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第五章:殺盗団を壊滅せよ
141:三姉妹の塗炭 下
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「悪魔って嘘を付いたら契約できないって聞いたが?」
「さぁ、そこまでは分かんないんだけどね。でも結果的に私達三姉妹の肉体は、どこか知らない場所に今でもあるはずなんだよね」
「それで何が目的でその悪魔はお前達にこんな事を?」
「それは……」
ロッティは箱を見つめながら話す。
「私達の魂の苦痛を味わっていると言っていたよ、その人形を介してね。だから私達ではそれを破壊するどころか、触る事すら出来ないの。ボルツお姉ちゃんが契約が切れたと、さっき言ってたからもしかしてと思ったけど、私達はまだ続くんだね……」
「だからボルツの人形だけ壊れてるのか」
箱の中で人形が二つに割れているのを見て、これがボルツなんだろうと思う。
「そして肉体が連れ去れた私達は、この世で活動が出来るようにあの時のまま、悪魔の力で固定した偽の肉体を与えられ、その中に魂を込められたんだ。その魂の半分が人形に入っているとも言ってたかな……そしてボルツお姉ちゃんが、どうして今でも殺盗団とか言う酷い事をしていたかと言うと、多分それも契約の一つなんだろうと思う。悪魔が最後に現れた夜、ボルツお姉ちゃんに『もう凶悪の呪は必要ありませんね、明日から自分で苦悶しながら悪事を重ねなさい。あぁそうだ。盗賊稼業だけは続けなさいよ』と言って嗤っていたから……」
流は話を咀嚼するように、じっくりと考えなら整理する。
「……なるほどね。つまりその悪魔との契約内容に『素で苦しむ姿』みたいなのがあったのかもな。そして盗賊稼業も強制した、と。その盗賊稼業見てお前達二人が苦しめば、さらにボルツの苦痛は大きくなるって感じか?」
「うん、多分そうだと思うよ。私達が何も出来ない事の無力感を餌にしてたんじゃないかと思う」
二人はとても苦しそうに頷き、その目からは涙が零れるのだった。
「するとお前達二人は悪事を働く事は無かったって訳か?」
「うん、そう。それはボルツお姉ちゃんが一人で……全部背負ってくれてたんだ……そっか、だから私達の契約は切れていないんだ。この辛い気持ちを永遠に吸うために……」
「ロッティ……確かにそうね、私達は決して被害者なんかじゃない。姉が指示した悪事を止める事もせず、ずっと傍観してたんだからね。それは立派な犯罪者よ」
姉妹は覚悟を決めたように流へお願いする。
「ナガレさん、お願いがあります。その剣で私達二人と人形を破壊してください! 今は何も悪事を働く事はありませんが、もしかしたら悪魔がまた来て、姉にしたように強制的に何かをさせるかもしれませんから……」
「私もお願い! もうこれ以上悪い事を見るのもするのも嫌なんだ。殺盗団の知っている事を全部話したら、その後で破壊して!」
流は溜息を吐いて姉妹へと諭す。
「お前らなぁ、甘ったれるんじゃねーよ。自分の始末くらい自分でしろ。それにな、せっかくの不死の体だ。その特性を活かして、これまで悪事に加担していた反省を元に、世間様の手助けをしろ。そして何よりボルツに言われたろ、生きろって?」
「でも……これ以上生きていたら全ての人に申し訳なくて……」
「だからそれを少しでも償えって事だよ、何もしないで消えるより遥かにマシだろう?」
「それは……」
「そうだよね、ミレリアお姉ちゃん。何が出来るか分からないけど、精一杯何かを返して行こうよ!」
「ロッティ……ええそうね。やってみましょう、こんな事で見殺しにした人達が許してくれるなんて到底思わないけど、やれるだけやってみましょう」
奮い立つ姉妹を見ながら、流は最大の懸念を考える。
(とは言え、こいつらは悪魔に生殺与奪を握られている。さてどうしたものか……)
「う~ん……だけどお前達はその、アレだ。悪魔と契約していないだろう? どうしてこの状態で苦痛を吸う事が出来るんだろうな?」
「それは……」
「言われてみればそうだよね……」
三人は考えてみるが答えは出ない。
そんな時、美琴が流へ何かを言う。
『…………』
「そうなのか? すると近くに……」
『…………』
「なるほどな。んじゃ優良物件になりそうな二人のために、アフターサービスってヤツでもしますかねぇ」
