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第三章:滅ぼす者と、領域者との出会い
071:夢の中へ
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〆は出来れば流が異世界で自由に生きて欲しかった。そして何時か外界へ戻る事になっても、たまに帰ってきて、自分達に無事な姿を見せてくれればそれでいいと。
三兄妹は代々の古廻家の当主に仕えて来た。それはこの「異怪骨董やさん」の守護者としての役割はむろん、新たな古廻家の当主を育て導くために。
そして、数百年閉ざされた異界との道を開ける「古廻の者」が現れるまで、悠久の時を静かに待っていたのだった。
そしてついにその願いを叶える一人の男が現れる。
これまで如何様にしても異超門は開かず、異世界へ残した「悔い」を取り除く事が出来るかもしれないチャンスに恵まれた。
だが〆を始め、今いる三兄妹はそれを強要するつもりは無かった。
ただ流が異世界を楽しみ、それに満足したら店の入り口の扉は開くのだと、三人は知っていたから楽観視していた。
そう、これまで「古廻家の者に仇なす存在」は、あの時を境に消え失せたのだから。
だから「もうあの仇成す物は滅んだのかもしれない」と思ってしまった。
しかしそんな些細な願いも『憚り者』がまたしても奪って行ってしまった事に、〆は無論、壱も参も内心穏やかではいられなかった。
「フム。執事の件は承った。やはり鉾鈴が流様を呼んだのは、憚り者が動き出したからと考えるべきだろう」
「壱:せやな、僕としては流様には楽しくやって欲しかったんやが、こうなっては仕方ないわ」
「では壱の情報通りならば、ダンジョンにあの二人がいるはずです。早急に『討伐』して流様のお力になりなさい」
「壱:ちょ、待ちぃな。僕らが討伐するんかいな?」
「それが何か? ……燃やしますよ?」
恐ろしい事をさらっと言う〆に、流石の壱も言葉を失い丸投げする。
「壱:……なんか言うたれ、参」
「フム。妹は流様の事となると、いささかダメな娘になるのだと初めて知ったよ。おっと! そう睨むな。まあ、確かに我らで向かえば話は早かろう。しかし現状では、どうしても『鍵鈴の印』を、流様が手に入れなくていけない状況になったのは分かるな?」
〆は「ふぅ~」とため息を吐くと、それに同意する。
「私を馬鹿な子呼ばわりは解せませんが、まあ『解せませんが』それは分かっていますよ。ただ……少しでもご苦労をお掛けしたく無かっただけですよ。それに忌々しい『理』がありますしね」
大事な事だからと、二度言った〆に二人は冷や汗を流す。
その後、今後の打ち合わせをしながら時間は過ぎて行った。
途中因幡が何度か様子を見に来たが、状態は変わらず、流が目覚める時まで、三人は傍に控えていたのだった。
◇◇◇
(んあ……ここはどこだ? 夢……なのか?)
流は『憚り者』の妖力にあてられて気絶をした後、不思議な空間に来ていた。
周囲は厚い霧に覆われているが、どこか懐かしい滝や、川。そして岩山や大木が鬱蒼と茂る森がそこに広がっていた。
(でもここは見たことがあるぞ……あ! 思い出した、昔ジジイと修行した場所だ!!)
そう流が独り言ちると、突然頭上に激痛が走る。
後ろを見るとそこには、六十代ほどの白髪の老人が居た。
その男は眼光鋭く、口ひげを綺麗に整え、六十代とは思えない体つきをしている。
「馬鹿者が!! 誰がジジイじゃ!! この大馬鹿者め!! 御爺様と呼ばんか!!」
(なッ!? ジジイ! どうしてここに――アイダッ)
またゲンコツが降って来るのを、流は避ける事も出来ずに食らってしまう。
「こん未熟者めが、だから大馬鹿者と言うんじゃ。しかし流よ、ここに来たと言う事は、おんし……得体のしれない化け物と遭うたな?」
(そ、そうなんだよ! ジジ――御爺様は知ってるのか? 今、俺がどこにいるか、何をしているかって事も?)
「まあ、ある程度はな。おんし異界骨董屋さんにおるのだろう? そして…………門を超えた、か」
そう言うと流の祖父は天を仰ぐ。その眼には涙が溜まっており、堪え切れずにその瞳から決壊する。
(ジ、御爺様、どうしたんだよ!? え? これが噂に聞く鬼の霍乱ってや――アイダッ)
「馬鹿者め。そんなんだから未熟なのじゃよ……」
そう言うと祖父は流れを抱きしめる。
(な!? どうしたってんだよ、御爺様?)
