日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第五章:殺盗団を壊滅せよ

137:決戦! オルドラ大使館⑤

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「なるほど、聞いていた容姿と違ったと思ったらそういう訳かよ」

 霧から新たに出て来たのは、先程までの中年で中肉中背の男はすでに無く、キルトから聞いていた通りの容姿になった人物が腕組みをして立っていた。

 その男はガタイの良い体と、スキンヘッドに二匹の蛇が絡まるようなタトゥーが掘られている男だった。
 目じりにはいかにも盗賊の頭目といったような傷があり、肌がテカテカしている程に生気に満ち溢れている色黒の肌が特徴的で、目鼻はゴロリとした印象を受ける。 
 
 その顔は悪辣に齢を重ねること五十程に見えるが、顔年齢に反比例したその若い体は、敵を力でねじ伏せるだけの迫力を周囲に強烈に放つ。

「それで、どうする? お前程の男なら最高幹部として迎え入れるぞ! 俺の右腕となってこの町を支配しようじゃないか? 町の半分をお前にくれてやる、この町の経済規模はそれは凄い、それを半分だ!! 冒険者では一生かかっても稼げない富がお前の物だぞ!?」

「はぁ……さいですか」

 流は気の無い返事でそれに応えながら思う。せめて某魔王様くらい世界の半分って言えよと。

「それにだ! 殺盗団はいいぞ、無論何でもやりたい放題だ! 金も女も権力も思いのままだ!! 名誉が欲しくばくれてやる! 地位がお好みか? ならそれもまとめて持って行け!! どうだ、最高の待遇だろう? これで断る馬鹿はいな――ハァ?」

 その刹那――高原の澄んだ風で、南部鉄の風鈴が揺れたかのような音で〝ティン〟と打ち響く。

 ボルツが両手を広げ、殺盗団の素晴らしさを朗々と語っている最中に視界が〝グルリ〟と回転する。
 その回転はとどまる事を知らず、天井・窓・床・壁・天井・机・ソファーと変わり、最後は自分の体を見上げると同時に、ボルツの意識は消え失せた。

「聞くに堪えん。初伝の抜刀術でも喰らっとけ」
「「キャアアアアアア!?」」

 メイド達が突然の惨劇に悲鳴を上げる。慌てて流は一番端でパニックになっているメイドへと近寄ると「誤認」の効力を停止させる。

「おい、落ち着け。大丈夫だ、お前達には何もしない。だから落ち着け、な?」

 突然現れた流にまたもやパニックに陥りそうになるが、流の優しい瞳と、ゆっくりだが力強い言葉にメイド達は落ち着きを取り戻す。

「ふぅ~。落ち着いたか……お前達を巻き込むつもりは無かったんだが、結果巻き込んでしまった。すまなかったな、怪我は無いか?」

 メイド達は顔を見合わせて無事を確認する。
 やがて無事なのを確認すると、先程一番パニックになっていた右端のメイドが話し出す。

「た、助けてくれますか?」
「ああ、それは約束しよう」
「よかったぁ~」

 メイド達は安堵の表情を浮かべる。
 それを見た流は、ボルツの死体を調べようと近くに寄った時――

 ヒュッボッツ!! ――パキァィィン!!

「グアアッ!? 何だ??」

 流は強い衝撃と、何かが破壊された音に一瞬混乱するが、その原因はすぐに判明した。

「なんだ、お前……? 一体どうやって防いだ?」

 声のする方を見ると、メイド服の胸の部分が自己主張の激しい赤髪の娘がホワイトブリムを投げ捨てながら唾を吐く。

(くッ!? 氷盾の指輪のパッシブが発動したのか? 助かった)

「ハッ! メイドさんなのにそんな事も知らないのか? 俺に聞くなよ恥ずかしい」
「……つくづく舐めたガキだ。いいだろう、世間の厳しさってのを教えてやる。なに、気にするな。授業料はお前の悲鳴と苦痛、そして命で支払ってもらう」

