異世界の宇宙に転移しましたが、お兄ちゃんのいない宇宙には住めないので、お兄ちゃんを探す事にしました!〜男装ブラコン少女の宇宙冒険記〜

黴男

文字の大きさ
2 / 272
序章

002-蹂躙

しおりを挟む
一つわかったことがある。
私がワープを阻害した船は、阻害された後動く様子を見せなかった。
つまりは、WDAは敵の船のドライブに対してなんらかの妨害作用があるということ。

「お兄ちゃんの言う通りにやってみよう」

お兄ちゃんのゲームには範囲型ワープ妨害なる便利な兵器があるらしく、こちらでもそれと似たような事はできる。
ワープドライブアンカーに膨大なエネルギーを注ぎ込み、全方向へ重力の井戸を作用させるのだ。
勿論そんなエネルギーはないので、私はこれを使う。

「意外と重いんだなぁ...」

機関室へと移動した私は、砲撃の警告を聞きながらとあるものを抱えていた。
その名は、エネルギーバッテリー5000。
5000分のエネルギーを補助するアイテムだ。
これを機関部のキャパシタ変換装置にセットして、急いでブリッジまで戻る。

「WDA、全方位拡散照射!」
『ぐわあっ!? な、なんだ!』

範囲照射したものの、動きが止まったのは五隻のうち二隻だった。
何か違いでもあるんだろうか?
お兄ちゃんはこういう時...こういう時...こういう事はなかったね、お兄ちゃんは完璧だもん。
とりあえず、手っ取り早く二隻を処理する。
動かない対象に対しては、あらゆる武器が100%いや、120%の効果を発揮する。
足を止められた二隻はパルスレーザーで瞬時に宇宙の塵と化す。

『お前だけは許さねえ、覚えてやがれ!』
「いや、通信繋いだ時点で逃げるのはナシでしょ」

私はWDAを収束照射して敵旗艦の足を止める。
ワープドライブを強化して逃げることもできるけど、所詮コルベット級の積めるドライブじゃWDAを振り切れない。

『ふざけんな! 正々堂々戦え!』
「「戦いを挑んでおいて逃げる奴は、後ろから撃ってくれって言ってるようなもんだ」、流石お兄ちゃん、こういう時のことを言ってたんだね」

お兄ちゃんは最強で万能だから、私は語録帳を作っているほどだった。
でも、それもどうやら無くしてしまったので、忘れないうちにメモしておかないと。

「では、アデュー」
『死にたくない、死にたく――――――』

シールドとアーマーを容易に貫通したパルスレーザーが、船体を冷えた残骸へと変える。
恐れをなしたのか、周囲の船が一斉にワープドライブを起動した。
残念ながら、バッテリーを替えるには間に合わない、逃してしまうことになると思う。

「はぁ~...お兄ちゃんみたいにはいかないか」

もしこの場に座っているのがお兄ちゃんだったら、状況把握、場の整理、敵を全滅させるまでを半分の時間でやり遂げていただろう。
私じゃまだまだ偉大な兄には及ばないと実感する。

「この後どうすればいいの~、お兄ちゃーん...」

敵をボコボコにしたのはいいけど、この宇宙でただ一人。
どうすればいいのか、全くわからない。
残念ながら私はお兄ちゃんと宇宙に飛び出した経験はない。

「こういう時は、まず船を探索するべきだ...って言うかな?」

言うかもしれないし、言わないかもしれない。
とにかく今は動く事が罪だ。

「えーと...惑星の軌道上にワープ!」

私はコンソールを操作して、ワープ座標を設定する。
ゲームの時の高性能なコンピューターはそのままみたいで、正確な位置座標を確定してくれる。

「うわっ!」

船全体がガクンと揺れた後、窓から見えていた星々が一気に流れ去っていく。
光速を超えて飛んでいるって事だ。
数秒も経った後、轟音と共に周囲の景色が元に戻った。
光速で移動するワープ航法が終わった事で、船の運動エネルギーが0に戻る。
その際に発生する轟音なのだと、お兄ちゃんが教えてくれた。


「さて...当分は大丈夫なはず」

私は船の推進装置をオフにして、サーマルステルスモジュールを起動する。
これで熱源を感知するタイプのスキャンには引っかからない。

「じゃあ探索しようか」

お腹も減ったしね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

処理中です...