『フシギ』←を探しています

ビーさん

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活動記録2:『人生』←楽しんだ者勝ち

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 ――クソつまらん。

 たかだか数十年しか生きていない自分の『人生』に、俺はそう評価した。

 何をやるにしても、常に自分より上の人間がいて。

 何かを成し遂げたとしても、それは既に誰かがやったことで。

 そんなふうに、何においても自分の代わりがいるのなら、自分より一番のやつがいるなら。

 ――主人公に、なれないのなら。

 生きてたって、何も楽しくなんかない。そう思っていたのに。

「なら探せばいいじゃない。まだ誰も見たことないものを、やったことないことを。そうすれば、あんたでも一番ってやつになれるわよ」

 その言葉に、その目の輝きに、もう一度『人生』に面白さを見出そうと思って、その手を取ったのを……



「今、めちゃくちゃ後悔してる」

「え、なんだい急に?」

「なんでもねぇよ……つか重いわ!! 顔が近いわ!! とっととどけ! 去れ!」

 人を下敷きにしたでは飽き足らず、どういうつもりか顔を吸い込む息が全部口臭になるレベルまで近づけてきやがったトオルを、俺は手で無理矢理押し退けた。

「むぎゅっ」

 男子高校生が発していい効果音じゃない。だってのに、コイツの場合気色悪さがまるでない。これだからイケメンは。

「なぁトオル」

「なんだい、ユウ」

「何で俺たち生きてんだ? 三階から飛び降りたってのに」

 どういう訳か、自分が寝そべっている地面の感触が異様に柔らかい。あとなんか湿っぽい。

「それはね、僕たちがとっても柔らかいマットの下に落ちたからだよ」

「んだよ、やっぱちゃんとマットを用意してくれてたのかよ。脅かしやがって……」

 俺を怖がらせるためにあんな嘘をつくとは、トオルも人が悪い。まぁそうでなかったら、ほんとに飛び降りたりしないか。

「仲間と一緒にピンチに陥った際にユウがどんな行動を起こすか見てみたかったんだけど……まぁ、そういうヤツだったってことがわかったよ」

「な、なんだよおいやめろよ、俺がめちゃくちゃクズみたいじゃんか……い、いや本気で落とすつもりはなかったから! 大体トオルが落としたんじゃねぇか!! 俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!」

 無実を叫ぶも、ガーネット色の目は変わらず冷え切っている。そんな目で見ちゃイヤン。ここは話題を変えて誤魔化すことにしよう。

「そーいや、あきはどこいったんだ?」

「あきなら、さっき壁にぶつかった時に鼻血まみれになっちゃったから、顔を洗いに行ったよ」

「マットがやけに湿っぽいと思ったら全部アイツの鼻血かい! うわワイシャツにも染みついてやがる!!」

 それにしても、血の跡が俺の頭一個分というのはちょっと鼻血出すぎではないだろうか。

 と、噂をすればあきがタオルで顔をゴシゴシしながら戻ってきた。

「はーあ。一通り校舎を回ったけど、『フシギ』らしいもんは発見できなかったわねー。夜の学校つったら、七不思議の一つや二つ、あってもおかしくないのに」

「たった今、その七不思議とやらに火災警報器を鳴らす女と放火魔が加わっただろうよ」

「何よそのしょーもない七不思議」

「その『しょーもない』ことをやらかした張本人だろうがおめーは!」

 何故俺たちが夜中の学校にいるのかといえば、火災警報器を鳴らすためでも、犯罪レベルの火遊びをするためでも、ましてや三階からバンジージャンプをするためでもない。

 これが、俺たちの『部活』だからだ。

 『フシギを探し求める部活動』、略して『フシたん』。あき曰く、探をたんと読むのがポイントらしい。
 ちなみにメンバーは俺とトオル、そして部長のあきの合わせて三人。

 え、少ない? そりゃそうだよ今日あきが勝手に作ったばかりだもん。

 んで、夜の学校ってなんか『フシギ』なことが起こりそうじゃない? と言い出したあきにホイホイついて行った訳だが、結果はご覧の通りじゃない?

