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第二章:偉大なる称号
035:私は宿屋の娘である、名はまだない
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翌朝になり昨日の酒も綺麗に抜けたのか、スッキリとした目覚めで起床する。
「ふわ~。うぅ……。さて、もうひと眠りするか……」
朝に弱い漢、それが流であった。しかし敵は油断をした時にこそやって来る。
コココココココン! ココン! コンコンコン!
「お客さーん、朝ごはんどーしますか~? もうすぐ片付けてしまいますよ~」
宿屋の娘(仕事中)が朝から軽快なリズムでドアをノックする。
「うるさいわ! なぜそんなリズミカルにドアをノックするんだよ! はぁ~起きますよ、起きればいいんでしょ~、五分後に……」
コッココン! コッココン! コココココン!
「ヤメンカー! 分かったよ、起きますよ……なんて酷い宿屋だ」
今にも閉じそうな瞼を奮い立たせ、ドアへと向かい開け放つ。するとまたノックをしようとした宿屋の娘(十七歳位)にチョップして止めさせる。
「いだいッ! 何をするんですかぁ~お客さん。私の愛の籠ったモーニングコールを邪険にするなんて」
「お前はモーニングコールの何たるかを知っているのか? 客に不愉快な思いをさせる宿があるかよ」
「知っていますよ! モーニングコールなんて常識ですもん」
「ほぅ? じゃあ言ってみろ」
「お客さんこそ教えてくださいよー」
「む、モーニングコールとは客を朝気持ちよく起こす事だ」
「む、朝になったら騒々しく起こして出て行ってもらうんですよ」
「え?」
「え?」
「違う、それじゃ嫌がせじゃないか」
「違いますよ、それじゃ顔真っ赤になりますよ」
「え?」
「え?」
「……お前の言う顔真っ赤って何だ?」
「……だって、だって―― そんな朝から享楽的な事をしてたら『朝から享楽亭』になっちゃうじゃないですかー!」
涙目で顔を真っ赤にしながら、切実に訴える宿屋の娘(性別女)は魂の叫びを流にぶつける。
「なんだ……と!? お前! ここの宿屋が変な名前だと分かってたのか!?」
「分かりますよ!! でも誰も相手にしてくれなくて、私一人で毎日悩んでたんです」
そう言うと、宿屋の娘(彼氏募集中)は涙に濡れるのだった。
「なんと言う事だ、俺もここの宿屋の名前が変だと昨日からファンや、屋台の奴らに言ったんだんだ! でも誰も相手にしてくれなかったんだよ!!」
「お客さんもですか!? うぅ……やっと分かってくれる人と会えたよぅ」
そう言うと宿屋の娘(恋の予感)は涙の海に溺れたのだった。
「悪かったな、心の友よ。お前は俺の最大の理解者だ!」
「お客さーん! 私も嬉しい……です。お客さん、私……」
二人は見つめ合う、こんなにも自分を「理解してくれる人」がいるんだって……。
「だから今日から毎日お小遣いくださいね!」
「…………」
「あいだッ!? お客さーん。どうしてチョップするんですか~、待ってくださいよ~お客さぁぁん」
宿屋の娘(守銭奴)は金に享楽的なようである。
やはり宿屋の看板に嘘偽りは無かったようで、流も安心して朝食会場へ向かったのだった。
◇◇◇
朝食を終えた流は宿を出て、中央通りに向かって歩いていた。
トエトリーの町は朝だと言うのに活気に溢れ、まるで昨日からこの賑わいが続いているかのような勢いだった。
「朝っぱらから皆元気すぎだろ~。ふぁぁあ……さて、どうするかな……そうだ、ギルドへ行って冒険者登録でもするか」
冒険者ギルドは正門からほど近い通りにあり、冒険者が帰って来てすぐに換金出来るように、獲物を保管する倉庫が三つ並んでおり、建物は五階建てで、縦横共にかなり大きい。
