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「あなた、この場所を覚えているの?」
「ああ。だけど、きみから俺に質問するのはもう、やめてもらえないかな」
「……なぜ?」
東伍は運転席から降りると、後部座席のドアを開けて無理やり彼女の手首を掴む。乱暴に車の外に引っ張り出すと、思い切り扉を閉めた。
「な、なにするの」
「緑の鍵の詳細。この情報は、俺がいま持つ唯一の武器なんだ。そう簡単には渡せない」
「……そうよね。気持ちはわかるわ。でも、もう時間がないの。本当はすぐにでも緑の鍵を回収して中身を確認したい。私たちにはもう——」
きゃ、と小さく悲鳴をあげた彼女は唇を抑える。見開かれたまんまるな瞳は、一瞬重なって離れた東伍の唇を一直線に見つめていた。
「……どうして今、キスなんて」
「きみは誰だ。鷹司泉でも小林陽子でも、サクヤでもエルでもない、きみは誰なんだ。俺はずっと誰と話をしている? きみは俺の恋人か? 陽子は俺の恋人か? きみの中には、あと幾つ人格が存在するんだ!」
再びチクチクと痛み出した頭の中を無視して、東伍は再び唇を彼女に寄せる。
「やめて」
「教えてくれよ。あんた誰だ」
「お願い水野さん。止まって」
「誰だ……俺は、誰、なんだ」
頭の痛みが、ぷつりと切れた。
同時に東伍の動きは止まり、脱力した膝が折り曲がって地面に打ち付けられる。上半身は前方に倒れ、それを抱き止めた彼女にしなだれ掛かった東伍は意識も半分だった。
「水野さん?! 水野さん!しっかり!!」
彼女は、東伍の口に錠剤をねじ込む。
半開の瞼で見上げれば、東伍の身を案じて必死に声をかける彼女の顔がぼやけた。
栗色の髪。その髪を照れくさそうに撫でながら、ぼやけた彼女が笑う。
『水野くんは髪、黒くて長い方が、好きでしょう?』
『水野くん、タオルどうぞ』
高校一年生の夏。
淑和学院のプールで練習を終えた彼は、同じ水泳部の彼女にそう声をかけられた。
『ああ、さんきゅー。あれ、えっと……名前なんだっけ?』
『誰って、酷いなあ。小林だよ。水野くん一組でしょ? 私、隣の二組』
『そうだ、ごめんごめん。俺、なんか最近記憶力悪くなっちゃってさ』
『それ記憶力の問題かなあ。毎日練習しすぎなんじゃない? だってめっちゃ痩せたもん! 少しは休憩しないと』
『そういう小林こそ、最近めっちゃ頑張ってんじゃん。部活終わりにこうして自主練してるの、いつも俺と小林だけだし。タイムも女子の中ではダントツだろ?』
『まあね。小さい頃からスイミングやらされてたから、それなりには。おかげで髪も伸ばしたいけど、肩より下まで長かったこと一度もないんだよ』
『へえ。でも俺、好きだけどね』
『え?』
『いやほら。小林の、髪型?』
『うそだあ。だって〇〇が言ってたよ? 水野くんは髪、黒くて長い方が好きだって』
『え、〇〇? 俺あんまり話したことないけどなあ』
『そうなの? でも同じクラスでしょ?』
『同じクラスでも話さない子もいれば、違うクラスでも話す子もいるでしょ。ほら、今の俺らだってそうだし』
『それは部活が一緒だからで』
夏の陽ですっかり乾いた身体を拭きながら、彼は照れたように切り出す。
『じゃあさ。今日一緒に帰ろうよ』
『へっ?! わ、私と?!』
『いや、そんなに驚かなくても。俺、小林ともっと話したいし。だめかな?』
『ダメじゃないダメじゃない! うん、帰ろう。私着替えてくる! あ、待って! 部室の鍵職員室かも! 取ってくる!』
『ははっ、ちょっと落ち着いて。鍵なら俺が持ってるから』
『え、なんで持ってるの?』
『盗んだの』
『嘘……』
