日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第五章:殺盗団を壊滅せよ

126:クチナシの花と名水と

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「さってと、早速入るかな。うさちゃんも入るか?」
「な、何を言っているのですか!? ボクはそんな恥ずかしい事出来ないのです……」
「ははは、言ってみただけだよ。さて、〆……お前は何故脱いでる?」

 見ると〆は帯を解いている所だった。何をしているんだろうと思うが、答えは出ている。だって風呂なんだもの!

「え? 私もご一緒いたしますよ? お背中をお流ししますので」
「……ひとりで出来るからいい」
「酷いです! 私の存在を否定するのですか? あんなに舐る様に私の体を見て楽しんだのに……」
「え~お客人……えっちぃのです」

 因幡がじつに軽蔑する視線を流へと向ける。それに怯んだ流は、手と首を思いっきりふりながら、それを否定するのだが。

「ち、違うぞ因幡! 〆の体は欲情の対象にならない! 何故ならばアレは芸術の域にまで美しい裸体だからだ!!」
「うふふ。なら問題ないじゃないですか?」

 そう言われるとそうなのかも? と一瞬思う。

「いや、ちょっとマテ。お前は恥じらいと言う物をだな……アレ?」
「ほえ? 番頭さんが消えてしまったのです」

 二人が見ている前で〆の存在が朧気になったかと思うと、そのまま消えてしまう。

「消えた……」
「なのです……」
「因幡も不思議生物だけど、〆も不思議ケモ耳だよな……」
「番頭さんだから、何でもありなのです……」

 二人はそんな意味が分からない会話をしてから、流は脱衣所へと向かう。
 真新しいフワリとしたタオルが檜の桶に用意されており、それを持って浴室へと向かう。

「じゃあ、うさちゃん。ここで待っててくれ。何時も待たせて悪いな」
「お客人を待っているのも楽しい時間なのです。ボクを気にしないでゆっくりと入って来てくださいなのです」
「悪いね。それに俺でもいい加減一人でも戻れるぞ?」
「それはそうなのですが、先日の事もあるので一応なのですよ」
「ああ……」

 先日、部外者が入れないはずの異怪骨董やさんで、敵との遭遇を思い出す。

「悪いな、じゃあ行って来るよ。美琴、因幡と待っててくれよ」
「はいなのです! いってらっしゃ~い」

 流はかけ湯をしてから、檜風呂へと向かう。
 すると快活な笑い声が響き渡る。

「わっはっは! 来おったか小僧!」
「わっはっは! 来てやったぞ、たぬ爺!」
「む? 小僧、お主……そうか、小僧もこっち側に来たのだなぁ」
「はは、分かるのか?」
「まあワシも今はこんなんだが、昔は日ノ本で名の知れた|武士(もののふ)じゃったからのう」
「ええ!? 〆に頭が上がらないから、それは意外だな」
「はっはっは。小僧、あの女狐めに敵う者などそうはおるまいよ? お主が例外すぎるのじゃ。普通、あのような態度で接する事は不可能……大抵の者はあの世行きだぞ?」

 そう言われると、壱の無残な姿を思い出し「それは真実」なのだろうと思う。

「確かにそうなんだろうな……〆を始め、ここの人達は俺に本当に良くしてくれる……感謝しかないよ。無論たぬ爺もな」
「はっはっは。そう面と向かって言われると、こそばゆいものじゃな。どれ、今日は何の酒にしようかの?」
「ああ、たぬ爺悪い。今日はこれからまだ戦いがあるんだよ」
「ほほう……うむ、まだ迷いがあるようじゃが、その面構えなら安心じゃな。どれ、なれば風呂に浸かっておれ。良い物を持ってこよう」

 たぬ爺はくるりと背を向け去ってゆく。
 流はその背を見送ると、広い檜風呂へと身を沈める。

「あ゛あ゛あ゛~気持ちいい……」

 仕事に打ち勝ったサラリーマンが、風呂で癒されるような声が思わず出てしまう。
 
 今日あった事を落ち着いて考えて見ると、中々……いや、かなり濃密な時間だったと思い出す。

(カワードとの最後の旅から始まり、殺盗団からリリアンを守りながらの戦闘。そして先生との死闘……考えれば考える程、凄い一日だ。しかもまだ継続中とかな)

 遠くに見える海を見ながら、思わず乾いた笑いが出てしまう。
 そんな乾いた笑いを浮かべていると、たぬ爺が戻って来たようだ。

「待たせたな、これを飲んでみい。日本の名水百選をブレンドし、そこへ霊草を加えた特別な水じゃ。今の小僧には最高の水となろう」
「それは凄いな! 名水百選を一気に飲めるなんて贅沢すぎるだろう」
「じゃろう? しかも汲み上げたばかりの名水ぞ」
「本当に酒ばかりじゃなく、何でも湧き出るんだな」
「うむ、凄いじゃろう?」
「ああ、ありがとう。たぬ爺」

 流は早速受け取った水を飲んでみる。
 その水はひのきの升に入った、なぜかほんのりと薄い青色に発光している。

 水なので味も香りもない、が。霊草と言う謎の草のおかげか、何とも言えない満足感で心が満たされる。
 まるで殺盗団との死闘で失った、良心の呵責を埋めるように……。

 そんな不思議な水を、体が細胞から受け入れているのを感じる流だった。
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