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シーズン1-序章

032-第27ドック制圧戦 前編

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左ウィングのロビーに入ったとたん、何重にも射撃音が重なった。
慌てて下がると、銃弾の光がさっきまで居た場所を荒らし回る。

「情報精査......敵は3体、ソファ付近に1、エレベーター付近に1、出口付近に1……..制圧開始します」

敵の数が多い、ショットガンよりはこっちの方がいいだろう。
私はロビー内に生命反応がないかを再度チェックしてから、再び扉を潜る。

「............」

まずは、出口付近から。
断続的な射撃音と共に、機関砲が火を噴く。
部屋にあったオブジェやカウンター机を破壊しつつ、まずは一体を破壊する。
他のアンドロイド兵は撃ってこない、下手に射線上に出れば数秒で蜂の巣だからだろう。

「1体撃破」

一旦射撃を止め、近くに寄ってきていたアンドロイド兵にショットガンを撃ち込む。
回避されたが、直ぐにもう一射。
腹に穴が開いたアンドロイド兵が倒れる。

「退避します」

反動で上ずったショットガンを引き、もう一方の腕を引いて盾で弾を防ぐ。
直ぐに飛び出して、視界に映ったアンドロイド兵の頭部をショットガンで撃ち抜いた。

「........ごめんなさい」

過熱した銃身を冷却しながら、私は謝った。
狂わされて襲ったとはいえ、彼らにも”自我”はあった。
だというのに、私がしたのは”殺し”ではなく”破壊”。
虐殺ではなく、撃滅なのだ。

「左ウィングの中央部屋を制圧しました」
『分かりました、そちらに人員を向かわせます』
『ドック内に侵入者無し、任務を続行してください』

私は再び施錠されたドアを吹き飛ばし、居住区に侵入する。
発狂したアンドロイド兵はこの扉を自由に開けられるようで、セキュリティレベルの概念が存在しなくなっている。

「廊下柱背後に二体確認、威嚇射撃開始」

厄介だ。
分厚い柱の陰に隠れられると、こちらの射撃は通らず、向こうは好きなタイミングで飛び出して攻撃できる。
私はとりあえずの時間稼ぎに機関砲を乱射し、廊下にあるものを壊して回る。
これで順調に、発狂しているとはいえアンドロイド兵のヘイトを買っているはずだ。
器物損壊は少しとはいえヘイトを買う要素であり、即刻捕縛して保安チームに突き出さなければいけないからだ。

「ジジ............違#為感知を」
「救援..........ビーーーーッ!!」

不快な連続の単音を垂れ流しながら、アンドロイド兵は飛び出してライフルを構える。
それより前に、私はショットガンを発射した。
ショットガンは当たらず、アンドロイド兵の足元に当たった。

「ミサイル発射!」

開けたままにしていたミサイルポッドからミサイルを発射し、素早く射線から逃げる。
直後、閃光と共に轟音が鳴り響き、軽い振動を感じた。

「敵兵の無力化を確認――――一度帰還します」

ショットガンの弾倉.....エネルギーパックが無くなった。
一度私は廊下を駆け戻り、ドックへと戻る。

『どうしましたか?』
「装備を交換します」
『分かりました、ハッチ開放します』

旗艦の下部の格納庫ハッチが開き、私はそこに入り込む。
強化装備を一旦外し、ショットガンと機関砲が取り替えられミサイルポッドにミサイルが装填されるのを観察する。

『機関砲の砲身が変形していましたので、交換いたしました』
「分かりました」
『お待ちください、脚部ユニットの損傷を確認、15秒で修復します』

脚部をスキャンしていたアイカメラが異常を発見したのか、マニピュレータが降りてきて脚部の関節部を修復し始める。
本当に13.8秒ほどで修復が完了し、私は再び強化装備.......戦闘鎧を装着する。

「では出撃します」
『丁度いいので、反対側のゲートから出れますか?』
「はい、問題ありません」
『そちらの方にアンドロイド兵が四体居ます、一人は近接装備なので気を付けてくださいね』
「はい!」

ジェシカの指示を受けて、さっき入ってきたのとは別のゲートへ向かう。
施錠されているが、そんなものはミサイルで――――

『援護射撃を開始します、射線上から退避してください』
「っ!」

慌てて避難すると、頭上にあった砲台から眩い光が放たれ、ゲートを壁ごと吹き飛ばした。
直後、レーザー光がドック内に吹き荒れる。

「情報精査!」

旗艦のセンサーを借りた情報精査で、瞬時に私はロボット兵の場所を特定する。
一体は破壊されたが、まだ三体残っている。

「射撃感知、回避」

回避しながら、射線に交差させる形で一発撃つ。
反動を全て利用する形で後転、回避したであろうアンドロイド兵の居る位置に機関砲の掃射を叩き込む。

『注意してください、至近距離に近接兵の反応を感知』
「はい!」

壁の残骸をぶち破って襲ってきた近接兵から逃れ、跳んで距離を取る。
近接装備.....それは、でっかい拳のような何かだった。

「ッ!」

次の瞬間、近接兵はブースターで加速しながら突っ込んできた。
同時に、あの拳が赤熱するのが見えた。

「ふ.....っ!」

右手の盾で拳を受け止め、左手に装備した機関砲を至近距離から放つ。
頭部を貫かれた近接兵は、ブースターで滅茶苦茶な方向に飛び回りながら落下して、動かなくなった。
頭を潰されると動けなくなるのは、殆ど全てのアンドロイドに言える話だ。
胴体に動力源を積む以上、頭に思考回路を置くのは当然の摂理だからだ。

「射撃感知、銃種特定、CRT社FFD-7スナイパーライフルによる射撃、弾痕から22m以内と判別」

22m以内に敵がいる。
凸砂を戦術に組み込む人間がいたとは.....いや、アンドロイドなのだが。

「射撃感知、左、14m」

直ぐそこだった。
電子偽装で隠れていたらしい。
ショットガン一発で胴体を撃ち抜いて破壊した。

「左ウィングの予想される敵数、残り8…..制圧に急行します」

私は急いで、ぶち抜いたドアから外へと駆けて行った。






艦橋では、ジェシカが戦闘記録を呆然と眺めていた。

「凄い.........自律AIにしても、かなり熟練した動きに見えますね。これなら正規兵を相手にしても十分に戦えるかもしれません」
『............』

エイペクスは黙っているが、その中で一つ疑問が浮かんでいた。

『(最後の射撃、頭部を狙える局面だったのにもかかわらず、意図的に左胸部を狙っていました、これは既存の人工知能の思考アルゴリズムでは未確認の事項です....この出来事は、記憶する必要がありますね)』

エイペクスは自らの中........汚染されたフォルダを整理しながら、その中の一つに疑問事項を差し入れたのだった。
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