『うん、嘘』
『はあ?』
呆れ顔が段々と笑顔に変わり、その笑いは彼にも伝染する。
『なんか食べて帰る?』
『私ビーフシチュー!』
『いいね。じゃあファミレスで話そっか』
『水野くんはファミレスメニュー、何が好き?』
『えーっと、俺はね。チキンと……メキシカンピラフ、かな』
ズドン。……東伍の胸が、跳ねた。
「水野さん死なないで。帰ってきてお願いっ……!」
ずん——ずん——重たい圧力が、栓のしまった喉元に向かって空気を無理やりに押し出す。冷たく暗い海の底でもがいていた東伍は、そのじんわりと温かい感覚に意識を揺らした。
胸に触れる両掌から、熱が伝わる。
「……うっ」
呼吸を取り戻した東伍は身体を回転させながら横を向き、ぺしゃんこに潰れた肺に目一杯空気を吸い込んだ。
干からびた口内を潤すための唾液にむせ返り、やっとのことで呼吸を取り戻すと反射で上体を起こす。
「あ、あれ……俺」
「水野さん! 良かった。このまま目覚めなかったらどうしようって」
泉の顔をした彼女は、ほっとした面持ちで東伍を見た。東伍は自身の胸と脇腹辺りに貼られた電極パッドを剥ぎ取ると、顔を上げて状況を確認する。
見回せばその場所は、東伍にとって懐かしい風景だった。
「嘘だろ、この部屋」
「覚えがあるの?」
「連れてきたかった場所ってまさか、小瀬メンタルクリニック?! いやでも、あの地下は確か全部燃えたはず……はっ! で、出口! エレベータのボタンが、ここにはっ!」
「落ち着いて。この場所はあなたの閉じ込められていた場所じゃない。ちゃんと出口もあるわ」
部屋の中央に置かれたベッドに座る東伍。
真上にはLEDの無影灯、シルバーのトレイが乗った医療用カートに、大きなモニター画面。ダストシュート、業務用冷蔵庫、洗濯機にコンロに流し台。見れば見るほど、その場所は小瀬メンタルクリニックの地下室と瓜二つだったのだ。
「そっか。ジンはよっぽどこの場所が好きだったのね」
「ジン?」
「ええそうよ、ジン。彼はね、ここ斎木の森で幼少期を過ごしたの」
斎木の森——彼女の口から新たな情報が出たと同時、解消されない疑問がさらに東伍へと積み重なる。
「この施設が、さっき車を停めたコンクリート塀の内側か」
「うん。私が持っていた黒い鍵は、この斎木の森という施設の鍵だったの」
「……へえ、なるほど。そんで更に言えば、この斎木の森は例の人格ゲノムの研究に関わる場所ってわけだ」
「あ、そっか。あなたも、美聖の残したUSBデータの中身を泉から知らされていたのよね。そうよ大正解。この施設のオーナーと鷹司慶三は、古い友人だったみたいで」
なんとなく。東伍の雰囲気に小さな違和感を覚えたものの、とりあえず目の前の男が無事だったことに安堵した彼女は、脱力するように東伍が長座するベッドに腰を下ろした。
「斎木の森はね、元々は児童養護施設だったの。身寄りのない子供を受け入れ、生活し、日常を過ごせる至極まともな場所だった。でも資金繰りに苦しくなったオーナーが、旧友である鷹司慶三に相談したのが運の尽き。子供達を守るはずのこの場所は、あっという間に悪の巣窟に変貌した。ジンや泉は、その被害者。そして私は……加害者、なの」
だんだんと尻すぼみになっていく声量。
丸まった背中が、申し訳なさそうに真実を紡ぐ。
「私の名前は小春。川村小春」
小春は恭一の妻にして凛子の母親。
そして、鷹司に嫁いだ美聖の妹でもあった。
「泉の特殊な体質を借りて、私は今こうして生きていられる。でも、これは本来いけないことよ。正さなければならないことなの」
「どういう意味だ」
「言葉の通りよ。私、川村小春はもう随分前に死んでいるから。そして私の死には、さっき話したクラブホステスの美和……彼女のそんざいが、深く関わっている」
