をあげて意味深な表情を翔太に向けた。
「へえ。それで、何故お引き受けに? あまり迂闊なことはしない方がいいと思いますが」
「いやいや、そもそも菊田さんもそちらの女性も、警察では取り合ってもらえなかったからここに来たんですよね? 何もやらないよりは幾分マシなんじゃないですか」
翔太と九条のピリついた雰囲気に、涼子が慌てて声を上げる。
「ま、まあ。今日のところは皆さんお引き取りいただいて。また後日に改めませんか? こちらでも少し情報収集しておきますから」
「情報収集、ねえ……」
まだ何かを言いたげに九条は呟くが、涼子にせっつかれた警察関係者は仕方なく事務所を後にした。
「なに喧嘩売ってんの、らしくないじゃん」
遥が言えば、翔太は肩をすくめる。
「そうっすか? なんか九条って人が斜に構えて上からなのが、ちょっとなって」
「あ、あの。私はどうしたら」
彩美が状況を伺う様に声を出せば、遥はメモを差し出す。
「こちらに連絡先をお書きください。あなたの方にもまた後日、連絡させていただきますので」
「あの、本当に大丈夫なんですか? その」
遥は彩美の言葉を待つ。
「……いや、やっぱりなんでもないです。失礼します」
そうして彩美は言葉を飲み込むと、連絡先を書いたメモを置いてそそくさと事務所を出て行った。
先程の話の通り、恋人の前田洸太がアクビスの里に行ったきり帰ってこなくなったという。
「あの。春野さんはどうしてこちらに?」
「え?」
遥の問いに、彩美はキョトンとしている。
「どうしてって、それはここが探偵事務所で……あ。確かホームページを見て、それでこちらにしようって決めて」
至る所に視線を向けながら考え込む彩美を見て、遥はその手元を指さした。
「その抱えている資料、アクビスの里のものですよね。あなたがうちを選んだ理由は、そこに見えているマークがうちの事務所のマークと似ていたからではありませんか」
彩美は資料をテーブルに置く。
その表紙には“アクビスの里”の文字と共に、紫檀色の蓮の花が描かれていた。
「うちの事務所も、そのアクビスとやらと同じく蓮の花を掲げています。まあ、色は紫檀ではなく碧色ですが」
「もしかして、こちらの探偵事務所はアクビスと何か関係が?」
「いやいや、そういう意味で言ったのではありません。逆に言えば、関係がありそうな事務所にわざわざ訪ねに来なくてもなあ、と少々疑問に思いまして」
彩美の目つきは一瞬鋭く変わったが、すぐに元に戻る。その一瞬の沈黙を逃すまいと九条は口を開いた。
「あの、先ほども申し上げましたがこれは探偵そこらにどうにかできる問題ではありません。宗教とは個人の信仰ですから、事件性がない限り警察でも手が出しづらいのです。ましてやこんな若いお嬢さん方にできることなんて」
「いや。その依頼うちで引き受けましょう」
声のした方に、皆が振り向く。
視線の先、開けっ放しにしていた涼子の事務所へとつながる内扉の側には、男性がひとり立っていた。
「あなたは?」
「ああ、彼はうちのスタッフで白井翔太といいます。映像の編集や機械関係を扱うので、この上に彼も事務所を構えているんです」
九条の問いに涼子が答えれば、九条は眉毛をあげて意味深な表情を翔太に向けた。
「へえ。それで、何故お引き受けに? あまり迂闊なことはしない方がいいと思いますが」
「いやいや、そもそも菊田さんもそちらの女性も、警察では取り合ってもらえなかったからここに来たんですよね? 何もやらないよりは幾分マシなんじゃないですか」
翔太と九条のピリついた雰囲気に、涼子が慌てて声を上げる。
「ま、まあ。今日のところは皆さんお引き取りいただいて。また後日に改めませんか? こちらでも少し情報収集しておきますから」
「情報収集、ねえ……」
まだ何かを言いたげに九条は呟くが、涼子にせっつかれた警察関係者は仕方なく事務所を後にした。
「なに喧嘩売ってんの、らしくないじゃん」
遥が言えば、翔太は肩をすくめる。
「そうっすか? なんか九条って人が斜に構えて上からなのが、ちょっとなって」
「あ、あの。私はどうしたら」
彩美が状況を伺う様に声を出せば、遥はメモを差し出す。
「こちらに連絡先をお書きください。あなたの方にもまた後日、連絡させていただきますので」
「あの、本当に大丈夫なんですか? その」
遥は彩美の言葉を待つ。
「……いや、やっぱりなんでもないです。失礼します」
そうして彩美は言葉を飲み込むと、連絡先を書いたメモを置いてそそくさと事務所を出て行った。
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