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第四章:凶賊と、人類最高の【ざまぁ】はこちらです
107:私はあの日の絶望を忘れない
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「へえ……じゃあそのカレリナは、ゴブリンをおびき寄せるようなマヌケだったと?」
「そうだ! なぜかは知らないが、カレリナの所へとゴブリンが一直線で向かっていたのが見えた。きっと体臭でも酷いからじゃないのかと思う」
「だ、そうだが?」
その時だった。領兵の中から頭からフードを被った人物が走り出て来て、カワードへ思いっきり飛び蹴りを食らわす。
「グアッ!?」
「この大嘘吐き!! 誰が体臭が酷いですって!? 私はそんなに臭くないわよ!!」
カワードは蹴られた衝撃で転倒し、その蹴った相手を呆然と見上げる。
しかし流は思った……「そんなに」ってどんな感じなのだろうと……。
そんなくだらない事を考えていると、カワードが腕の力だけで背後へと後ずさる。
「カ……カレリナ? な、なぜお前がここにいる……」
「なぜですって!? お前が私を罠に嵌めた後で、そこにいるナガレ様に助けていただいたからよ!!」
「…………は?」
カワードを蹴った人物、それは流が以前ゴブリンの集落で助けた村娘だった。
「マヌケ面してんじゃないわよ!!」
カレリナは呆然としているカワードの顔面を、思いっきり踏み抜く。
「ヴォポッ――」
鼻の骨が折れたのか、ヒドイ曲がり方をしながら蛇口をひねったように鼻血を出し、うずくまるカワードを踏み超えながら三人は再開する。
「リリアン、レイナ!!」
「「カレリナ!!」」
三人は抱き合い無事を心から喜ぶ。
「本当に無事だったんだな……」
「ええ、本当に奇跡的に助かったのよ。もう駄目だと何度も思ったけどね」
「カレリナお姉ちゃん! 本当に無事でよかった……よかったよぅ」
「レイナ……こんな危険な所まで、私のためにありがとう」
三人は泣きながらがっしりと抱擁する。
だが、その感動の再開を邪魔する無粋な男が叫ぶ。
「何でお前が生きている!! 凄く大きいゴブリンにさらわれたろ!!」
「ウルサイ、この卑怯者のゴミ虫野郎! 丁度いいから、リリアンもレイナもあの時何があったのか聞いて」
姉妹はカレリナから離れると、コクリと頷いた。
「あれは私がナガレ様に助けていただく二日前だったわ――」
カレリナは苦虫をゆっくりと、それは〝ニヂャリ〟と噛みしめたような表情で語りだす。
◇◇◇
「はぁ~、無いなぁ……リリアンの誕生日に妖精の息吹をあげるなんて言っちゃったけど、簡単には見つからないよね……」
神隠しの森と呼ばれる場所の外縁部、危険度はそんなに高くない場所で、リリアンは妖精がいる場所にあると言う鉱石「妖精の息吹」を探していた。
「ああんもう! 一体どこにあるのよ……はぁ」
その時だった、遠くで獣の遠吠えがする。
「え? こんな場所に狼? いや……違うわね……あれはもしかしたら」
カレリナは身の危機を感じて身を隠す事とする。
何処か丁度いい場所が無いかと考えていると、近くにあった大きな木の上に人が入れそうな洞があったのを思い出す。
「あそこなら熊でもない限り、登って来れないし安心ね」
幸いカレリナは木登りが得意であった。それに加えて大木でも珍しい形の木で、登る足場として十分な凹凸があった。
「うん、あれならイケるわ!」
木登りの最中、遠吠えのした方角を見ると、そこには信じられない者達が蠢いていた。
「嘘、あれはゴブリン!? しかも大きいのが二匹もいるわ……しかも一匹は形からして違う、人間が大きくなったように見える。まさか……し、酋長なの? 嘘!」
カレリナは即座に登り、洞の中へと身を隠しジっと身を潜める。
幸いにしてゴブリン達はカレリナの存在に気が付いていないようで、カレリナの洞穴の少し離れた反対方向にいた。
気配でそれを感じたカレリナは、恐怖心より安堵感が勝り今後の事を考え始める。
(このままやり過ごして、一刻も早く村へ帰って皆に知らせないと)
その時だった、突如森に「指笛」の音が響きわたる。
『ピィーーーーー! ピィィーーーーー!! ピピピュィ~!!』
(え!? 何? 誰かいるの?)
「グガ!? オイ、オ前、見テコイ。誰カいタラ、ココ連レテコイ!」
「ギャギャ!」
(やだ! 話してる。やっぱり酋長なんだわ……怖い……助けてリリアン!)