「ああ。だけど、きみから俺に質問するのはもう、やめてもらえないかな」
「……なぜ?」
東伍は運転席から降りると、後部座席のドアを開けて無理やり彼女の手首を掴む。乱暴に車の外に引っ張り出すと、思い切り扉を閉めた。
「な、なにするの」
「緑の鍵の詳細。この情報は、俺がいま持つ唯一の武器なんだ。そう簡単には渡せない」
「……そうよね。気持ちはわかるわ。でも、もう時間がないの。本当はすぐにでも緑の鍵を回収して中身を確認したい。私たちにはもう——」
きゃ、と小さく悲鳴をあげた彼女は唇を抑える。見開かれたまんまるな瞳は、一瞬重なって離れた東伍の唇を一直線に見つめていた。
「……どうして今、キスなんて」
「きみは誰だ。鷹司泉でも小林陽子でも、サクヤでもエルでもない、きみは誰なんだ。俺はずっと誰と話をしている? きみは俺の恋人か? 陽子は俺の恋人か? きみの中には、あと幾つ人格が存在するんだ!」
再びチクチクと痛み出した頭の中を無視して、東伍は再び唇を彼女に寄せる。
「やめて」
「教えてくれよ。あんた誰だ」
「お願い水野さん。止まって」
「誰だ……俺は、誰、なんだ」
頭の痛みが、ぷつりと切れた。
同時に東伍の動きは止まり、脱力した膝が折り曲がって地面に打ち付けられる。上半身は前方に倒れ、それを抱き止めた彼女にしなだれ掛かった東伍は意識も半分だった。
「水野さん?! 水野さん!しっかり!!」
彼女は、東伍の口に錠剤をねじ込む。
半開の瞼で見上げれば、東伍の身を案じて必死に声をかける彼女の顔がぼやけた。
栗色の髪。その髪を照れくさそうに撫でながら、ぼやけた彼女が笑う。
『水野くんは髪、黒くて長い方が、好きでしょう?』
『水野くん、タオルどうぞ』
高校一年生の夏。
淑和学院のプールで練習を終えた彼は、同じ水泳部の彼女にそう声をかけられた。
『ああ、さんきゅー。あれ、えっと……名前なんだっけ?』
『誰って、酷いなあ。小林だよ。水野くん一組でしょ? 私、隣の二組』
『そうだ、ごめんごめん。俺、なんか最近記憶力悪くなっちゃってさ』
『それ記憶力の問題かなあ。毎日練習しすぎなんじゃない? だってめっちゃ痩せたもん! 少しは休憩しないと』
『そういう小林こそ、最近めっちゃ頑張ってんじゃん。部活終わりにこうして自主練してるの、いつも俺と小林だけだし。タイムも女子の中ではダントツだろ?』
『まあね。小さい頃からスイミングやらされてたから、それなりには。おかげで髪も伸ばしたいけど、肩より下まで長かったこと一度もないんだよ』
『へえ。でも俺、好きだけどね』
『え?』
『いやほら。小林の、髪型?』
『うそだあ。だって〇〇が言ってたよ? 水野くんは髪、黒くて長い方が好きだって』
『え、〇〇? 俺あんまり話したことないけどなあ』
『そうなの? でも同じクラスでしょ?』
『同じクラスでも話さない子もいれば、違うクラスでも話す子もいるでしょ。ほら、今の俺らだってそうだし』
『それは部活が一緒だからで』
夏の陽ですっかり乾いた身体を拭きながら、彼は照れたように切り出す。
『じゃあさ。今日一緒に帰ろうよ』
『へっ?! わ、私と?!』
『いや、そんなに驚かなくても。俺、小林ともっと話したいし。だめかな?』
『ダメじゃないダメじゃない! うん、帰ろう。私着替えてくる! あ、待って! 部室の鍵職員室かも! 取ってくる!』
『ははっ、ちょっと落ち着いて。鍵なら俺が持ってるから』
『え、なんで持ってるの?』
『盗んだの』
『嘘……』
『うん、嘘』
『はあ?』
呆れ顔が段々と笑顔に変わり、その笑いは彼にも伝染する。
