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序章
001-アドアステラ
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「はっ!?」
言い知れない寒さを感じて、私は顔を上げた。
「!?!?」
そして、同時に困惑する。
自分の部屋だと思っていた場所はよく分からない場所になっているし、突っ伏して寝ていたのは机じゃなくて何かのコンソールだった。
いや、何かのコンソールじゃない。
「どうして.....」
私は自分のほっぺたを抓ってみる。
痛い。
少なくとも夢じゃない。
「なんで、SNOのコンソールが.....」
StarNovasOnline。
私が昨日までプレイしていたゲームの、見慣れたコンソール。
それが私のすぐ目の前にあった。
いや、コンソールだけじゃない。
周りのデッキも、後ろを振り向けば見える見慣れた扉も。
全部、SNOの私の愛機、「AD-Astral」だ。
「お兄ちゃん.....」
誕生日にお兄ちゃんがくれた船だ。
ずっと使ってるし、アップグレードを欠かしたことはない。
「寒い.....」
外を見ると、黒以外何も見えなかった。
もしここが宇宙なら、外はマイナス200度以下になるはず。
お兄ちゃんがそう解説してたのを思い出す。
「生命維持装置を起動して.....」
この辺はSNOの基礎操作だ。
電気がついてたから、予備電源は生きている。
「うえ.....もしかして、寝落ちしてたの?」
コンソールが起動すると、船の状態が空中のモニターに投影される。
それによると、こんな感じ。
◇AD-Astral・Per-Aspera 襲撃型重巡洋艦
シールド:322/15000
アーマー:281/50000
コア:1/100
パワーコア出力:安定
ワープドライブ出力:安定
ハイパードライブ出力:不安定
電力:45/3000(回復中)
予備電力:1499/1500
船体装甲はボロボロ、シールドはほぼなくて、0になったら沈むコアはギリギリ。
電力は底を尽きかけだし、眠っている間に総攻撃を食らったっぽい。
「よかった.......」
お兄ちゃんに貰った船を沈められたら、私はショックできっと死んでたと思う。
その結果お兄ちゃんにはもう会えそうにないけど。
どっちが良かったんだろう.....
きっと選べないよね。
「ひゃっ!?」
その時、物凄い音がして船が揺れた。
警報が鳴って、システムの無機質な音声が状況を伝える。
『次元振動を感知、複数ワープアウト』
「ま、まずは...」
私は状況を俯瞰するために艦の立体ビューを出す。
艦の周囲には、全部で六隻の船がワープアウトしてきていた。
「あれ?通信が来てる」
まずい。
映像通信だとこちらが女の子一人だとバレちゃう。
私は慌ててブリッジのクローゼットを漁る。
「なんでこんなのしか...まあいいや」
適当にイベントで貰ったアパレルを突っ込んでいたようで、私は顔を隠す仮面と体のラインをあやふやにする服を身に付けた。
「ここに音声調整機能が...あー、あー」
私はなるべく声を低く調節して、通信に応じる。
「こちらメイルシュトローム所属アドアステラ、えー...カルだ、何の目的で通信を」
私の本名は黒川流歌。
流歌を逆にしてかる、カルにする事にした。
『へっへっへ、事故かい? 積荷を全部くれるなら助けてやってもいいぜえ?』
「...」
この口ぶり、何度も見た。
ゲーム内のNPCでも、プレイヤーでも誰でもできる行為、海賊だ。
「.......断る」
お兄ちゃんがよく言ってた。
「奪う事は別に悪い事じゃないが、奪う時は遠慮はするな。ただ無言で仕掛けて、ものを奪って立ち去るんだ。少なくとも海賊行為をしたいならな」って。
だからこいつらは海賊としては三流。
三流海賊に渡す積荷はない。
『へぇ? じゃあ殺して奪ってもいいって事だよなぁ!?』
「どうぞ?」
やれるもんなら。
海賊たちが動く前に私はこちら側のマイクを切断し、コンソールを操作して「戦闘モード」を起動する。
「全艦戦闘モードに移行! 使用可能な武装は........うそー!」
スマートミサイル使用不可、XLレーザーブラスター使用不可、Lパルスレーザー使用....可能。
パルスレーザーなんて、小惑星を破壊する用に積んでるだけなのに、これで戦えなんて無謀だ。
「......モジュレーションクリスタルを換装」
変調クリスタルを変え、パルスレーザーを岩石粉砕用から戦闘用のものに切り替える。
『砲撃感知。シールド300に低下』
「撃たれてる.....」
こういう時お兄ちゃんはどうすればいいって言ってたかな.....そうだ!
