日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第四章:凶賊と、人類最高の【ざまぁ】はこちらです

112:けものの本気、ふれんずとの別れ

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「先日は助かったよ。それでな、お前が疲れない範囲でいいから、全力で町まで戻ってくれないか?」
「……マママ?」
「落ちないか心配だって? そんなに早く走れるの?」
「……マ~」
「マジかよ! ならそれで行ってくれないか?」
「……マ、マママ!!」

 ラーマンは一瞬前足を下げると、猫が伸びるような姿勢になる。
 そして―― 

「うわああああ!? 馬より早いって言ってたけどーー!! 早すぎるううう」

 ラーマンは馬より速いスピードで走る。時速にしたら百キロ位出ているんじゃないだろうかと思えるスピード感で、風が顔に張り付き息が苦しい。

「うっそだろ……ラーマンってあんなに早く走れるものなのか? ってそれよりナガレだ! あれで振り落とされないのかよ! 鞍と鐙はスゲーな!!」

 流は鞍に付けた、取っ手を大きくしたような物に必死にしがみ付く。

「マ……ママ~?」
「え゛!? もっとスピ―ド出せるの? きょ、今日の所はこの位でヨロシク……」
「……マ!」

 馬と違いラーマンのしなやかな体のお陰か、振動も然程無く草原をつき走る。

「!! ラ、ラーマン! 川があるぞ!?」
「……マママ」
「ええええ!? 行っちゃうの~!?」

 ラーマンは十五メートル程の川幅に向けて疾走する。
 川には大きめの岩が点在する場所があり、そこへ向けてジャンプする。

「うわああ! と、飛んだ!?」

 器用に岩の頭を蹴り、次の岩へとジャンプするラーマン。
 背中の流は体の一部分が〝ヒュン〟とする感覚に、顔を引きつらせながらもラーマンへしがみ付く。

 無事に川を渡り切ったラーマンはそのまま森の中へと突っ込む!

「ラララ、ラーマン! 森・森ぃぃぃ!」
「……マ」
「大丈夫だって!? ほ、本当か? 信じるからな!!」
「マママ!!」

 ほぼ速度を落とさないで突っ込むラーマン。
 背の高い木が生い茂るエリアで、枝が太く大きい森が目の前に迫る。

「……ラーマンって忍者だったんだな……」

 ラーマンは速度を維持して、前方に迫る太い幹に右足で掴んだと思うと、そのまま上に飛び上がり、枝の上をジャンプして渡る。

「もうどうにでもな~れ~」

 流は死んだ目でラーマンへとしがみ付くと、そのまま森の奥へと消えて行った……。


◇◇◇


 流が必死でラーマンにしがみ付いている頃、流の幽霊屋敷では参が三階の窓辺から夕日が落ちるのを見ていた。
 その様子は何かを憂うようでもあり、憐れむような視線でもあった。
 落日が迫る「自分達の時間」に、背後からタイミングを見計らったかのような一つの気配が現れる。

「参様、準備が整ったと報告が届きました」
「セバス……フム。ではお客様のお出迎えを丁重にな」
「はい、心得ております」

 参は一瞥もせずにセバスへと指示を出す。
 それに答えるようにセバスは丁寧に参へ一礼すると、そこにいなかったかのように存在が薄くなり消え失せる。

「そろそろ妹が来る頃ですが……。その前に片が付けば一番理想ですな」

 外では何時もと変わらない、穏やかな景色が広がっている。
 やがて日が完全に落ち、町が更に活気づいた頃に異変が起こる。

「フム、あれは火事ですかな? とすると、町の警備隊をそちらへ回す陽動ですかな。まぁ、小細工はこれ以上はしないでしょう。来るとしたら正面、ですかね」

 参は懐からハンドベルを取り出すと、おもむろに鳴らす。
 すると即座にドアがノックされ、ホワイトブリムが良く似合う金髪のメイドがやって来る。

「フム、今日はお前達の接客姿勢を見るための催しです。存分に『おもてなし』をするように。なお、お客様は正面よりお起こしになると思われます」
「承知いたしました、参様」

 メイドは花の咲くような笑顔で〝にこり〟と微笑むと、丁寧な仕草で参の元を後にする。

「さて、執事とメイド。どちらがお客様を満足させる事が出来ますか少し……そう、ほんの少しですが楽しみですね」
「壱:まったくお前ときたら……愚妹は無論やけど、お前も大概やなぁ。ホンマ僕だけマトモで苦労しますわ、ホンマ」

 突如声がした参の後ろにはいつ間に現れたのか、元々そこにいたかのように壱が浮かんでいた。

「フム、帰ってたのですか。今まで何処で油を安売りしてたのですか?」
「壱:失礼なやっちゃなぁ~、もっと僕を労ってや。こ汚いオッサンに殺される役をしたんやからね」
「あぁ、それは心底お疲れ様と思いますよ。他の者にやらせればいいのに、率先して行う兄上の姿には涙が出ますよ、ホント」
「壱:まったく。僕の弟も妹もマトモなのはいないんかい!!」
「それで首尾は?」
「壱:問題あらへんよ。最初に掴ませた偽金塊の反応を追って行った場所と、僕を襲った輩が逃げ込んだ場所は同じやったからね」
「フム、それは重畳ですね。このまま終わったら乗り込んでもいいのですが……っと、ご到着のようですね」

 闇が町を呑み込んだを見計らうように、屋敷の周辺に湧き出る愚かな黒い影。
 どうやらこれから行われる「接待」をされるお客が到着したようだった。

「壱:おいでなすったわ」
「みたいですね。フム、うちのサーバントのお手並みを拝見ですね」

 わずか数分で正門へと言う場所に、数十人の人影が何処からともなく集まる。
 それは悪意と言う名の感情が滲み出るように、ジットリとした闇がそこにあった。
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