日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第三章:滅ぼす者と、領域者との出会い

064:古廻流、天敵と邂逅する

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 流は『もにゅ』っとした壺を購入後、さらに骨董街を満喫し、それなりに買い込んだところで空腹を覚える。気が付けば日も傾むいている。

「腹が減ったと思ったらもうこんな時間か。そう言えばここに来る前に、屋台と公園が一緒の雰囲気のいい場所があったな。そこで飯にしよう!」

 美琴をポンポンと撫でながら流は機嫌よく屋台が集まる「屋台村」へ向かう。
 中央広場程ではないが、この巨大な町のいたる所で屋台村があると聞いていた流は、全て行ってみると決めていた。
 屋台村の中では屋台で海鮮物を小麦粉で焼き固めたような、一見お好み焼きモドキを購入する。
 味は日本で馴染みのあるソース味では無く、醤油に近い風味の醗酵した何かと、酸味がある辛いソースが一体となった、妙に癖になる変わった味だった。

 その「お好みモドキ」をかじりながら公園のベンチへ向かう。

 丁度夕食時のせいかベンチはほぼ埋まっており、一つだけ空いていたベンチは、背中同士がアーチ状に繋がるタイプの物だった。
 後ろの座席に先客が居たが、重なり合わない様に背後の人物と逆の方へと座る。

「これ、中々美味いな~。この町に来れて本当に良かった……。街並みは綺麗だし、住民の顔は大体明るいのが良いな」

 久しぶりにマッタリとした空気と雰囲気を楽しんでいると、先程見た狂人の事を思い出す。

「しかしあれは無いわ~。いきなり『もてっ』とした壺に口づけするとか異常すぎる」
「全くあれはないだろう。いきなり『もにゅ』っとした壺に頬ずりとは、異常すぎる」

「「ん?」」

 どこかで聞いたことがある話が聞こえてきたが、それよりあの狂人的変態の方が気になった。

「大体ご店主の話を遮って興奮をしすぎだわ、しかも聞いた事を無視とか」
「それも店主の謝罪も無視をしてまで、形に拘り学べとか意味が分からぬ」

「「んん??」」

「……あと最後のあれは何だ、言うに事欠いて『嫁に欲しい』だよ、人としておかしいぞ! あれは常識を知らない狂人だな」
「……挙句の果てには誰が聞いても店主に愛の告白をしたと思うだろ、何せ『君を俺の家族にする』だったか? 狂人すぎる」

「「…………エッ?」」

 近くには喧騒が聞こえるが、このベンチの周りだけは時が止まったかのように静かだった。

「「…………」」

「「――――ソレは俺の事かあああああ!!!!!!!?」」

 互いに斜め後ろに座っている漢に向き合い絶叫する。
 良く見れば先程骨董街で見た、「狂人的変態」がそこに居た。

「お、お前はあの変態ッ!?」
「き、貴様は先程の変態!?」

「「変態に変態って言われただと!?」」

「ちょっと待て、俺は別に変態じゃないぞ? ただ『もにゅ』っとした、この壺っ娘を家族にしたい、そんなありふれた事を言っただけだ!」
「馬鹿を言うな、俺こそ変態などではない! ただ『もてっ』としてる壺娘を嫁にしたいと言う、誰が聞いても真っ当な事を言っただけだ!」

 互いに譲らぬ「自分はマトモ」だと言う確固たる信念がそこにあった。
 
 いつの間にか、この漢達の周りにはギャラリーが出来上がっていた。
 丁度そこに仕事を終えた骨董街の住人も、ここを通って帰宅するのか、見た顔もちらほらとあった。
 
 そこに――。

「あのう~。さっきはお買い上げありがとうございました……」
「兄さんの店でも買ってくれたのかい? あ、うちの店でもありがとうございました」

「ご店主! 丁度いい所へ来てくれた。この変態に説明してやってくれ、『俺はマトモ』だと!」
「貴様はあの店主! この失礼な変態馬鹿に説明をしてくれぬか? 『俺はマトモ』だったと!」

 そう迫られた兄弟は互いの顔を見合わせてから一言伝える。

「「どちらも言っている事に然程変わりがありませんが……」」

「「なん……だ……と!?」」

 熱い主張を繰り広げていた漢達は絶句する。そしてその視線を周りに向けると全員が「ウンウン」と頷いていた。

「「そ、そんなバカな……」」

 閑話休題

 子供は無邪気な生き物だ、だからこそ天使にも悪魔にもなりえる。
 そんな天使だからこそ、子供の言葉はいつも真実を照らす。

「ねぇ~パパ? あのお兄いちゃん達の言っている事や、言葉の間や『文字数』まで同じ気がするんだけど、気のせいなの? 本当は凄く仲がいいお友達なんでしょ?」
「シ~! 見ちゃだめだよ。リリンはあんな領域ヘンタイってはダメだからね? さあ、リリンが汚されないうちに、ママが待っているから行こうか」

「「チョ、ま……」」

 去る親子に、右手だけを伸ばす仕草で固まる二人。

 そんな彫像のように固まる二人の漢は、周囲の人々を油の切れたオートマタのように「ギギギッ」と見回す。
 すると誰も目を合わせようとしなかった。

 そんな現実と言う名の残酷が、骨董を愛でる漢達に深く突き刺さったのだった。
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