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序章
002-蹂躙
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一つわかったことがある。
私がワープを阻害した船は、阻害された後動く様子を見せなかった。
つまりは、WDAは敵の船のドライブに対してなんらかの妨害作用があるということ。
「お兄ちゃんの言う通りにやってみよう」
お兄ちゃんのゲームには範囲型ワープ妨害なる便利な兵器があるらしく、こちらでもそれと似たような事はできる。
ワープドライブアンカーに膨大なエネルギーを注ぎ込み、全方向へ重力の井戸を作用させるのだ。
勿論そんなエネルギーはないので、私はこれを使う。
「意外と重いんだなぁ...」
機関室へと移動した私は、砲撃の警告を聞きながらとあるものを抱えていた。
その名は、エネルギーバッテリー5000。
5000分のエネルギーを補助するアイテムだ。
これを機関部のキャパシタ変換装置にセットして、急いでブリッジまで戻る。
「WDA、全方位拡散照射!」
『ぐわあっ!? な、なんだ!』
範囲照射したものの、動きが止まったのは五隻のうち二隻だった。
何か違いでもあるんだろうか?
お兄ちゃんはこういう時...こういう時...こういう事はなかったね、お兄ちゃんは完璧だもん。
とりあえず、手っ取り早く二隻を処理する。
動かない対象に対しては、あらゆる武器が100%いや、120%の効果を発揮する。
足を止められた二隻はパルスレーザーで瞬時に宇宙の塵と化す。
『お前だけは許さねえ、覚えてやがれ!』
「いや、通信繋いだ時点で逃げるのはナシでしょ」
私はWDAを収束照射して敵旗艦の足を止める。
ワープドライブを強化して逃げることもできるけど、所詮コルベット級の積めるドライブじゃWDAを振り切れない。
『ふざけんな! 正々堂々戦え!』
「「戦いを挑んでおいて逃げる奴は、後ろから撃ってくれって言ってるようなもんだ」、流石お兄ちゃん、こういう時のことを言ってたんだね」
お兄ちゃんは最強で万能だから、私は語録帳を作っているほどだった。
でも、それもどうやら無くしてしまったので、忘れないうちにメモしておかないと。
「では、アデュー」
『死にたくない、死にたく――――――』
シールドとアーマーを容易に貫通したパルスレーザーが、船体を冷えた残骸へと変える。
恐れをなしたのか、周囲の船が一斉にワープドライブを起動した。
残念ながら、バッテリーを替えるには間に合わない、逃してしまうことになると思う。
「はぁ~...お兄ちゃんみたいにはいかないか」
もしこの場に座っているのがお兄ちゃんだったら、状況把握、場の整理、敵を全滅させるまでを半分の時間でやり遂げていただろう。
私じゃまだまだ偉大な兄には及ばないと実感する。
「この後どうすればいいの~、お兄ちゃーん...」
敵をボコボコにしたのはいいけど、この宇宙でただ一人。
どうすればいいのか、全くわからない。
残念ながら私はお兄ちゃんと宇宙に飛び出した経験はない。
「こういう時は、まず船を探索するべきだ...って言うかな?」
言うかもしれないし、言わないかもしれない。
とにかく今は動く事が罪だ。
「えーと...惑星の軌道上にワープ!」
私はコンソールを操作して、ワープ座標を設定する。
ゲームの時の高性能なコンピューターはそのままみたいで、正確な位置座標を確定してくれる。
「うわっ!」
船全体がガクンと揺れた後、窓から見えていた星々が一気に流れ去っていく。
光速を超えて飛んでいるって事だ。
数秒も経った後、轟音と共に周囲の景色が元に戻った。
光速で移動するワープ航法が終わった事で、船の運動エネルギーが0に戻る。
その際に発生する轟音なのだと、お兄ちゃんが教えてくれた。
「さて...当分は大丈夫なはず」
私は船の推進装置をオフにして、サーマルステルスモジュールを起動する。
これで熱源を感知するタイプのスキャンには引っかからない。
「じゃあ探索しようか」
お腹も減ったしね。
私がワープを阻害した船は、阻害された後動く様子を見せなかった。
つまりは、WDAは敵の船のドライブに対してなんらかの妨害作用があるということ。
「お兄ちゃんの言う通りにやってみよう」
お兄ちゃんのゲームには範囲型ワープ妨害なる便利な兵器があるらしく、こちらでもそれと似たような事はできる。
ワープドライブアンカーに膨大なエネルギーを注ぎ込み、全方向へ重力の井戸を作用させるのだ。
勿論そんなエネルギーはないので、私はこれを使う。
「意外と重いんだなぁ...」
機関室へと移動した私は、砲撃の警告を聞きながらとあるものを抱えていた。
その名は、エネルギーバッテリー5000。
5000分のエネルギーを補助するアイテムだ。
これを機関部のキャパシタ変換装置にセットして、急いでブリッジまで戻る。
「WDA、全方位拡散照射!」
『ぐわあっ!? な、なんだ!』
範囲照射したものの、動きが止まったのは五隻のうち二隻だった。
何か違いでもあるんだろうか?
