『フシギ』←を探しています

ビーさん

文字の大きさ
3 / 5

活動記録3:『メインヒロイン』←出会いは突然に

しおりを挟む
 フェンスは飛び越えるものじゃない。登るもんだ。

 ここは学校の敷地に隣接する雑木林の中。

 なんとかフェンスを越えることができた俺は、全力疾走であきとトオルを追いかけていた。

「ぜぇ……はぁ……はぁ……ちょっ、まっ……」

 つか速えぇ!! あの二人超速えぇ!!

 走れども走れども、二人の後ろ姿が遠目からうっすらと見えるだけでちっとも追いつかない。ここまで身体能力に差があるとは。

 月明かりを頼りに走ること数分後、ようやく追いつくことができた。
 二人とも立ち止まっているが、例のヤタガラスとやらを捕まえられたのだろうか。

「はぁ……はぁ……なん、…………つか…………」

「ちょっと何言ってるか分からないんですけど。息整えてから話しなさいな。はい吸ってぇーー、吐いてぇーー」

「うぉっ、えほっ、げほっ、……ぜぇ……はぁ……」

「ちょっと!! 深呼吸しろつったのになんで咳すんのよ!! てか手抑えなさいよ!! あっ、ほら唾飛んだじゃない!!」

 咳き込む俺の背中を、容赦なくバンバン叩くあき。叩き返してやりたい。

「……それで? お前らが俺を置いてまで必死に追いかけてたヤタガラスとやらは捕まえられたのか?」

「アンタが鈍足なだけでしょーが。ヤタガラスならいるわよ。ほら、そこの宝石だらけの岩の上」

「岩? ……ってなんじゃこりゃー!!!??」

 あきが指さした場所。そこら一帯は草も木も生えておらず、代わりに一軒家程の高さと大きさを持つ大きな岩がそびえ立っていた。
 その岩にはあらゆる宝石が埋め込まれている。ルビーとか、トパーズとか、アイオライトとか、なんか色々。

 で、肝心のヤタガラスはというと……

「お、おるなぁ、てっぺんに」

 その宝石岩の頂上。そこで三本足のカラスが何故かタップダンスをしていた。それはもう、リズミカルに。

 なんというか、もう色々とお腹いっぱいです。

「なぁあき」

「何かしら、ユウ」

「俺ら今後どうすんだよ。部活始めて一日で目標達成しちゃったけど。県大会どころか全国大会優勝しちゃったけど」

「じゃあ世界目指すしかないっしょ。今回はまぁまぁ上出来だけど、私はこれで満足なんてしないわよ」

「探すってか! これ以上のもんを探すってか! 何処をどう探したら宝石岩の上でタップダンスするヤタガラスよりすげぇもんが見つかるってんだよ!」

「あっ、二人とも見て見て! ヤタガラスが今度はブレイクダンスをし始めたよ!」

「早速見つかったわね」

「俺もうあのカラスが何しても驚かない自信あるわ」

 さて、カラスのダンサーが主張強すぎて全然触れてなかったが、惹かれるものがもう一つ。

「こーんなおっきな物がどーして見つからなかったのかしらね」

 バカでっけぇ宝石岩。こんなものがあったら即座に見つかって、宝石を根こそぎ剥ぎ取られていそうなものだが。

「作り物かもしれないよ?」

「誰のだよ。つか何の目的でこんな場所に」

「まぁ何でもいいわよ。とりあえずヤタガラスを捕まえたら、根こそぎ宝石をかっさらうわよ!」

 そう言ってあきは「ふんふんふーん♪」と鼻歌を歌いながら宝石岩に歩み寄り。

「ふべらっ!?」

 ケツからすっ転んだ。

「どうした? 芸術的な転び方だな。バナナの皮でも踏んだのか?」

「いたた……私、今何かにぶつかったような……」

「これあれだよ! 見えない壁ってやつだよ! しゅごーい」

 トオルがパントマイマーみたいな動きをしている。からかってるようには見えないし、こりゃマジのやつだ。
 手触りとかめっちゃ気になる。よし俺も触ってみよう。

「……何も無いんだが」

「はぁ!? なんでよ、なんでアンタだけ通り抜けられてんのよ!」

 だって何も無いんだもん。
 でもあきがドンドン壁を叩く音が聞こえるし、トオルは壁にべったりと顔を付けないと絶対に出来ない変顔してるし。

 ということは。

「こりゃあれだな。俺は選ばれし者だから通れる。お前らは『残念でした(笑)』だから通れないっていうやつだな」

 なんという王道展開。ついに俺にも主人公らしいイベントが発生したというわけか。

「はっ倒されたくなかったら、馬鹿なこと言ってないでさっさとカラス捕まえてきなさいな」

「おっと、そんな舐めたこと言っていいのかな、あきさんよぉ? 俺はあのヤタガラスさんに選ばれたんだよ? 選ばれちゃったんだよ? つまり所有権は俺にある訳だし、そこんとこが分かったなら……」