ゴブリンの気配が足元でするが、上には気が付いていないようだった。
カレリナがホッとした次の瞬間――。
〝コーーーーーーン!!〟
静寂の森に響きわたる、こもった反響音が木霊する。それは人が入れるだけの珍しい洞穴が災いして、小さな石ころなのにとても大きい音であった。
「ヒィッ! な、何で石が洞穴に飛んで来るの!? ……え? カワード?」
洞穴から外を見ると、遠くでカワードが身を隠しながらこちらへ手を振っているのが見えた。
しかし助ける素振りは無く、むしろ「さ・よ・う・な・ら♪」と言うゼスチャーで、その顔は嫌らしい笑みをしていた。
その顔はとても人とは思えず、悪魔が乗り移ったかのような絶望を撒きちらす。
思わず穴から乗り出して、カワードを確認してしまうカレリナ。そこへ容赦ない追撃がカワードから投擲される。
二度目の洞穴から響き渡る乾いた反響音。鈍感なゴブリンも思わず上を見ると、驚愕の表情のカレリナがそこにいた――。
「そうだ! なぜかは知らないが、カレリナの所へとゴブリンが一直線で向かっていたのが見えた。きっと体臭でも酷いからじゃないのかと思う」
「だ、そうだが?」
その時だった。領兵の中から頭からフードを被った人物が走り出て来て、カワードへ思いっきり飛び蹴りを食らわす。
「グアッ!?」
「この大嘘吐き!! 誰が体臭が酷いですって!? 私はそんなに臭くないわよ!!」
カワードは蹴られた衝撃で転倒し、その蹴った相手を呆然と見上げる。
しかし流は思った……「そんなに」ってどんな感じなのだろうと……。
そんなくだらない事を考えていると、カワードが腕の力だけで背後へと後ずさる。
「カ……カレリナ? な、なぜお前がここにいる……」
「なぜですって!? お前が私を罠に嵌めた後で、そこにいるナガレ様に助けていただいたからよ!!」
「…………は?」
カワードを蹴った人物、それは流が以前ゴブリンの集落で助けた村娘だった。
「マヌケ面してんじゃないわよ!!」
カレリナは呆然としているカワードの顔面を、思いっきり踏み抜く。
「ヴォポッ――」
鼻の骨が折れたのか、ヒドイ曲がり方をしながら蛇口をひねったように鼻血を出し、うずくまるカワードを踏み超えながら三人は再開する。
「リリアン、レイナ!!」
「「カレリナ!!」」
三人は抱き合い無事を心から喜ぶ。
「本当に無事だったんだな……」
「ええ、本当に奇跡的に助かったのよ。もう駄目だと何度も思ったけどね」
「カレリナお姉ちゃん! 本当に無事でよかった……よかったよぅ」
「レイナ……こんな危険な所まで、私のためにありがとう」
三人は泣きながらがっしりと抱擁する。
だが、その感動の再開を邪魔する無粋な男が叫ぶ。
「何でお前が生きている!! 凄く大きいゴブリンにさらわれたろ!!」
「ウルサイ、この卑怯者のゴミ虫野郎! 丁度いいから、リリアンもレイナもあの時何があったのか聞いて」
姉妹はカレリナから離れると、コクリと頷いた。
「あれは私がナガレ様に助けていただく二日前だったわ――」
カレリナは苦虫をゆっくりと、それは〝ニヂャリ〟と噛みしめたような表情で語りだす。
◇◇◇
「はぁ~、無いなぁ……リリアンの誕生日に妖精の息吹をあげるなんて言っちゃったけど、簡単には見つからないよね……」
神隠しの森と呼ばれる場所の外縁部、危険度はそんなに高くない場所で、リリアンは妖精がいる場所にあると言う鉱石「妖精の息吹」を探していた。
「ああんもう! 一体どこにあるのよ……はぁ」
その時だった、遠くで獣の遠吠えがする。
「え? こんな場所に狼? いや……違うわね……あれはもしかしたら」
カレリナは身の危機を感じて身を隠す事とする。
何処か丁度いい場所が無いかと考えていると、近くにあった大きな木の上に人が入れそうな洞があったのを思い出す。
「あそこなら熊でもない限り、登って来れないし安心ね」
幸いカレリナは木登りが得意であった。それに加えて大木でも珍しい形の木で、登る足場として十分な凹凸があった。
「うん、あれならイケるわ!」
木登りの最中、遠吠えのした方角を見ると、そこには信じられない者達が蠢いていた。
「嘘、あれはゴブリン!? しかも大きいのが二匹もいるわ……しかも一匹は形からして違う、人間が大きくなったように見える。まさか……し、酋長なの? 嘘!」
カレリナは即座に登り、洞の中へと身を隠しジっと身を潜める。
幸いにしてゴブリン達はカレリナの存在に気が付いていないようで、カレリナの洞穴の少し離れた反対方向にいた。
気配でそれを感じたカレリナは、恐怖心より安堵感が勝り今後の事を考え始める。
(このままやり過ごして、一刻も早く村へ帰って皆に知らせないと)
その時だった、突如森に「指笛」の音が響きわたる。
『ピィーーーーー! ピィィーーーーー!! ピピピュィ~!!』
(え!? 何? 誰かいるの?)
「グガ!? オイ、オ前、見テコイ。誰カいタラ、ココ連レテコイ!」
「ギャギャ!」
(やだ! 話してる。やっぱり酋長なんだわ……怖い……助けてリリアン!)
ゴブリンの気配が足元でするが、上には気が付いていないようだった。
カレリナがホッとした次の瞬間――。
〝コーーーーーーン!!〟
静寂の森に響きわたる、こもった反響音が木霊する。それは人が入れるだけの珍しい洞穴が災いして、小さな石ころなのにとても大きい音であった。
「ヒィッ! な、何で石が洞穴に飛んで来るの!? ……え? カワード?」
洞穴から外を見ると、遠くでカワードが身を隠しながらこちらへ手を振っているのが見えた。
しかし助ける素振りは無く、むしろ「さ・よ・う・な・ら♪」と言うゼスチャーで、その顔は嫌らしい笑みをしていた。
その顔はとても人とは思えず、悪魔が乗り移ったかのような絶望を撒きちらす。
思わず穴から乗り出して、カワードを確認してしまうカレリナ。そこへ容赦ない追撃がカワードから投擲される。
二度目の洞穴から響き渡る乾いた反響音。鈍感なゴブリンも思わず上を見ると、驚愕の表情のカレリナがそこにいた――。
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