お兄ちゃんはこういう時...こういう時...こういう事はなかったね、お兄ちゃんは完璧だもん。
とりあえず、手っ取り早く二隻を処理する。
動かない対象に対しては、あらゆる武器が100%いや、120%の効果を発揮する。
足を止められた二隻はパルスレーザーで瞬時に宇宙の塵と化す。
『お前だけは許さねえ、覚えてやがれ!』
「いや、通信繋いだ時点で逃げるのはナシでしょ」
私はWDAを収束照射して敵旗艦の足を止める。
ワープドライブを強化して逃げることもできるけど、所詮コルベット級の積めるドライブじゃWDAを振り切れない。
『ふざけんな! 正々堂々戦え!』
「「戦いを挑んでおいて逃げる奴は、後ろから撃ってくれって言ってるようなもんだ」、流石お兄ちゃん、こういう時のことを言ってたんだね」
お兄ちゃんは最強で万能だから、私は語録帳を作っているほどだった。
でも、それもどうやら無くしてしまったので、忘れないうちにメモしておかないと。
「では、アデュー」
『死にたくない、死にたく――――――』
シールドとアーマーを容易に貫通したパルスレーザーが、船体を冷えた残骸へと変える。
恐れをなしたのか、周囲の船が一斉にワープドライブを起動した。
残念ながら、バッテリーを替えるには間に合わない、逃してしまうことになると思う。
「はぁ~...お兄ちゃんみたいにはいかないか」
もしこの場に座っているのがお兄ちゃんだったら、状況把握、場の整理、敵を全滅させるまでを半分の時間でやり遂げていただろう。
私じゃまだまだ偉大な兄には及ばないと実感する。
「この後どうすればいいの~、お兄ちゃーん...」
敵をボコボコにしたのはいいけど、この宇宙でただ一人。
どうすればいいのか、全くわからない。
残念ながら私はお兄ちゃんと宇宙に飛び出した経験はない。
「こういう時は、まず船を探索するべきだ...って言うかな?」
言うかもしれないし、言わないかもしれない。
とにかく今は動く事が罪だ。
「えーと...惑星の軌道上にワープ!」
私はコンソールを操作して、ワープ座標を設定する。
ゲームの時の高性能なコンピューターはそのままみたいで、正確な位置座標を確定してくれる。
「うわっ!」
船全体がガクンと揺れた後、窓から見えていた星々が一気に流れ去っていく。
光速を超えて飛んでいるって事だ。
数秒も経った後、轟音と共に周囲の景色が元に戻った。
光速で移動するワープ航法が終わった事で、船の運動エネルギーが0に戻る。
その際に発生する轟音なのだと、お兄ちゃんが教えてくれた。
「さて...当分は大丈夫なはず」
私は船の推進装置をオフにして、サーマルステルスモジュールを起動する。
これで熱源を感知するタイプのスキャンには引っかからない。
「じゃあ探索しようか」
お腹も減ったしね。
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