世間から外れていた俺はどうやら有名企業の社長令嬢の三つ子として転生したらしい。〜どうせやり直すなら記憶はいらないんですけど〜

陽風鹿乃

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習い事

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それぞれ違う学校に入学した。が姉妹の絆とやらは割と硬い物で2人とも俺に何か考えあると分かると、納得してくれた。

「で、この紙の束は何?」

「お母さんが皆でそれぞれ3つ決めなさいって!」

目の前には研究資料や論文とかでよく見るくらいの分厚い紙の束が置かれている。ここは雪穂の部屋で俺は適当な場所で寝転がっている。
1枚を取って読んでみると習い事と呼ばれる物の資料であった。
いつかは来ると思っていた英才教育が始まるのか…

「んー?これなんて読むの?」

「日本舞芸だ」

「にほんぶげい?」

「あーあれだ扇子……こう言ううちわみたいなので、ゆったりー踊るやつだ」

「つまんなさそー」

頑張って説明するがこの中の資料、普通に保護者用で漢字が多い。つまり3人で決めなさいは俺に読んで貰いなさいってことなのだ。まぁ読めちゃうんだから仕方ないよね。

「ピアノだぁ!私これやる!」

「ねーねー?これは」

「それは生け花だな。ほらこの前テレビで見たろ?花をこう…飾るやつ」

ほんと…子供用のボキャブラリーが少なくて困る。
結局残りの資料も身振り手振りでの教えとなった。そして2人なんでそんなに知ってるの?と言われたが俺は「本!」の一点張りだ

2人はすっかり夢中で習い事の事に悩んで、どれにしようかと思案している。

「かと言う俺もどれにしようかね」

何となく気になったのは武道系だ。表仕事が2人でやってくれるなら別に令嬢らしい仕草のものは要らない気もするし。
せっかく運動神経もそこそこある体に生まれたのだ、前世では能力に恵まれなかった為できなかった、こう言うのもありかもしれない。

よし、これにしよう

さてそろそろ2人に何かにするか聞かれる頃だろう

「春~何にした?」

「俺は……ってお母さん!?」

目の前には雪穂と彩夏ではなく、お母さんが立っていて。
俺はとっさに持っていた紙で口を塞ぐ。
やばい…俺呼びしちゃった…

「美春~?その呼び方は何かしら?」

「お、お、お、……」

「はい、言い訳出てこなかったね。2人ともちゃんと決めといてねー」

「「はーい!」」

「じゃあ行こうか美春」

「あ、はい…」


このあと女の子と言う題材でお説教を受けて、俺呼びは封印された。唯一言っても良さそうな相手だった雪穂達も、お母さんに言ったら報告してねーと言われて、張り切っている。

こりゃ本当に矯正した方が良さげだな。さよなら俺…男としての最後のアイデンティティ。今までありがとう自己同一性。

と言っても一人称は「自分」だから対して変化無いしな。

「お母さん決まったー」

「決まったー」

2人説教が終わった直後のお母さんに資料を渡す。

「う~ん、雪穂がピアノにお琴にお料理ね」

「うん!」

おぉ、雪穂のやつなんか女の子っぽいぞ。いや…女の子だけど

「で、彩夏が同じくピアノに生け花に手芸ね。やっぱり女の子なのね!やんちゃ気味だったからスポーツ系だと思ってたのよ」

「えへへー」

2人お母さんに撫でられてご満悦である。
俺、もとい私と見せる事にしようと、説教を受ける前にスカートのポケットに突っ込んだ資料を渡す

「えっと、春が、護身術に弓道に合気道…本当にこれでいいの?ピアノとかは?」

「いいよ、少しなら弾けるから」

と、私はリビングの端にあるピアノの前に立つと、エリーゼのためにの数小節を弾いて見せる

「凄ーい!春!なんで弾けるの!」

「そりゃ習って………は無いけど!動画見てたら覚えた!そう覚えた!」

危ない。前世の小学生時代、まだ子供っぽく明るかった時代に習わされていたのを間違って言うところだった。
まぁ弾けるだけで、コンクールなんかは出た事ないんだけど。

とりあえず、運動神経のいいこの体に生まれたんだ。なんかそれっぽい出来るとかっこよさそうな護身術を覚えるんだ!
武術って難しいって言うけど、出来るとかっこよさそうだもんね。

ただ前世の憧れでこの3つを選んだだけだった。


こうして3姉妹は共に月日を過ごして行く
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