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第一章:素敵な出会い、それは狂った妖刀でした
004:秘密の夢
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「……お前は一体誰だ?」
「〆:嫌ですね、初めから名乗っていますよ。私の名は〆と申します」
「それ名前か? まぁいい。それよりもだ……なぜ俺の名が分かる?」
「〆:うふふ。一言で言えば『状況判断』とでも言いますか……。それにもう一つは、先程●を押した時に、個人情報を盗――いえ、拝借いたしました」
「おい! 今、盗んだって言いそうになったろう!? 嘘だろ、一体どうやって……」
「〆:まぁまぁ、男子たるもの細かい事は気にしちゃダメですよ?」
「はぁ~、まあいい。迷い家か何かの一種なのか、この妖怪屋敷は?」
そう言うと、メモ用紙の〆はムっとした様子でそれに答える。
「〆:失礼ですね! 迷い家風情と一緒にして欲しくありませんね! ここは由緒ある『異怪骨董やさん』なのですから!」
「俺から見ればどっちも化け物屋敷だよ。それで、どうやったらここから帰れるんだ?」
流がそう聞くと、店内に某有名RPGゲームで『全滅した時』の音が流れる。
「〆:くすん……。残念ながら古廻様は、普通にお帰りになる事は出来ません」
「はぁ? 何を言っているんだ? って言うかこの曲はやめろ、そして泣きまねをするな!」
「〆:せっかく雰囲気を出してさしあげたのに……」
「余計なお世話だよ! で?」
「〆:せっかちな男子は嫌われますよ? えっとですね、初めの出入口からは普通には帰れません。そのお約束で向こうの入口を開放したのですからね?」
「約束ってあの障子に書いてあったアレか?」
「〆:ええ、そうですよ。ちゃんと確認しましたよね? 戻る事は『大変困難』だと」
「と、なると戻る事は可能……条件はなんだ?」
「〆:普通なら怒鳴り散らしてもよい話だと思いますが、流石は鍵鈴に選ばれるだけの達観さをお持ちの古廻様。話が早くて助かります」
〆の少し上から目線の言い様に、イラっとしつつも「ここは妖怪の腹の中」と言う事を思い出し、流は努めて冷静に〆を見つめる。
鍵鈴と言う言葉が気になったが、多分今自分が手にしている鉾鈴の事だろうと、その先を促す。
「フン、世辞はいい。それで?」
「〆:では早速。先程いらした草原の世界で『古廻様が一定の状況で最高に満足した結果を残したと思った時』と言う条件が達成され時、入口の封印は解除されます。満足の内容は古廻様のお気持ち次第なので、内容は問いません」
その答えに流は少し考え、メモ用紙を見つめながら一つの疑問をたずねる。
「一つ聞きたい。俺に何をさせようとしている?」
「〆:別に何も……。ただ強いて言えば、貴方様はあの封印を解き放つ事が出来た。と言う事は、異世界を楽しむ権利があると言う事です」
「言い方を変えよう、お前に何の益がある?」
「〆:そうですね。その鍵鈴ですが……お気に召しましたか?」
「ああ、何故かしっくりくると言うか、体の一部のようだな。コイツは何だ? 出来れば購入したいんだが」
その質問に〆は楽し気に少し笑うと、困ったように話し出す。
「そうですか、やはり偶然と言う訳では無いのですね……。ええ良いですよ、その鍵鈴は古廻様へお譲りいたしましょう。お代ですが、先程の質問の答えとなりますが……異世界を楽しんでいただく事で、その対価とさせてください」
「それのどこが対価になるんだよ? そしてお前の益になる答えを聞いて無いが?」
流がそう言うと、〆は申し訳なさそうに話し始める。
「〆:そう……ですね。こちらも強いて言えば『過去の過ちを清算出来ればいいな』と言う感じですかね」
「過ち? 何かあったのか?」
「〆:随分と昔のお話になります……。過去にこちらの世界より向こう側へと、理を無視して渡った物があるのです。もしまだそれが存在するのなら、それを見つけ出して、壊して頂けたら嬉しいなと言う感じですかね。それが私の益と言う事にして頂けたら幸いです」
「それはどんな物なんだ?」