「なーもう帰ろうぜ? また警備員に見つかっても面倒だし。あと眠いし」

「そうねぇ。まっ、今日のところは引き上げましょうか」

 今日のところは……つまり、明日以降もこんな馬鹿騒ぎを起こすつもりなのか。

 ちょっとは何か『フシギ』なことが見つかると思ったが、まぁ所詮こんなものだろう。
 なんせ宝くじより確率が低いかもしれない事をやっているんだ。それを引き当てるくらいならいっそ宝くじが当たった方がいい。

 結局今日も明日も、何の変哲もない退屈な日常が続くのみ……

「……って、なんだよあき。さっきから俺の顔をジーッと見やがって」

「いやユウの顔とかどうでもいいんですけど。そうじゃなくて、アンタの後ろ……今、何か音がしなかった?」

「音?」

 俺の後ろ。あるのはフェンス。そしてその向こう側は草ボーボーの茂み。俺もあきに習って、耳を済ませてみる。なんならフェンスに耳をくっつけてみる。

 ガサガサッ……

「なんかいるな」

「なんかいるわね」

「なんかいるね」

 茂みの方から、確かに何か生き物が動く音がする。そして音は、段々大きくなっていって……

 ガサッ

 茂みから、ひょっこりとその姿を見せた。 

「カ」

「ラ」

「すぅ?」

 現れたのは、一匹のちっちゃいカラス。なんと驚き手のひらサイズ。

「ちっちゃくね?」

「ちっちゃいわね。ヒヨコに墨汁でもぶち撒けたのかしら」

「でも、クチバシはカラスそのものだよ? ……ってちょ二人とも足見て足!!!」

「足? 私の美脚がどうかしたの?」

「俺のたくましい足がどうかしたのか? そういや最近ますます筋肉がついてきて――」

「ちっがうよ! 二人のそんなしょーもない足じゃなくてカラスの足! ほら、足が三本もある!」

 トオルが何やら失礼なことを言っているのが気になったが、そんなことはカラスの足を見たらどうでも良くなった。

「おいおいマジかよ。ホントに足が三本あr」

「ヤタガラスよ!!!! 捕まえましょう!! 全力で!! トウッ!!」

「ちょっ!?」

 あきは二メートル以上はあるフェンスを軽々とジャンプで飛び越え、そのまま茂みの方へ逃げたカラス(?)を追いかけて行った。

「なんつージャンプ力だよ……」

「おさきにぃ!!」

「!?」

 トオルも、あきと同じく軽々とフェンスを飛び越えた。だから二メートルはあんだってそのフェンス! どーなってんだこいつらの足は!!

 いや待て、アイツらでも出来たってことはひょっとしたら俺も出来るんじゃないか? 最近筋肉ついてきたし。

 いける、いけ……うん、いける。

「あーいきゃーんふらぁぁぁぁぁーーーg!??!?」

 フェンスとぶあついキスをした。






―――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――
キャラクターNo.2
『あきちゃん』
本名、『咲上さきじょう あき』。腰まで伸ばした茶髪を、紫色のリボンで結んだ我らがフシたんの部長。ユウとトオルとは同級生であり中学生からの付き合い。狂気的とも言える探求心を原動力に、豊富な知識と万能な身体能力を兼ね備えたハイスペックな女の子。頭のネジが何本か外れているが、仲間想いの優しい心の持ち主である。とある事情から家族とは離れ、現在アパートで一人暮らし。

フシギ探索欲:狂人レベル
瞳の色:アメジスト



フシギ豆知識その2
私たちの世界における走り高跳びの世界記録はハビエル・ソトマヨルさんが記録した二メートル四十五センチです。あきちゃんとトオル君がいかにヤバいかがわかりますね。
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