日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第三章:滅ぼす者と、領域者との出会い

063:【奴の名は?】

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 美琴を存分に愛でた流は、昨日ファンに聞いた場所へ向かっていた。
 そこは町の東側にある裏路地のような通りだが道幅は広く、通称「骨董市」と呼ばれる場所だった。
 そんな骨董市は軽い傾斜が付いた坂に露天の他に骨董店が立ち並び、流としては夢の国より夢の市と言う風景が実に心地よい。

「うううぅ。こ、この雰囲気! イイ……実にいいぞ!! これだよこれ、俺が求めていた異世界の骨董屋ってのはさあ!!」

 突然骨董街の入り口で両肩を抱きしめ、一人で悶える男を見る人の目は生温かった。
 しかし中には冷たい目で見るものもいたが、比較的他の場所よりは少なかったのは、ここがそう言う人達が集まる場所だからである。 

「あ~、俺もここに店を出そうかな~? でもまだ売る物が少ないしなあ、こっちの名品や珍品の目利きも全然分からんし……よくよく考えればなんてハードルが高いんだ」

 歩きながら市場を見つつ色々現実的に考えると、やはり異世界骨董屋の開業はかなり難しいと感じる、が――。

「ククククッ! だからこそ面白い!! やりがいがあって良いじゃないか!」

 一人で気合を入れる流に周囲は不思議そうに見ているが、元々変わり者が多いこの市場ではさほど関心が薄い。

 しかしそんな変わり者が多いこの市場で、周囲がドン引く異臭を放つ存在がそこに居た。

 そのは小柄だが身なり良く、金髪緑目が印象的な貴族然としたロングヘアの美男子だった。
 だがその言動がかなり「異常」だと、流ですら感じる程の狂気さを感じる。

「おい、店主! この壺はアレクス王時代の物だな!?」
「は、はい。その通りでございます」
「だがこの色彩は何だ?? 普通は白だが、黒と白が織り交ざって見た事が無い風合いを出しているぞ?」
「そ、それは釉薬の調合が間違って出来――」
「そんな事は良い! この『もてっ』とした捻り返しはどうだ!? 全体的にスットした形なのに、何故そこだけ『もてっ』としている? たまらん、実にイイ! 壺なのにその『もてっ』とした部分に口づけをしたい、今すぐにだ!」

 は店主の説明を遮り、あろう事か、その『もてっ』とした部分に口をつけ、中身が無いのに飲むような仕草をする。

「あ、あのう……それ、壺なんですが……」
「…………嫁に……貰おう」
「はい!? 私には娘はおりませんが?」
「馬鹿者! この『もてっ』とした娘だ! 今すぐ包んでくれ、早急にだ!」
「ひぃぃ。は、はい只今すぐに!」

 それを見ていた周囲の空気は凍り付く、そして流石の流も思った、思ってしまった……「ああは絶対になるまい」――と。

「ご店主も哀れに……世の中には狂人が多いな、俺には全く理解が出来ない。恐ろしい領域者ヘンタイを見た気がする」

 そう流は独り言ちると、首を「ありえない」と左右に振りながら残念な人を見るような目で漢を一瞥いちべつし、骨董街を進み目を養う事にする。



 しばらく進むと何やら見たことが無い、壺と言うにはシャープな佇まいなのに、肩と腰が『もにゅ』っとした一品が目に飛び込む。

「ご店主! その壺のような物は何だ!?」
「は、はい? それは壺その物で、トール帝時代に作られた失敗作ですが、形が面白いので仕入れて見たんですが……」
「これが失敗作だと!? 何を言う! この『もにゅ』っとした腰から肩にかけての曲線美が分からんのか!?」
「ひぃぃ!? す、すみませ――」
「俺に謝る前にこの『もにゅ』っとした壺の素晴らしさを学ぶことだな! この『もにゅ』っとした武骨さからくる、曲線に繋がるシャープさは伊賀焼に通じるものがある。もう我慢が出来ん!」

 流は店主の謝罪を遮り、『もにゅ』っとした壺に頬ずりをする。何度も、幾度も。

「あ、あのう……もう満足……されましたか?」
「…………君を……俺の家族にする」
「はい!? わ、私はにはそう言う趣味はありませんので!!」
「馬鹿野郎! あんたじゃない、この『もにゅ』っとした娘だ! 今すぐ包んでくれ、早急にだ!!」
「ひぃぃ。は、はい只今すぐに!」

 それを見ていた周囲の空気は凍り付く、何だこのヘンタイは……と。

 そして、ソレ目撃していた小柄だが身なりの良い、金髪緑目のロングヘアの美男子は思った、思ってしまった。

「ああは絶対になるまい」――と。

「店主も哀れに……世の中には狂人と言う者は居るのだな、俺には全く理解が出来ない。恐ろしい領域者ヘンタイを見た気がする」

 流の被害にあっている店主が壺を必死に包んでいる間に、身なりの良い漢は「ありえない」とばかりに首を左右に振りながら流を一瞥し、大事に『もてっ』とした壺を抱えて立ち去って行った。
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