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第五章:殺盗団を壊滅せよ
140:三姉妹の塗炭 上
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140:三姉妹の塗炭
――百十五年前
三姉妹は「ライア神国」と言う所で生まれた。
その国にある小さな村に姉妹たちは住んでいたが、村を当時有名だった大盗賊団が襲って壊滅させる。
三姉妹は命が助かるが、賊達に捕まり賊達の奴隷にされた所から話は始まる――。
「姉は賊達に気に入られ、賊達の仕事を手伝わされるようになりました」
「つまり盗賊となったと?」
「はい、その通りです。でもそれは私達二人を賊達からこれ以上汚されないため、その魂を守るために仕方なく仕事をしていました。しかし、徐々にですが姉の様子が変貌して行くのが分かりました……あれ程嫌がっていた賊の仕事を楽しそうに始めたのです」
「その原因ってのが、今のお前達がまだ生きている事に関係するんだろう?」
姉妹は驚きの表情で流を見る。
「っ!? どうしてそれを……」
「どうしてって、それだけ生きてるのにその若さと美しさ。尋常じゃないわな」
「確かに……すでに『コレで固定』されているので、すっかり忘れていました」
「固定? 何の事だ?」
「それこそが私達姉妹が現世に留まっている原因なのです」
ミレリアはその訳を話し始める。
「あれは姉が狂いだした頃でした、私達のアジトへ一人の男が現れたのです。その男は賊達や私達へ『魔具』を渡しました……それを使えば大幅な力の向上と、永遠の若さを手に入れられると言うありえない話で」
「また胡散臭い話だな」
「ええ、最初は誰も相手にしませんでした。姉以外は……」
「まさかそれを使ってお前達を何とかしようと?」
「はい、そのまさかでした。きっと藁にもすがる思いだったのでしょう……。ですが胡散臭い魔具は本物でした。それを使用した姉は恐ろしい程の力と、頭の冴えで、賊達を一人残らず始末しました」
流はその話を聞きながら、灰となった姉妹の姉を見る。
「その魔具とは一体?」
「あれは悪魔……そう、悪魔の魔具でした。ナガレさん、申し訳ないのですがあっちに転がっている男、姉の代行者たる男の胸ポケットにある『箱』を持って来てもらえませんか?」
「箱? 分かった」
流は不審に思いながらも、ミレリアが言った箱を探す事にする。
偽ボルツの胸のポケットの中には縦五センチ、横十センチ、深さ三センチ程の長方形の木箱が入っていた。
「それにしても代行者って……っと、これか?」
「はい、それです。そのままそのテーブルの上に置いていただけますか? 因みにその男は姉が直接手を下すのが嫌だったのと、本人が頭目の一人として行動するのが快感だったらしく、お互いの利益が一致した結果の代行者でした」
「あぁ、そう言う事ね」
言われた通り流はテーブルの上に箱を置き、箱を開けてみる。
すると中には石なのか、それに似た何かなのかは不明だったが、硬質な物で出来た人形が二体と、中央には壊れた同じ物が入っていた。
「これは……何かヤバイ気配がするんだが?」
流は観察眼を使い人形を見て見るが、詳細な情報は分からなかった。
ただこの人形は「良くないもの、不吉な物」と言う認識だけは分かった。
「はい、その通りです。それが私達姉妹が取り込まれた『魂の軛』と呼ばれる魔具です……それはとても酷い、最悪の魔具なのです」
ミレリアは当時を思い出したのか、とても辛そうに語り始める。
「姉がその魔具を寄越した男とどのような契約をしたかは知りません、その訳は契約内容を話す事を禁じられていたからで、それも契約の一つだったようです。ただ、長年姉といるうちに分かって来た事もありました。それがその石人形です」
そう言うとミレリアは石人形が入っている箱へと指を近づける。
箱に触れた瞬間、ミレリアの手は「ビシリ」と鞭に打たれたかのような音と共に上へと弾かれた。
「これが私達がその石人形に触れられない訳です」
「なるほど……」
「話を戻します。姉が盗賊を皆殺しにした夜でした。暗闇からその魔具を姉に与えた男が何処からともなく現れたのです、そしてこう言いました。『ハッハァ! 契約は成就された、残りの報酬も支払って貰おうか?』と」
「それは一体?」
「それは私達の『肉体』でした。あの男は私達の肉体を、死の世界と言う場所へ持って行ったのです」
「え!? なんだそりゃ。まるで悪魔じゃないか」
ミレリアが思い出したのか辛そうにしているのを見て、代わりにロッティが話し出す。
「おねーちゃんが辛そうだから、ここからは私が話すね。ナガレさんが言った通り、そいつは悪魔そのものだったんだよ」
「マジかよ! 悪魔とかいるのか!? ファンタジーすぎる……」
自分の執事が何者なのかを知らない流は、驚天動地のファンタジーさに驚く。
そんな流の驚きを尻目に、ロッティは静かに頷くと話を進める。