突然流が独り言を話し始めたので困惑する二人。
「あ、あのナガレさん?」
「どうしちゃったの?」
「あぁ すまん。ちょっと見えない人とお話をしてたんだよ」
「ナガレさん、お姉ちゃんに殴られて……」
「は、早くお医者さんへ行かないと!?」
「チョット待てぃ! 俺を可哀そうな人を見る目で見るんじゃあない!!」
「「え!? 違うんですか!?」」
「違うわ! 全くお前らは……そうじゃないんだよ、まぁ魔具のような物と話してただけだから気にするな」
「「良かったぁ」」
姉妹は安堵の声を上げ、流の顔を見上げる。
「そんな訳でこれから少し後片付けをしてくるから、お前達は正面の門の所で待っててくれ。出来るだけ屋敷から離れた場所にいた方がいい」
「えっと……後片付けですか?」
「ああ、もしかしたらお前達の悩みを解決出来るかもしれない」
「「え!?」」
思わず驚きの声を上げる二人。
「まぁ、どうなるかはちょっと不明なんだが、それなりに期待しててくれ。じゃあな」
「は、はい。お気を付けて!」
「ナガレさん無理しないでね!」
「ありがとよ。あ、それとお前達の人形は俺が預かっておくけどいいか?」
「ええ、私達は持てませんから」
流は頷くと木箱をアイテムバッグに入れて入口へと向かった。
「っと、これを正門の入口に転がっているカエルの折紙に見せてくれ」
アイテムバッグから取り出した紙に、日本語で「保護してくれ」と書いて渡す流。
「これは……?」
「え、カエルの折紙って何?」
「まあ行けば分かるさ、じゃあ屋敷から離れているんだぞ?」
「分かりました、じゃあまた後程」
「流さんも気を付けてね」
流が片手を上げながら「ああ」と言うと、そのまま扉から出て行く姿を見送りながら姉妹は姉だった物を見る。
「姉さん……これからどうなるか分からないけど、少しでも罪滅ぼしをしてみますね」
「お姉ちゃんの分も頑張るね。だから安心してね。ボルツお姉ちゃん、無事に先生と会えたかな?」
「そうね、きっと『ボルツ先生』と今頃会って、叱られているんじゃないかしらね」
「ふふ、なら今頃は百列蹴りされているね『シャーロット!』悪魔何かに頼りやがって! ってね」
姉妹は涙を流しながら思い出話をする。ボルツ先生に何時も叱られていた姉を思い出すように……
その後ミレリアとロッティは壁にあった小さな花瓶に、姉だった灰を詰めてから屋敷を後にする。
「さぁ、そこまでは分かんないんだけどね。でも結果的に私達三姉妹の肉体は、どこか知らない場所に今でもあるはずなんだよね」
「それで何が目的でその悪魔はお前達にこんな事を?」
「それは……」
ロッティは箱を見つめながら話す。
「私達の魂の苦痛を味わっていると言っていたよ、その人形を介してね。だから私達ではそれを破壊するどころか、触る事すら出来ないの。ボルツお姉ちゃんが契約が切れたと、さっき言ってたからもしかしてと思ったけど、私達はまだ続くんだね……」
「だからボルツの人形だけ壊れてるのか」
箱の中で人形が二つに割れているのを見て、これがボルツなんだろうと思う。
「そして肉体が連れ去れた私達は、この世で活動が出来るようにあの時のまま、悪魔の力で固定した偽の肉体を与えられ、その中に魂を込められたんだ。その魂の半分が人形に入っているとも言ってたかな……そしてボルツお姉ちゃんが、どうして今でも殺盗団とか言う酷い事をしていたかと言うと、多分それも契約の一つなんだろうと思う。悪魔が最後に現れた夜、ボルツお姉ちゃんに『もう凶悪の呪は必要ありませんね、明日から自分で苦悶しながら悪事を重ねなさい。あぁそうだ。盗賊稼業だけは続けなさいよ』と言って嗤っていたから……」
流は話を咀嚼するように、じっくりと考えなら整理する。
「……なるほどね。つまりその悪魔との契約内容に『素で苦しむ姿』みたいなのがあったのかもな。そして盗賊稼業も強制した、と。その盗賊稼業見てお前達二人が苦しめば、さらにボルツの苦痛は大きくなるって感じか?」
「うん、多分そうだと思うよ。私達が何も出来ない事の無力感を餌にしてたんじゃないかと思う」
二人はとても苦しそうに頷き、その目からは涙が零れるのだった。
「するとお前達二人は悪事を働く事は無かったって訳か?」
「うん、そう。それはボルツお姉ちゃんが一人で……全部背負ってくれてたんだ……そっか、だから私達の契約は切れていないんだ。この辛い気持ちを永遠に吸うために……」