「〆:その当時は人形でしたが、今は良く分かっていません」
「また随分とテキトウな表現だな。それは強制か?」
「〆:いえ、あくまで希望ですので、古廻様のお好きになされて結構です」
「それは随分と緩い話だな。そちらに益があるとはあまり思えないが……。まぁ、お前がいいならそれでいいさ」
何やらまだまだ裏に何かを隠している含みを感じながらも、流は条件の「人形を破壊すると言う事が、出来ればお願いレベル」の話なのでとりあえず納得する。
「で、あちらの世界――つまり異世界か? あんな草原で何を満足しろと?」
「〆:とりあえず今分かる情報だけは、お伝え出来ますのでお答えします。あちらの世界は無人と言うわけではなく、人間もいますし、野生動物も沢山います。それらと交易をしたり、御自由に過ごして下さい」
「おいおい、交易と言っても俺は何も無いが?」
「〆:そこはほら、ここにある『現在使用出来る』品と数なら無制限にお使い下さい」
微妙な言い回しである「現在使用出来る」と言う言葉から推測すると、何か条件達成すれば幅が広がると確信する。
「……で、その使える品や数の開放条件は?」
「〆:本当に話が早くて助かります。一定の満足感を得られると、順次開放予定ですので、頑張って下さい」
「分かった、じゃあ取りあえず外を見に行くとするか~」
「〆:あ、古廻様少しお待ち下さい、まず本契約書にご記入願います」
「え、本契約? おい、まだ何かあるのか!?」
その言葉に思わず突っ込むが、〆は何事も無いように〝ぺらり〟と裏返り、裏面にある記入欄が点滅する。
ご丁寧にいつ間にか、初めからそこにあったかのように、自然な感じで羽ペンとターコイズブルー色の高価そうなインク壺、さらにもう一枚メモ用紙まで出現していた。
これまでこの骨董屋は色々異常だったが、今回のコレはそれが際立つ。
その理由は……。
「おい! 何故だ、何で俺の夢まで分かる!? 誰にも話した事無いのに!!」
そこには流の氏名は無論、生年月日や住所や趣味等の詳細な情報と『夢』まで書いてあった。
「しかも夢まで……誰にも話したことが無いのに」
流の夢、それは骨董屋の看板を上げ、一国一城の主になる事であった。
「〆:嫌ですね、初めから名乗っていますよ。私の名は〆と申します」
「それ名前か? まぁいい。それよりもだ……なぜ俺の名が分かる?」
「〆:うふふ。一言で言えば『状況判断』とでも言いますか……。それにもう一つは、先程●を押した時に、個人情報を盗――いえ、拝借いたしました」
「おい! 今、盗んだって言いそうになったろう!? 嘘だろ、一体どうやって……」
「〆:まぁまぁ、男子たるもの細かい事は気にしちゃダメですよ?」
「はぁ~、まあいい。迷い家か何かの一種なのか、この妖怪屋敷は?」
そう言うと、メモ用紙の〆はムっとした様子でそれに答える。
「〆:失礼ですね! 迷い家風情と一緒にして欲しくありませんね! ここは由緒ある『異怪骨董やさん』なのですから!」
「俺から見ればどっちも化け物屋敷だよ。それで、どうやったらここから帰れるんだ?」
流がそう聞くと、店内に某有名RPGゲームで『全滅した時』の音が流れる。
「〆:くすん……。残念ながら古廻様は、普通にお帰りになる事は出来ません」
「はぁ? 何を言っているんだ? って言うかこの曲はやめろ、そして泣きまねをするな!」
「〆:せっかく雰囲気を出してさしあげたのに……」
「余計なお世話だよ! で?」
「〆:せっかちな男子は嫌われますよ? えっとですね、初めの出入口からは普通には帰れません。そのお約束で向こうの入口を開放したのですからね?」
「約束ってあの障子に書いてあったアレか?」
「〆:ええ、そうですよ。ちゃんと確認しましたよね? 戻る事は『大変困難』だと」
「と、なると戻る事は可能……条件はなんだ?」
「〆:普通なら怒鳴り散らしてもよい話だと思いますが、流石は鍵鈴に選ばれるだけの達観さをお持ちの古廻様。話が早くて助かります」
〆の少し上から目線の言い様に、イラっとしつつも「ここは妖怪の腹の中」と言う事を思い出し、流は努めて冷静に〆を見つめる。