「多分姉との契約内容は『私達三姉妹の肉体』だと思う。でもボルツお姉ちゃんはそれを知らなかったんだと思うんだ。悪魔が私達を連れ去る時の、取り乱し方は尋常じゃなかったからね。きっと言葉巧みに騙されたんだと思う」
流は思う、悪魔の契約って真実を言わないとだめなんじゃないかと。
だが現実は違うのか、実際ここに被害にあっている姉妹がいる事に、憤りを感じるのだった。
☆*:゚♪+。.☆.+**:゚+。☆彡
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「つまり盗賊となったと?」
「はい、その通りです。でもそれは私達二人を賊達からこれ以上汚されないため、その魂を守るために仕方なく仕事をしていました。しかし、徐々にですが姉の様子が変貌して行くのが分かりました……あれ程嫌がっていた賊の仕事を楽しそうに始めたのです」
「その原因ってのが、今のお前達がまだ生きている事に関係するんだろう?」
姉妹は驚きの表情で流を見る。
「っ!? どうしてそれを……」
「どうしてって、それだけ生きてるのにその若さと美しさ。尋常じゃないわな」
「確かに……すでに『コレで固定』されているので、すっかり忘れていました」
「固定? 何の事だ?」
「それこそが私達姉妹が現世に留まっている原因なのです」
ミレリアはその訳を話し始める。
「あれは姉が狂いだした頃でした、私達のアジトへ一人の男が現れたのです。その男は賊達や私達へ『魔具』を渡しました……それを使えば大幅な力の向上と、永遠の若さを手に入れられると言うありえない話で」
「また胡散臭い話だな」
「ええ、最初は誰も相手にしませんでした。姉以外は……」
「まさかそれを使ってお前達を何とかしようと?」
「はい、そのまさかでした。きっと藁にもすがる思いだったのでしょう……。ですが胡散臭い魔具は本物でした。それを使用した姉は恐ろしい程の力と、頭の冴えで、賊達を一人残らず始末しました」
流はその話を聞きながら、灰となった姉妹の姉を見る。
「その魔具とは一体?」
「あれは悪魔……そう、悪魔の魔具でした。ナガレさん、申し訳ないのですがあっちに転がっている男、姉の代行者たる男の胸ポケットにある『箱』を持って来てもらえませんか?」
「箱? 分かった」
流は不審に思いながらも、ミレリアが言った箱を探す事にする。
偽ボルツの胸のポケットの中には縦五センチ、横十センチ、深さ三センチ程の長方形の木箱が入っていた。
「それにしても代行者って……っと、これか?」
「はい、それです。そのままそのテーブルの上に置いていただけますか? 因みにその男は姉が直接手を下すのが嫌だったのと、本人が頭目の一人として行動するのが快感だったらしく、お互いの利益が一致した結果の代行者でした」
「あぁ、そう言う事ね」
言われた通り流はテーブルの上に箱を置き、箱を開けてみる。
すると中には石なのか、それに似た何かなのかは不明だったが、硬質な物で出来た人形が二体と、中央には壊れた同じ物が入っていた。
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ただこの人形は「良くないもの、不吉な物」と言う認識だけは分かった。
「はい、その通りです。それが私達姉妹が取り込まれた『魂の軛』と呼ばれる魔具です……それはとても酷い、最悪の魔具なのです」
ミレリアは当時を思い出したのか、とても辛そうに語り始める。
「姉がその魔具を寄越した男とどのような契約をしたかは知りません、その訳は契約内容を話す事を禁じられていたからで、それも契約の一つだったようです。ただ、長年姉といるうちに分かって来た事もありました。それがその石人形です」
そう言うとミレリアは石人形が入っている箱へと指を近づける。
箱に触れた瞬間、ミレリアの手は「ビシリ」と鞭に打たれたかのような音と共に上へと弾かれた。
「これが私達がその石人形に触れられない訳です」
「なるほど……」
「話を戻します。姉が盗賊を皆殺しにした夜でした。暗闇からその魔具を姉に与えた男が何処からともなく現れたのです、そしてこう言いました。『ハッハァ! 契約は成就された、残りの報酬も支払って貰おうか?』と」
「それは一体?」
「それは私達の『肉体』でした。あの男は私達の肉体を、死の世界と言う場所へ持って行ったのです」
「え!? なんだそりゃ。まるで悪魔じゃないか」
ミレリアが思い出したのか辛そうにしているのを見て、代わりにロッティが話し出す。
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「マジかよ! 悪魔とかいるのか!? ファンタジーすぎる……」
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そんな流の驚きを尻目に、ロッティは静かに頷くと話を進める。
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