「ロッティ……確かにそうね、私達は決して被害者なんかじゃない。姉が指示した悪事を止める事もせず、ずっと傍観してたんだからね。それは立派な犯罪者よ」
姉妹は覚悟を決めたように流へお願いする。
「ナガレさん、お願いがあります。その剣で私達二人と人形を破壊してください! 今は何も悪事を働く事はありませんが、もしかしたら悪魔がまた来て、姉にしたように強制的に何かをさせるかもしれませんから……」
「私もお願い! もうこれ以上悪い事を見るのもするのも嫌なんだ。殺盗団の知っている事を全部話したら、その後で破壊して!」
流は溜息を吐いて姉妹へと諭す。
「お前らなぁ、甘ったれるんじゃねーよ。自分の始末くらい自分でしろ。それにな、せっかくの不死の体だ。その特性を活かして、これまで悪事に加担していた反省を元に、世間様の手助けをしろ。そして何よりボルツに言われたろ、生きろって?」
「でも……これ以上生きていたら全ての人に申し訳なくて……」
「だからそれを少しでも償えって事だよ、何もしないで消えるより遥かにマシだろう?」
「それは……」
「そうだよね、ミレリアお姉ちゃん。何が出来るか分からないけど、精一杯何かを返して行こうよ!」
「ロッティ……ええそうね。やってみましょう、こんな事で見殺しにした人達が許してくれるなんて到底思わないけど、やれるだけやってみましょう」
奮い立つ姉妹を見ながら、流は最大の懸念を考える。
(とは言え、こいつらは悪魔に生殺与奪を握られている。さてどうしたものか……)
「う~ん……だけどお前達はその、アレだ。悪魔と契約していないだろう? どうしてこの状態で苦痛を吸う事が出来るんだろうな?」
「それは……」
「言われてみればそうだよね……」
三人は考えてみるが答えは出ない。
そんな時、美琴が流へ何かを言う。
『…………』
「そうなのか? すると近くに……」
『…………』
「なるほどな。んじゃ優良物件になりそうな二人のために、アフターサービスってヤツでもしますかねぇ」
突然流が独り言を話し始めたので困惑する二人。
「あ、あのナガレさん?」
「どうしちゃったの?」
「あぁ すまん。ちょっと見えない人とお話をしてたんだよ」
「ナガレさん、お姉ちゃんに殴られて……」
「は、早くお医者さんへ行かないと!?」
「チョット待てぃ! 俺を可哀そうな人を見る目で見るんじゃあない!!」
「「え!? 違うんですか!?」」
「違うわ! 全くお前らは……そうじゃないんだよ、まぁ魔具のような物と話してただけだから気にするな」
「「良かったぁ」」
姉妹は安堵の声を上げ、流の顔を見上げる。
「そんな訳でこれから少し後片付けをしてくるから、お前達は正面の門の所で待っててくれ。出来るだけ屋敷から離れた場所にいた方がいい」
「えっと……後片付けですか?」
「ああ、もしかしたらお前達の悩みを解決出来るかもしれない」
「「え!?」」
思わず驚きの声を上げる二人。
「まぁ、どうなるかはちょっと不明なんだが、それなりに期待しててくれ。じゃあな」
「は、はい。お気を付けて!」
「ナガレさん無理しないでね!」
「ありがとよ。あ、それとお前達の人形は俺が預かっておくけどいいか?」
「ええ、私達は持てませんから」
流は頷くと木箱をアイテムバッグに入れて入口へと向かった。
「っと、これを正門の入口に転がっているカエルの折紙に見せてくれ」
アイテムバッグから取り出した紙に、日本語で「保護してくれ」と書いて渡す流。
「これは……?」
「え、カエルの折紙って何?」
「まあ行けば分かるさ、じゃあ屋敷から離れているんだぞ?」
「分かりました、じゃあまた後程」
「流さんも気を付けてね」
流が片手を上げながら「ああ」と言うと、そのまま扉から出て行く姿を見送りながら姉妹は姉だった物を見る。
「姉さん……これからどうなるか分からないけど、少しでも罪滅ぼしをしてみますね」
「お姉ちゃんの分も頑張るね。だから安心してね。ボルツお姉ちゃん、無事に先生と会えたかな?」
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「ふふ、なら今頃は百列蹴りされているね『シャーロット!』悪魔何かに頼りやがって! ってね」
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