 瞬間赤髪のメイドから紫色の魔力が噴き出す。
 その魔力は徐々に両手に集まり、左右に半透明な紫の蛇が顕現する。

「オイオイ、もしかしてお前がボルツなのか?」
「どうしてそう思う?」
「お前も馬鹿の類か? お前の事が大嫌いな奴が教えてくれたんだよ、『毒蛇のボルツ』って恥ずかしい二つ名をな。見たまんまじゃねーか、ちょっとは捻ったネーミングにしろよ恥ずかしい」
「……シネ」

 ノーモーションから、いきなり右足で蹴りを流の顔へと放つ。

「うぉ!? いきな――ッ」

 蹴りを躱した流は、体勢がのけ反る形になる。

 そこへ追撃とばかりに、ボルツは蹴り上げた右足を床に付ける前に、魔力で空中へ足場を作ったかのように踏みしめ、コマの様に回転しながら左足で流の脇腹へと刈り込むように蹴りを叩き込む。

「ぐぅ!?」
「チッ、浅かったか」

 蹴りを脇腹に入れられた瞬間、流は伸びきって固くなった体勢のまま無理やり背後へと転がる様に飛ぶ。

(やべぇ、油断した! 残りの眼は……いや、偽ボルツですら見抜いたんだ。下手に慣れさせるより、一瞬なら目くらましに使えるはず……ならここは)

 流は起き上がると同時に、因幡謹製の回復薬(紫)を飲み干す。

「オイオイ、ボルツ君は何時からボルツチャンになったんだ? 蹴りも女の子になってるぞ?」
「つくづく舐めたガキだよ、お前はな!!」

(よし、熱くなるタイプと見た。このまま乱してやれば――)
「隙を作れるかも知れない――か?」

 流が頭の中で考えている続きを予言のように言い出すボルツ。

「と、思うだろ? 馬鹿だね、これだからガキは嫌いだよ。考えが浅い浅い」
「……はて? 何を言っているのか分からないな」
「フン、隠すなガキ。オレは伊達に殺盗団の頭目の一人じゃないって事だよ。だからお前みたいなタイプは見て来たよ。腐る程な」
「やだ~。見た目よりおばさん? いや、キット婆さんじゃないですか~」
「コロス!!!!!!」
「ちょ! 激オコ!! さっきの余裕は何処に!?」

 ボルツは左右の拳に纏った蛇へ魔力を注ぐと、そのまま殴りかかる。

「炎蛇拳! 焼かれるような毒に苦しみな!!」
「ご解説ど~も」

 紫色の炎を纏った蛇が無軌道に流へと襲い掛かる。
 流も負けじと美琴でボルツの拳を斬るが、魔力の壁に苛まれて狙い通りに当たらない。
 ボルツも更に激しく流へ攻撃するが、美琴によって全て弾かれる。

 炎の蛇は諦める事を知らないように、執拗に流へ向けて毒牙を正面のあらゆる角度から噛みつき襲い掛かる。
 それを全て美琴で払いのけつつも、美琴でカウンターを決めながら押し返す流。

「シィエヤァァ! 裂傷毒蛇拳!」
「くッ! あぶねぇ!?」

 ボルツは流が微妙にバランスが崩れるように攻撃しながら、その隙に多種な毒蛇拳を切り替えて攻撃するが、ギリギリ流もそれを弾き、カウンターで攻撃する。

 恐ろしく高速な攻防だったが、お互いその場から一歩も動かないと言うありえなさに耐え切れず、床や天井が円形状に崩壊しだす。

「「お前! 何だその武器魔法は!?」」

 そのありえない武器と魔法に困惑して、思わず同時に叫ぶ二人。
 驚くことに、その武器みことは通常で致命傷になるような攻撃を弾き、ボルツの毒蛇拳は美琴ですら斬れないのだから。
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