「敵の武器にもよるが、こういう時は基本敵の船の周りを回るんだ。大抵の武器は速度の出ている船を捉えるのは難しいからな、当たらないか威力が落ちるはずだ」
って言っていたはず。
このアドアステラは船の中では結構速度が速い。
「速度上昇、敵...恐らく旗艦を最適射程距離で旋回! ターゲット開始」
数秒もしないうちに、六隻のターゲットロックが完了する。
パルスレーザーは二門、一隻ずつ相手にしよう。
『武器系統にエネルギー注入完了』
「攻撃開始」
私は冷たく言い放った。
パルスレーザーから秒間300発程度の射撃が放たれ、対象のシールドを削っていく。
『へぇ、やる気かよ』
とにかく今は危ない。
私はシールドの回復速度を向上させる装置にエネルギーを供給し、シールドの回復が砲撃による損傷に追いつくように調整する。
「「落ち着きを失ったやつから死んでいく」...」
お兄ちゃんの言葉を復唱しながら、私は冷静に船の攻撃を続行する。
『ベオル、もういい! 離脱しろ!』
「させないよ」
私はコンソールを操作する。
『Warp Drive Anchor Activated』
そんな項目が表示され、逃げようとしていた船を捕まえる。
ワープドライブアンカーは重力井戸を人工的に発生させて、ワープドライブを起動しようとしている船を捉えることができる。
どうやらアーマーはそんなでもなかったみたいで、シールドを抜かれた船はあっという間に穴だらけになって爆発した。
『ベ、ベオル!』
お兄ちゃんは勝ったら煽りは欠かすなよ、って言ってたよね。
よし....自信ないけどやってみよう。
「....アーマーの修理はしっかりした方がいいぞ」
『テ、てめえ.........!!』
人を殺したはずなのに、なんでか罪の意識はなかった。
いや、お兄ちゃんに怒られなければ、それは罪じゃないんだ。
そう思うと、胸が軽くなる。
『全員、全武器使用許可! ナメた野郎を殺せ!』
「野郎じゃないんだけどね」
私はアフターバーナーを点火し、より速度を上げていく。
『クソ、速すぎる! どうなってやがんだ!』
「ふふふ」
吶喊戦術で知られるグローリー級の特別仕様のこの船は、通常の約5.5倍の速度が出る。
お兄ちゃんが私の戦術を見て贈ってくれたこの船は、その本来の速度から更に速くなる工夫をしている。
グローリー級襲撃型重巡洋艦という名に反し、この船の全力はフリゲート級よりも速い速度、旋回速度を誇る。
「お兄ちゃんの力、見せてやる」
私はマスクの下で不敵な笑みを浮かべた。
言い知れない寒さを感じて、私は顔を上げた。
「!?!?」
そして、同時に困惑する。
自分の部屋だと思っていた場所はよく分からない場所になっているし、突っ伏して寝ていたのは机じゃなくて何かのコンソールだった。
いや、何かのコンソールじゃない。
「どうして.....」
私は自分のほっぺたを抓ってみる。
痛い。
少なくとも夢じゃない。
「なんで、SNOのコンソールが.....」
StarNovasOnline。
私が昨日までプレイしていたゲームの、見慣れたコンソール。
それが私のすぐ目の前にあった。
いや、コンソールだけじゃない。
周りのデッキも、後ろを振り向けば見える見慣れた扉も。
全部、SNOの私の愛機、「AD-Astral」だ。
「お兄ちゃん.....」
誕生日にお兄ちゃんがくれた船だ。
ずっと使ってるし、アップグレードを欠かしたことはない。
「寒い.....」
外を見ると、黒以外何も見えなかった。
もしここが宇宙なら、外はマイナス200度以下になるはず。
お兄ちゃんがそう解説してたのを思い出す。
「生命維持装置を起動して.....」
この辺はSNOの基礎操作だ。
電気がついてたから、予備電源は生きている。
「うえ.....もしかして、寝落ちしてたの?」
コンソールが起動すると、船の状態が空中のモニターに投影される。
それによると、こんな感じ。
◇AD-Astral・Per-Aspera 襲撃型重巡洋艦
シールド:322/15000
アーマー:281/50000
コア:1/100
パワーコア出力:安定
ワープドライブ出力:安定
ハイパードライブ出力:不安定
電力:45/3000(回復中)
予備電力:1499/1500
船体装甲はボロボロ、シールドはほぼなくて、0になったら沈むコアはギリギリ。
電力は底を尽きかけだし、眠っている間に総攻撃を食らったっぽい。
「よかった.......」
お兄ちゃんに貰った船を沈められたら、私はショックできっと死んでたと思う。
その結果お兄ちゃんにはもう会えそうにないけど。
どっちが良かったんだろう.....