『なんか食べて帰る?』
『私ビーフシチュー!』
『いいね。じゃあファミレスで話そっか』
『水野くんはファミレスメニュー、何が好き?』
『えーっと、俺はね。チキンと……メキシカンピラフ、かな』
ズドン。……東伍の胸が、跳ねた。
「水野さん死なないで。帰ってきてお願いっ……!」
ずん——ずん——重たい圧力が、栓のしまった喉元に向かって空気を無理やりに押し出す。冷たく暗い海の底でもがいていた東伍は、そのじんわりと温かい感覚に意識を揺らした。
胸に触れる両掌から、熱が伝わる。
「……うっ」
呼吸を取り戻した東伍は身体を回転させながら横を向き、ぺしゃんこに潰れた肺に目一杯空気を吸い込んだ。
干からびた口内を潤すための唾液にむせ返り、やっとのことで呼吸を取り戻すと反射で上体を起こす。
「あ、あれ……俺」
「水野さん! 良かった。このまま目覚めなかったらどうしようって」
泉の顔をした彼女は、ほっとした面持ちで東伍を見た。東伍は自身の胸と脇腹辺りに貼られた電極パッドを剥ぎ取ると、顔を上げて状況を確認する。
見回せばその場所は、東伍にとって懐かしい風景だった。
「嘘だろ、この部屋」
「覚えがあるの?」
「連れてきたかった場所ってまさか、小瀬メンタルクリニック?! いやでも、あの地下は確か全部燃えたはず……はっ! で、出口! エレベータのボタンが、ここにはっ!」
「落ち着いて。この場所はあなたの閉じ込められていた場所じゃない。ちゃんと出口もあるわ」
部屋の中央に置かれたベッドに座る東伍。
真上にはLEDの無影灯、シルバーのトレイが乗った医療用カートに、大きなモニター画面。ダストシュート、業務用冷蔵庫、洗濯機にコンロに流し台。見れば見るほど、その場所は小瀬メンタルクリニックの地下室と瓜二つだったのだ。
「そっか。ジンはよっぽどこの場所が好きだったのね」
「ジン?」
「ええそうよ、ジン。彼はね、ここ斎木の森で幼少期を過ごしたの」
斎木の森——彼女の口から新たな情報が出たと同時、解消されない疑問がさらに東伍へと積み重なる。
「この施設が、さっき車を停めたコンクリート塀の内側か」
「うん。私が持っていた黒い鍵は、この斎木の森という施設の鍵だったの」
「……へえ、なるほど。そんで更に言えば、この斎木の森は例の人格ゲノムの研究に関わる場所ってわけだ」
「あ、そっか。あなたも、美聖の残したUSBデータの中身を泉から知らされていたのよね。そうよ大正解。この施設のオーナーと鷹司慶三は、古い友人だったみたいで」
なんとなく。東伍の雰囲気に小さな違和感を覚えたものの、とりあえず目の前の男が無事だったことに安堵した彼女は、脱力するように東伍が長座するベッドに腰を下ろした。
「斎木の森はね、元々は児童養護施設だったの。身寄りのない子供を受け入れ、生活し、日常を過ごせる至極まともな場所だった。でも資金繰りに苦しくなったオーナーが、旧友である鷹司慶三に相談したのが運の尽き。子供達を守るはずのこの場所は、あっという間に悪の巣窟に変貌した。ジンや泉は、その被害者。そして私は……加害者、なの」
だんだんと尻すぼみになっていく声量。
丸まった背中が、申し訳なさそうに真実を紡ぐ。
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小春は恭一の妻にして凛子の母親。
そして、鷹司に嫁いだ美聖の妹でもあった。
「泉の特殊な体質を借りて、私は今こうして生きていられる。でも、これは本来いけないことよ。正さなければならないことなの」
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