 これはいけない。あきさんが人殺しの目をしてらっしゃる。

「ユウ、その辺にしておいた方がいいと思うよ? ほら、あきがアイスピックで壁をガリガリ削り始めたし」

 なんでそんな物騒なモン持ってんだとか、そのアイスピックで俺に何をする気だとか色々と言いたいことはあるが、後が怖いのでここは大人しく従う事にしよう。

 そう思い、ヤタガラスのいる宝石岩のてっぺんに登ろうとして岩に触れたその瞬間。

「ふぁ?」

 宝石岩に埋め込まれている宝石達が光だし――

 宝石岩が、それはもう盛大に爆発した。

「「「もあぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」

 近くにいた俺はもちろんのこと、見えない壁ごと爆破されたのかあきとトオルも仲良く吹っ飛ばされた。

「痛い! 身体中すごく痛い!! でも生きてる! 俺生きてるよ!!」

 痛みで地面転がってるなう。

 直に吹っ飛ばされたにも関わらず、なんとびっくり俺無事。痛いけど。

 そして俺が無事ということは、もちろん……

「し、死ぬかと思ったよ……」

「ぎゃああああ!!! 目に砂!! 目に砂が入ったんですけど!!」

 こいつらも無事のようだ。トオルは髪がアフロに、あきは目に砂がインしたようだが。

「皆さんご無事で何より」

「どこがよ! 目に砂入って全身泥まみれだし、トオルは髪アフロになってるし!!」

「ねぇ待ってあき、僕の髪が何だって?」

「何言ってんだよ、生きてんだから無事だろーが。泥なんざ洗えば落ちるし、髪は……まぁ、うん……なんとかなるだろ!」

「いやだから僕の髪がなん――って何これ!?」

 気づいてなかったのかよ。

 もじゃもじゃに仕上がった髪の感触が面白いのか、トオルは髪を触りながら「うへへ」と変な笑い声を出している。後で俺も触らせてもらおう。

「まるで鳥の巣ね。もっとも、どっかの誰かさんのせいでそこに住まわせるはずだった鳥さんは爆散しちゃったわけだけど。アンタどう責任とるつもり? とりあえずコレでアンタの指の間トントンしていい?」

 アイスピックの先端をこちらに向けながら、あきはじわりじわりとにじり寄ってくる。
 指の間トントンってあれだよな? ナイフゲームって名前のシャーペンとか使ってとにかく素早く指の間トントンするあの……

「待て、落ち着け、落ち着いてくださいホントに。あれは無理だろ。触ったら爆発とか回避不可能だろ」

「つまり触るべきではなかったってことね。でも触った。よってアンタが悪い、はいQ.E.D.」

「お前があのカラス捕まえて来いって言ったんだろうが!! はい俺悪くないー!! はいお前のせいー!!」

「私は捕まえてこいとしか言ってないわよ? つまりユウが勝手に触った。つまりユウのせい。オーケー?」

「オーケーじゃねーよ理不尽だよ何一つ納得できねーよ! ……まぁあれだ、ここはお互い水に流して、宝石岩のあった場所を調べようぜ。もしかしたらまだ宝石残ってるかもだし」

 あきは渋々納得したのか、不満気な顔をしながらも凶器を収めてくれた。危ねぇ危ねぇ。

 宝石岩は影も形も無くなり、代わりに家がすっぽり入るほどの大きなクレーターが。
 俺とあきは、トオルの頭をモフモフしながらそこに向かう。

 ――クレーターの中にあった物、否、いた者を見て、俺たち三人はその場に固まった。

「なぁ二人とも」

「なんだい、ユウ」「何かしら、ユウ」

「あれはなんだと思う? カラス? それとも宝石?」

「カラスじゃないかしら。背中から黒い羽が生えてるし」

「僕は宝石だと思うよ。だってほら、あんなに綺麗なんだもの」

 意見は別れた。だがハッキリと言えることがある。多分、この二人も同じ事を思っているだろう。

 ――少なくとも、これは人間ではない、と。

 クレーターの中にいた者。それは黒いシスター服を身にまとい、カラスのような黒い翼を生やした、まるで宝石のように美しい少女だった。





―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――
キャラクターNo.3
『トオル』
本名、『河井かわい トオル』。ユウ曰く、「金髪のスカしたイケメン」。飄々とした掴みどころのない性格で、余裕たっぷり。人生楽しんでるタイプ。あらゆる事を器用にそつなくこなし、コミュ力に長けた言ってしまえば何でもできる子。もちろん異性にモテる。しかし、問題児二人と関わっているせいか、そんな長所も影を潜めかけている。そして、彼の普段見せない『裏』の部分を知っているのも、その問題児二人だけだったりする。

フシギ探索欲:お気楽レベル
瞳の色:ガーネット

フシギ豆知識その3
あきちゃんは普段アイスピックを二本護身用に持ち歩いているが、日本だと軽犯罪法に引っかかるから良い子のみんなはマネしないでくれよな!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

処理中です...