鍵鈴と言う言葉が気になったが、多分今自分が手にしている鉾鈴の事だろうと、その先を促す。
「フン、世辞はいい。それで?」
「〆:では早速。先程いらした草原の世界で『古廻様が一定の状況で最高に満足した結果を残したと思った時』と言う条件が達成され時、入口の封印は解除されます。満足の内容は古廻様のお気持ち次第なので、内容は問いません」
その答えに流は少し考え、メモ用紙を見つめながら一つの疑問をたずねる。
「一つ聞きたい。俺に何をさせようとしている?」
「〆:別に何も……。ただ強いて言えば、貴方様はあの封印を解き放つ事が出来た。と言う事は、異世界を楽しむ権利があると言う事です」
「言い方を変えよう、お前に何の益がある?」
「〆:そうですね。その鍵鈴ですが……お気に召しましたか?」
「ああ、何故かしっくりくると言うか、体の一部のようだな。コイツは何だ? 出来れば購入したいんだが」
その質問に〆は楽し気に少し笑うと、困ったように話し出す。
「そうですか、やはり偶然と言う訳では無いのですね……。ええ良いですよ、その鍵鈴は古廻様へお譲りいたしましょう。お代ですが、先程の質問の答えとなりますが……異世界を楽しんでいただく事で、その対価とさせてください」
「それのどこが対価になるんだよ? そしてお前の益になる答えを聞いて無いが?」
流がそう言うと、〆は申し訳なさそうに話し始める。
「〆:そう……ですね。こちらも強いて言えば『過去の過ちを清算出来ればいいな』と言う感じですかね」
「過ち? 何かあったのか?」
「〆:随分と昔のお話になります……。過去にこちらの世界より向こう側へと、理を無視して渡った物があるのです。もしまだそれが存在するのなら、それを見つけ出して、壊して頂けたら嬉しいなと言う感じですかね。それが私の益と言う事にして頂けたら幸いです」
「それはどんな物なんだ?」
「〆:その当時は人形でしたが、今は良く分かっていません」
「また随分とテキトウな表現だな。それは強制か?」
「〆:いえ、あくまで希望ですので、古廻様のお好きになされて結構です」
「それは随分と緩い話だな。そちらに益があるとはあまり思えないが……。まぁ、お前がいいならそれでいいさ」
何やらまだまだ裏に何かを隠している含みを感じながらも、流は条件の「人形を破壊すると言う事が、出来ればお願いレベル」の話なのでとりあえず納得する。
「で、あちらの世界――つまり異世界か? あんな草原で何を満足しろと?」
「〆:とりあえず今分かる情報だけは、お伝え出来ますのでお答えします。あちらの世界は無人と言うわけではなく、人間もいますし、野生動物も沢山います。それらと交易をしたり、御自由に過ごして下さい」
「おいおい、交易と言っても俺は何も無いが?」
「〆:そこはほら、ここにある『現在使用出来る』品と数なら無制限にお使い下さい」
微妙な言い回しである「現在使用出来る」と言う言葉から推測すると、何か条件達成すれば幅が広がると確信する。
「……で、その使える品や数の開放条件は?」
「〆:本当に話が早くて助かります。一定の満足感を得られると、順次開放予定ですので、頑張って下さい」
「分かった、じゃあ取りあえず外を見に行くとするか~」
「〆:あ、古廻様少しお待ち下さい、まず本契約書にご記入願います」
「え、本契約? おい、まだ何かあるのか!?」
その言葉に思わず突っ込むが、〆は何事も無いように〝ぺらり〟と裏返り、裏面にある記入欄が点滅する。
ご丁寧にいつ間にか、初めからそこにあったかのように、自然な感じで羽ペンとターコイズブルー色の高価そうなインク壺、さらにもう一枚メモ用紙まで出現していた。
これまでこの骨董屋は色々異常だったが、今回のコレはそれが際立つ。
その理由は……。
「おい! 何故だ、何で俺の夢まで分かる!? 誰にも話した事無いのに!!」
そこには流の氏名は無論、生年月日や住所や趣味等の詳細な情報と『夢』まで書いてあった。
「しかも夢まで……誰にも話したことが無いのに」
流の夢、それは骨董屋の看板を上げ、一国一城の主になる事であった。
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