きっと選べないよね。
「ひゃっ!?」
その時、物凄い音がして船が揺れた。
警報が鳴って、システムの無機質な音声が状況を伝える。
『次元振動を感知、複数ワープアウト』
「ま、まずは...」
私は状況を俯瞰するために艦の立体ビューを出す。
艦の周囲には、全部で六隻の船がワープアウトしてきていた。
「あれ?通信が来てる」
まずい。
映像通信だとこちらが女の子一人だとバレちゃう。
私は慌ててブリッジのクローゼットを漁る。
「なんでこんなのしか...まあいいや」
適当にイベントで貰ったアパレルを突っ込んでいたようで、私は顔を隠す仮面と体のラインをあやふやにする服を身に付けた。
「ここに音声調整機能が...あー、あー」
私はなるべく声を低く調節して、通信に応じる。
「こちらメイルシュトローム所属アドアステラ、えー...カルだ、何の目的で通信を」
私の本名は黒川流歌。
流歌を逆にしてかる、カルにする事にした。
『へっへっへ、事故かい? 積荷を全部くれるなら助けてやってもいいぜえ?』
「...」
この口ぶり、何度も見た。
ゲーム内のNPCでも、プレイヤーでも誰でもできる行為、海賊だ。
「.......断る」
お兄ちゃんがよく言ってた。
「奪う事は別に悪い事じゃないが、奪う時は遠慮はするな。ただ無言で仕掛けて、ものを奪って立ち去るんだ。少なくとも海賊行為をしたいならな」って。
だからこいつらは海賊としては三流。
三流海賊に渡す積荷はない。
『へぇ? じゃあ殺して奪ってもいいって事だよなぁ!?』
「どうぞ?」
やれるもんなら。
海賊たちが動く前に私はこちら側のマイクを切断し、コンソールを操作して「戦闘モード」を起動する。
「全艦戦闘モードに移行! 使用可能な武装は........うそー!」
スマートミサイル使用不可、XLレーザーブラスター使用不可、Lパルスレーザー使用....可能。
パルスレーザーなんて、小惑星を破壊する用に積んでるだけなのに、これで戦えなんて無謀だ。
「......モジュレーションクリスタルを換装」
変調クリスタルを変え、パルスレーザーを岩石粉砕用から戦闘用のものに切り替える。
『砲撃感知。シールド300に低下』
「撃たれてる.....」
こういう時お兄ちゃんはどうすればいいって言ってたかな.....そうだ!
「敵の武器にもよるが、こういう時は基本敵の船の周りを回るんだ。大抵の武器は速度の出ている船を捉えるのは難しいからな、当たらないか威力が落ちるはずだ」
って言っていたはず。
このアドアステラは船の中では結構速度が速い。
「速度上昇、敵...恐らく旗艦を最適射程距離で旋回! ターゲット開始」
数秒もしないうちに、六隻のターゲットロックが完了する。
パルスレーザーは二門、一隻ずつ相手にしよう。
『武器系統にエネルギー注入完了』
「攻撃開始」
私は冷たく言い放った。
パルスレーザーから秒間300発程度の射撃が放たれ、対象のシールドを削っていく。
『へぇ、やる気かよ』
とにかく今は危ない。
私はシールドの回復速度を向上させる装置にエネルギーを供給し、シールドの回復が砲撃による損傷に追いつくように調整する。
「「落ち着きを失ったやつから死んでいく」...」
お兄ちゃんの言葉を復唱しながら、私は冷静に船の攻撃を続行する。
『ベオル、もういい! 離脱しろ!』
「させないよ」
私はコンソールを操作する。
『Warp Drive Anchor Activated』
そんな項目が表示され、逃げようとしていた船を捕まえる。
ワープドライブアンカーは重力井戸を人工的に発生させて、ワープドライブを起動しようとしている船を捉えることができる。
どうやらアーマーはそんなでもなかったみたいで、シールドを抜かれた船はあっという間に穴だらけになって爆発した。
『ベ、ベオル!』
お兄ちゃんは勝ったら煽りは欠かすなよ、って言ってたよね。
よし....自信ないけどやってみよう。
「....アーマーの修理はしっかりした方がいいぞ」
『テ、てめえ.........!!』
人を殺したはずなのに、なんでか罪の意識はなかった。
いや、お兄ちゃんに怒られなければ、それは罪じゃないんだ。
そう思うと、胸が軽くなる。
『全員、全武器使用許可! ナメた野郎を殺せ!』
「野郎じゃないんだけどね」
私はアフターバーナーを点火し、より速度を上げていく。
『クソ、速すぎる! どうなってやがんだ!』
「ふふふ」
吶喊戦術で知られるグローリー級の特別仕様のこの船は、通常の約5.5倍の速度が出る。
お兄ちゃんが私の戦術を見て贈ってくれたこの船は、その本来の速度から更に速くなる工夫をしている。
グローリー級襲撃型重巡洋艦という名に反し、この船の全力はフリゲート級よりも速い速度、旋回速度を誇る。
「お兄ちゃんの力、見せてやる」
私はマスクの下で不敵な笑みを浮かべた。
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