【完結】万華鏡の館 〜あなたの人生、高額買取り致します〜

千鶴

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因縁編

メッセージの意味

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 緊張が走る。彩美の発言に、権堂はありえない、と口を開いた。
 
「そ、そりゃ開いてただろ。あんたがそのまぶた、閉じたんだから」
「そうなんですけど。でも、私は佐和子さんの背中の刃物にも気が付かなかったんです。穏やかに目を閉じて横たわっていた……そんな風な記憶なんです、私には」
 
 テーブルに乗った豪華な料理が途端に瑞々みずみずしさを失うほどに、場の空気も乾く。海里は重ねて彩美に訊いた。
 
「その、芹さんを呼んで戻ってきたときに誰か人は居ました?」
「はい。段田さんが。順番で言うと、その後に相澤さん、権堂さん、野中さんがいらして、最後に江畑さんだったかと」
「僕はなんにもしてませんよ。僕が大柳さんを発見したとき目は開いていたし、背中に刃物も刺さっていました」
 
 視線が自分に集中していることに気づいた段田は、慌てて口を動かす。その様子を見て、今度は海里が考えをまとめるように口を開いた。
 
「大柳さんの死亡推定時刻は16時から19時。でも大柳さんは夕食に顔を出していたから、犯行時刻はもっと絞られる。竹林さんの言ったことが記憶違いでないのなら、もしかしたら大柳さんは倒れていたその時、まだ生きていたんじゃないですか? それを竹林さんが芹さんを呼びに行ったものの数分のうちに、誰かが背中を刺してとどめを。その痛みと衝撃で目が開いたのだと考えれば——」
 
 海里はそこで言葉を止める。じわじわ広がり出した猜疑心さいぎしんのうねりは、海里がついさっきまで白だと疑わなかった人物を黒く取り囲んだ。
 
「竹林さん、或いは段田さんのどちらかが嘘をついている、ってわけね」
 
 不安からだろう、途端に敵意を向けられた彩美の眼球が小刻みに震えだす。千聖は珈琲カップに口をつけると、低く冷静な声で続けた。
 
「でも段田さんの方が怪しいか。だってもし竹林さんが佐和子さんを刺したとして、わざわざそんな嘘をつく必要がないもの。第一発見者として疑われる立場ならなおさら、皆と話を合わせておくのが無難でしょう?」
「たしかに。ねえ、どうせ明日こっから居なくなるんだし、ホントのこと言ってけば? おばちゃんになんの恨みがあったの?」
 
 千聖に続きマリアにまですっかり犯人認定された段田は、鼻息荒く眼鏡の位置を直す。その表情に、マリアは口の端を微かに上げた。
 
「あの。ちょっといいですか」
 
 そう口を挟んだのは、海里だった。 
 
「俺もひとつ皆さんに聞いてもらいたい話があります。ここに来る前、俺の身に起きたこと」
 
 海里は自宅アパートで起きた謎の女の自殺の件を伝える。話を聞いた千聖は、身を守る様に腕を抱えた。
 
「なにそれ、怖っ。突然家に現れて、お腹を刺して? しかも後日確認したらその死体、消えてなくなっちゃったってこと?」
「はい。その女性がダイイングメッセージみたいに残した言葉があるんですけど、それ多分皆さんのことなんじゃないかなって」
「はあ? なによそれ」
「OEGAD。だってこれ、俺と竹林さん以外の皆さんのイニシャルですよね? Oは亡くなった大柳佐和子さん。そして——」
 
 海里は確認する様に、ひとりずつ視線を移していく。
 
 E……江畑マリア
 G……権堂薫
 A……相澤千聖
 D……段田慎之介
 
「こんな偶然、ある訳がない。あの消えた女性は、皆さんに繋がりのある人なはずなんです。心当たりありませんか? 長い茶髪の——
 
 右あごにほくろのある女性」
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