彼の世界、彼女の能力

銀河星二号

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ジェネレーター破壊作戦(2)

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 シルクハットが、印を結んでいた手を前に伸ばすと、目の前の空間に何かが徐々に見え始めた。
 それは機械の虫たちだった。
「やはり居たか……ふむ、あそこに一匹、こっちに一匹……」
 虫はコガネムシの様な形だった。
 白っぽい銀色の体躯で、カシャカシャという小さな音を立て、木の幹や低木などの上を這い回っていた。
 シルクハットは言った。
「……まあ、ただの見張りかな。多少噛みつきはするだろうが、凶暴な奴じゃない」
 静夫はシルクハットに尋ねた。
「僕らは、どうすればいいんです?」
「そうだな……多分、僕一人で倒せると思うが……」
 シルクハットは見張りの虫の数や様子を観察した。
 数はそれほどいなかった。
 動きも遅い。
 静夫が言った。
「応援呼ばれたりはしないんですかね?」
「その可能性もあるが、ここはそれほど重要じゃ無いはず。いくつかあるジェネレーターの一つだよ。それは無いかな」
「それなら良いんですけれど」
「そうだな……念のため、銃のモードをザッパー……いや、モードスイッチを青い印に切り替えておいてくれ」
 静夫と健二は、言われたように、銃の横にあったモードスイッチを青色に切り替えた。
 沢子が分からなそうにしていたので、健二がやり方を教えた。
「出来ました」
「オーケー。それでは作戦を伝えよう。僕は敵を一匹づつ引きつけつつ、倒す。君らは……ここで待機。んー、以上か。多分、出番は無いかな?手を出されて混乱する状況になっても困る」
 健二は少し残念そうな顔をした。
 シルクハットは話を続けた。
「もし何かが起きて僕がピンチになったら、君らが虫を撃って排除してくれ。僕には当てるなよ?」
 静夫がシルクハットに言った。
「そういえば、あなたの名前を聞いていないのですが。何と呼べば? ……あの、呼び方分からないと、いざという時に困りますし」
 シルクハットは少し考え、こう言った。
「そうだな、ジョー。ジョーでいいよ。本当は七面倒くさい名前があるが、短い方がいいだろう?」
「分かりました。ジョーさん」
「それでは、邪魔ものをとっとと排除しようか」
 そう言うとジョーは、懐から数枚のトランプのカードを取り出した。
 ジョーは構えるとカードを一枚放った。
 カードはクルクルと回転しながら一匹の虫に当たって弾きとばした。
 そして、カードはそのままジョーの元へクルリと帰ってきた。
 虫はジョーの存在に気づき、目の色を変えて突進してきた。
 ジョーは軽く横に虫をいなすと、ステッキでコンと叩き落とした。
 パキという軽い音を立てて、虫は地面に転がった。
「おお……」
 健二は思わず声をもらした。
 それどころか、拍手しそうになったので、静夫は素早くそれを制止した。
「ああ、つい……ごめん」
 ジョーは、静夫たちにウィンクを送って余裕を見せた。
「まあ、こんな感じだ。そこで見学でもしててくれ」
 ジョーは次々とガーディアンの甲虫を倒した。
 甲虫はやはり応援を呼ぶことも無く、残り数えるほどになった。
 静夫たちは、それを見ながら話をした。
「やっぱり、僕らの出番は無いようだね、健二」
「くっそーっ! 撃ってみたかったのに。この銃……」
「まあ、あとで呪文解除に使うって言ってたし」
「そうじゃない、この強そうなモードで撃ってみたかったんだよぉ……」
 沢子が静夫に言った。
「神原君、あの男は何者? 鬼神? それともキツネの化身かしら?」
「ああ、うん。僕もよく分からないんだけど……一応、人間だとは思うよ」
「あの魑魅魍魎は?」
「彼曰く、魔女のものだと言っていたけれど」
「魔女……西洋なのね……門外漢だわ。残念。……あっ!」
「な、何?」
「おなか空いた……」
 そう言うと、沢子はおにぎりを一つ取り出してポイと口に放り込んだ。