「ほ~大きい建物だな。そしてこの場所の熱気は朝から何だ? 酒場や露店が多いぞ」
見ると露店では薬草・武器・軽食や酒・食料品等が所狭しと並び、酒場では朝から酒盛りをしている冒険者まで居た。
「これぞ異世界って感じだな、実にいい! こういう光景は大好物だ! すると後はアレだろう? よし、ここは冒険者風の口調で行こう!」
流はニヤリと口角を上げ冒険者のロールを楽しむべく、血に飢えた刀を落ち着かせるように、美琴を撫でながらギルドの中へと吸い込まれて行く。
ギルドの入り口はウェスタン扉で、何故かバニーガールの人形が中へと誘っている。
(もう辛抱たまらん! なんだこのドアは、レトロ映画のあれか? あの時代の品も好なんだよな俺。でも、なぜ入口にバニー? しかも誘ってやがる……)
入口のドアを勢いよく押す、すると〝ギィィィ~〟と油が切れた扉が開くような大きな音が鳴り響き、喧騒だったギルド内が一瞬で静かになる。
流は一歩中へ入り内部を見渡す。周辺には丸テーブルが等間隔に置かれ、大きいバーカウンターが左右にあり、朝から呑み比べをしている冒険者や昨日から呑んでいたのか、酔いつぶれて居る冒険者も居た。
それらを一瞥すると、ギルドのカウンターに居る受付嬢の元へと歩いていく――はずだった。
しかし、当然、当たり前で、確実に右のテーブルから「足」が伸びる。
それを見た二階の吹き抜けから見ていた、冒険者達が賭けを始める声が響く。
オッズは無論、流が大穴である。
「おい、二階の奴!」
そう言うと流は金貨を一枚親指で勢いよく弾き、大声で賭けを仕切ってる奴に投げ渡す。
(ああああ!! 幸せすぎて今、オレ、サケビタイ!! 異世界サイコオオオオオオッ!!)
何故か流暢な誇り高い部族言になる流、その余韻に浸る間も無く残酷な言葉が浴びせられる。
☆*:゚♪+。.☆.+**:゚+。☆彡
【あなた様に大感謝♪】
☆*:゚+。.☆.+*♪*:゚+。★彡
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「ふわ~。うぅ……。さて、もうひと眠りするか……」
朝に弱い漢、それが流であった。しかし敵は油断をした時にこそやって来る。
コココココココン! ココン! コンコンコン!
「お客さーん、朝ごはんどーしますか~? もうすぐ片付けてしまいますよ~」
宿屋の娘(仕事中)が朝から軽快なリズムでドアをノックする。
「うるさいわ! なぜそんなリズミカルにドアをノックするんだよ! はぁ~起きますよ、起きればいいんでしょ~、五分後に……」
コッココン! コッココン! コココココン!
「ヤメンカー! 分かったよ、起きますよ……なんて酷い宿屋だ」
今にも閉じそうな瞼を奮い立たせ、ドアへと向かい開け放つ。するとまたノックをしようとした宿屋の娘(十七歳位)にチョップして止めさせる。
「いだいッ! 何をするんですかぁ~お客さん。私の愛の籠ったモーニングコールを邪険にするなんて」
「お前はモーニングコールの何たるかを知っているのか? 客に不愉快な思いをさせる宿があるかよ」
「知っていますよ! モーニングコールなんて常識ですもん」
「ほぅ? じゃあ言ってみろ」
「お客さんこそ教えてくださいよー」
「む、モーニングコールとは客を朝気持ちよく起こす事だ」
「む、朝になったら騒々しく起こして出て行ってもらうんですよ」
「え?」
「え?」
「違う、それじゃ嫌がせじゃないか」
「違いますよ、それじゃ顔真っ赤になりますよ」
「え?」
「え?」
「……お前の言う顔真っ赤って何だ?」
「……だって、だって―― そんな朝から享楽的な事をしてたら『朝から享楽亭』になっちゃうじゃないですかー!」