「黙っとれい。流よ、これから話す事を良く聞いておくれ」
そう言うと祖父は、流の横にある石の上に腰を落とす。
「まず何処から話した物か……。よいか、今から話す事は全て真実。そしてこれから予測する事も夢、幻ではない」
(何だか仰々しいな……それ程、か?」
「そうだ。以前に我らの祖先の事を話した事があったな?」
(ああ、武門の出だとか何とかってやつだろ)
「うむ、その一族の名を『鍵鈴の一族』と言う。家として滅んだのは今から三百年ほど前じゃが、わし等がその子孫になる」
その言葉を聞いた流は、背中に嫌な汗が噴き出る。それはここに来る原因になった、存在を思い出して……。
三兄妹は代々の古廻家の当主に仕えて来た。それはこの「異怪骨董やさん」の守護者としての役割はむろん、新たな古廻家の当主を育て導くために。
そして、数百年閉ざされた異界との道を開ける「古廻の者」が現れるまで、悠久の時を静かに待っていたのだった。
そしてついにその願いを叶える一人の男が現れる。
これまで如何様にしても異超門は開かず、異世界へ残した「悔い」を取り除く事が出来るかもしれないチャンスに恵まれた。
だが〆を始め、今いる三兄妹はそれを強要するつもりは無かった。
ただ流が異世界を楽しみ、それに満足したら店の入り口の扉は開くのだと、三人は知っていたから楽観視していた。
そう、これまで「古廻家の者に仇なす存在」は、あの時を境に消え失せたのだから。
だから「もうあの仇成す物は滅んだのかもしれない」と思ってしまった。
しかしそんな些細な願いも『憚り者』がまたしても奪って行ってしまった事に、〆は無論、壱も参も内心穏やかではいられなかった。
「フム。執事の件は承った。やはり鉾鈴が流様を呼んだのは、憚り者が動き出したからと考えるべきだろう」
「壱:せやな、僕としては流様には楽しくやって欲しかったんやが、こうなっては仕方ないわ」
「では壱の情報通りならば、ダンジョンにあの二人がいるはずです。早急に『討伐』して流様のお力になりなさい」
「壱:ちょ、待ちぃな。僕らが討伐するんかいな?」
「それが何か? ……燃やしますよ?」
恐ろしい事をさらっと言う〆に、流石の壱も言葉を失い丸投げする。
「壱:……なんか言うたれ、参」
「フム。妹は流様の事となると、いささかダメな娘になるのだと初めて知ったよ。おっと! そう睨むな。まあ、確かに我らで向かえば話は早かろう。しかし現状では、どうしても『鍵鈴の印』を、流様が手に入れなくていけない状況になったのは分かるな?」
〆は「ふぅ~」とため息を吐くと、それに同意する。
「私を馬鹿な子呼ばわりは解せませんが、まあ『解せませんが』それは分かっていますよ。ただ……少しでもご苦労をお掛けしたく無かっただけですよ。それに忌々しい『理』がありますしね」
大事な事だからと、二度言った〆に二人は冷や汗を流す。
その後、今後の打ち合わせをしながら時間は過ぎて行った。
途中因幡が何度か様子を見に来たが、状態は変わらず、流が目覚める時まで、三人は傍に控えていたのだった。
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(んあ……ここはどこだ? 夢……なのか?)
流は『憚り者』の妖力にあてられて気絶をした後、不思議な空間に来ていた。
周囲は厚い霧に覆われているが、どこか懐かしい滝や、川。そして岩山や大木が鬱蒼と茂る森がそこに広がっていた。
(でもここは見たことがあるぞ……あ! 思い出した、昔ジジイと修行した場所だ!!)
そう流が独り言ちると、突然頭上に激痛が走る。
後ろを見るとそこには、六十代ほどの白髪の老人が居た。
その男は眼光鋭く、口ひげを綺麗に整え、六十代とは思えない体つきをしている。
「馬鹿者が!! 誰がジジイじゃ!! この大馬鹿者め!! 御爺様と呼ばんか!!」
(なッ!? ジジイ! どうしてここに――アイダッ)
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「こん未熟者めが、だから大馬鹿者と言うんじゃ。しかし流よ、ここに来たと言う事は、おんし……得体のしれない化け物と遭うたな?」
(そ、そうなんだよ! ジジ――御爺様は知ってるのか? 今、俺がどこにいるか、何をしているかって事も?)
「まあ、ある程度はな。おんし異界骨董屋さんにおるのだろう? そして…………門を超えた、か」
そう言うと流の祖父は天を仰ぐ。その眼には涙が溜まっており、堪え切れずにその瞳から決壊する。
(ジ、御爺様、どうしたんだよ!? え? これが噂に聞く鬼の霍乱ってや――アイダッ)
「馬鹿者め。そんなんだから未熟なのじゃよ……」
そう言うと祖父は流れを抱きしめる。
(な!? どうしたってんだよ、御爺様?)
「黙っとれい。流よ、これから話す事を良く聞いておくれ」
そう言うと祖父は、流の横にある石の上に腰を落とす。
「まず何処から話した物か……。よいか、今から話す事は全て真実。そしてこれから予測する事も夢、幻ではない」
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