「神原君も、さっき渡したの食べちゃった方がいいわよ?」
「……僕は後でたべようかな……」
「食べればいいのに」
 次々と甲虫を倒していくジョー。
 ふと、一匹の小さな青い蝶が舞うのが、静夫には見えた。
 それは淡い光を放っていて、普通の蝶には見えなかった。
「ジョーさん! 蝶がいます!」
 静夫は叫んだ。
 ジョーは小さな蝶に始め気づかず、体の周りを飛び回るのを止められなかった。
「しまった! もう一種類……い……」
 ジョーはそう言いかけると、その場に膝から崩れ落ち、動かなくなった。
「健二! 援護っ!」
 そう言って静夫はジョーの元へ走り出した。
「え? わ、分かった!」
 気づいた健二は銃を構えて静夫の周りを見ると、一匹の甲虫が木に止まっているのが見えた。
 健二が撃つと、一筋の光線が放たれた。
 光線は静夫の横をすり抜けて飛び、甲虫には当たらず、立木そのものに当たった。
 立木はメキメキと音を立てて倒れた。
 静夫は健二の方を振り向いた。
「ご、ごめ! 今度は気をつけるから!」
 静夫は倒木の隙間をすり抜け、ジョーの元へ走った。
 静夫はジョーを引き起こし、肩に背負って歩き出した。
 重さがあるらしく、静夫の足取りは重かった。
 そして、後ろからさっきの蝶がひらひらと舞って追ってきた。
 静夫はそれに気づいた。
「健二ーーーっ!」
 健二は息を何度か大きく吸って、呼吸を整え、息を止め、銃で蝶に狙いを定めた。
 そして、引き金をカチリと引くと、青い光線が一直線に飛んだ。
 次の瞬間、静夫たちを追っていた蝶が、一瞬にして消し飛んだ。
 健二は自分で驚いた。
「当たったよ……」
「凄いじゃない!」
 褒める沢子に、健二は無言で何度もうなずいた。
 幸い、他の残りの甲虫たちは距離があって気づかなかったらしく、追っては来なかった。
 静夫はジョーを近くにあった木の横に寝かせて、様子を見た。
 顔色も良く、息はあるようだった。
「これは……麻痺か、気を失っているのかだな。しばらくそっとしておけば目を覚ますかもしれない」
「ああ、良かった……主戦力失ってどうしようかと……」
 健二がそう言っていると、沢子がすっくと立ち上がった。
「ここは……私の出番のようね」
「えっ?」
 静夫と健二は沢子を見た。
 右手にグーを握り、闘志に燃えたポーズをしている。
「比村さん、いったい何を?」
「祓って来るっ! 魑魅魍魎をっ! 任せてっ!」
 そう言うと、祓い串を取り出し軽く振り、甲虫の元へ走り出そうとした。
 静夫は沢子の前に立ち塞がり、止めた。
「待って! あれは……魑魅魍魎じゃないから!」
「西洋のものだとしても、妖怪の類じゃない。同じよ、同じ。神力は効くわっ!」
「あれは、どっちかというと機械の類みたいだし。なぁ健二!」
 健二はいきなり振られて一瞬、答えに窮したが、一応、同意した。
「うん、ち、違うと思うよ!」
 静夫は続けた。
「お祓い、効くかもしれないけれど、効かない可能性が高いから! 効かなかったらどうすんの?」
「……効かなかった時?」
 どうやらそれは想定していないようだった。
「……それもそうね。残念、ご神木の力を試してみたかったのに」
 何とか沢子を諦めさせることが出来たようで、静夫はほっと息を吐いた。
「なぁシズオ、ここは一つ、その人担いでここから脱出しようぜ。どうせ、その人いないと……その解除とやらも出来ないんだし」
「そうだな。これ以上ここにいる意味は無いな。比村さんもそれでいいかな?」
 沢子は、甲虫のいる岩の方向を眺めている。
「妖怪どもをこのまま放置して立ち去るのは……あっ!」
 静夫は、沢子がまたお腹が空いたのかと思ったらしく、沢子の顔をジト目で見た。
「来る!」
 沢子が指差す方向を静夫が振り向くと、そよそよと微かな風が吹いてくるのが分かった。
 見ると、そこにはさっきの小さな蝶が数十匹羽ばたいていた。
 しかもだんだん近づいてくるのが分かった。
 健二はあわてて銃を握り直した。
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