上 下
9 / 56
序章

009-くされ警官

しおりを挟む
「...わ、わかった」

動揺したことを恥じたのか、アレンスターが顔を赤く染める。
そしてすぐに、頭をぼりぼりと掻いて言った。

「......わかった、顔も見えたことだ。レッジ、こいつの仮身分証明書を作成しろ」
「はっ」

レッジと呼ばれた男が、奥の方に消えていく。

「いいのか?」
「もとより、帝国に籍を持っていない不法滞在者や、未登録の犯罪者や元奴隷に対する措置だ、何も特別な事ではない」

それもそうか。

「お前は俺たちに不正をしろ、と提案したわけだ。そして俺たちは不真面目な地方警官なんでな、適切な見返りがあれば聞いてやってもいいんだが」
「見返りとは?」
「俺たちに協力してくれないか? なに、一生ってわけじゃない。ほんの数ヶ月ほど、海賊の殲滅に付き合ってほしい」
「...初心者ミッションか」
「?」
「気にしないでくれ」

海賊の殲滅を手伝え、というのはSNOの「傭兵」の初心者ミッションだ。
今になってそれを受けるなんて、お兄ちゃんに爆笑されるかもしれない。

「で、答えは?」
「手伝おう」
「そりゃ良かった」

調子のいい人だな...
お兄ちゃんが嫌いそうなタイプだけど、それでもお兄ちゃんはこういう人を懐柔するのが上手い。

「選択肢のない選択を迫るとは、人の悪い警官だな?」
「悔しいが、俺たちの装備では殲滅は困難でな。お前の強力な兵器――――出元は訊かないが、それを借りたい」
「........」

あの程度の武装が強力とは、相当貧弱な武装のようだ。

「上は?」
「俺たちの技量が低いんだとさ、まあ辺境の話だ。」
「そうか」

どんな武装かは知らないが、巡洋艦に苦戦するなら大した武装ではないんだと思う。

「どんな武装なんだ?」
「三連エントロピー減少集束パルスレーザー砲塔だ、帝国国内の民間船はこれを装備していることが多いな」
「国際警察なら、強い武装を持っていてもおかしくないようには思えるが」
「くされ警官も多いんでな、領主と結託する奴も多い。機密を敵に渡すわけにもいかないんで、中央の精鋭以外は持ってねえのさ」
「くされ警官か....まさにお前のような?」
「そうだな、ハハハ!」

話の通じる警官で良かった。
私は再びマスクを装着して、言った。

「では、宇宙に出ようか?」
「よし来た」

そのためには、まず船を取り返す必要がある。
TRINITY.の船はステーションの周囲を旋回していたが、進路を変えてステーションへと動き始めるのであった。

しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...