涙目で顔を真っ赤にしながら、切実に訴える宿屋の娘(性別女)は魂の叫びを流にぶつける。
「なんだ……と!? お前! ここの宿屋が変な名前だと分かってたのか!?」
「分かりますよ!! でも誰も相手にしてくれなくて、私一人で毎日悩んでたんです」
そう言うと、宿屋の娘(彼氏募集中)は涙に濡れるのだった。
「なんと言う事だ、俺もここの宿屋の名前が変だと昨日からファンや、屋台の奴らに言ったんだんだ! でも誰も相手にしてくれなかったんだよ!!」
「お客さんもですか!? うぅ……やっと分かってくれる人と会えたよぅ」
そう言うと宿屋の娘(恋の予感)は涙の海に溺れたのだった。
「悪かったな、心の友よ。お前は俺の最大の理解者だ!」
「お客さーん! 私も嬉しい……です。お客さん、私……」
二人は見つめ合う、こんなにも自分を「理解してくれる人」がいるんだって……。
「だから今日から毎日お小遣いくださいね!」
「…………」
「あいだッ!? お客さーん。どうしてチョップするんですか~、待ってくださいよ~お客さぁぁん」
宿屋の娘(守銭奴)は金に享楽的なようである。
やはり宿屋の看板に嘘偽りは無かったようで、流も安心して朝食会場へ向かったのだった。
◇◇◇
朝食を終えた流は宿を出て、中央通りに向かって歩いていた。
トエトリーの町は朝だと言うのに活気に溢れ、まるで昨日からこの賑わいが続いているかのような勢いだった。
「朝っぱらから皆元気すぎだろ~。ふぁぁあ……さて、どうするかな……そうだ、ギルドへ行って冒険者登録でもするか」
冒険者ギルドは正門からほど近い通りにあり、冒険者が帰って来てすぐに換金出来るように、獲物を保管する倉庫が三つ並んでおり、建物は五階建てで、縦横共にかなり大きい。
「ほ~大きい建物だな。そしてこの場所の熱気は朝から何だ? 酒場や露店が多いぞ」
見ると露店では薬草・武器・軽食や酒・食料品等が所狭しと並び、酒場では朝から酒盛りをしている冒険者まで居た。
「これぞ異世界って感じだな、実にいい! こういう光景は大好物だ! すると後はアレだろう? よし、ここは冒険者風の口調で行こう!」
流はニヤリと口角を上げ冒険者のロールを楽しむべく、血に飢えた刀を落ち着かせるように、美琴を撫でながらギルドの中へと吸い込まれて行く。
ギルドの入り口はウェスタン扉で、何故かバニーガールの人形が中へと誘っている。
(もう辛抱たまらん! なんだこのドアは、レトロ映画のあれか? あの時代の品も好なんだよな俺。でも、なぜ入口にバニー? しかも誘ってやがる……)
入口のドアを勢いよく押す、すると〝ギィィィ~〟と油が切れた扉が開くような大きな音が鳴り響き、喧騒だったギルド内が一瞬で静かになる。
流は一歩中へ入り内部を見渡す。周辺には丸テーブルが等間隔に置かれ、大きいバーカウンターが左右にあり、朝から呑み比べをしている冒険者や昨日から呑んでいたのか、酔いつぶれて居る冒険者も居た。
それらを一瞥すると、ギルドのカウンターに居る受付嬢の元へと歩いていく――はずだった。
しかし、当然、当たり前で、確実に右のテーブルから「足」が伸びる。
それを見た二階の吹き抜けから見ていた、冒険者達が賭けを始める声が響く。
オッズは無論、流が大穴である。
「おい、二階の奴!」
そう言うと流は金貨を一枚親指で勢いよく弾き、大声で賭けを仕切ってる奴に投げ渡す。
(ああああ!! 幸せすぎて今、オレ、サケビタイ!! 異世界サイコオオオオオオッ!!)
何故か流暢な誇り高い部族言になる流、その余韻に浸る間も無く残酷な言葉が浴びせられる。
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