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第五章:殺盗団を壊滅せよ
150:【深夜のお散歩をしよう】
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夜も遅いのにギルドの中は相変わらずの好景気で、呑めや騒げやの宴会が続く。
ふと気配を感じギルドの一角にある、落ち着いた空間を見ると、そこには変態が手招きしていた。
「ようジェニファーちゃん。元気だったか?」
「アハン♪ ボーイこそよん。聞いたわよん、殺盗団……壊滅させたんですって?」
「なんだ、流石に耳が早いな」
「一応ココの守護者ですからねん♪ さ、そこにお座りなさいな」
ジェニファーは自然な手つきでドリンクを作ると、それを流の前に差し出す。
それは見るも鮮やかな、青と紺が混ざり合う寸前で留めている不思議な物だった。
「お疲れ様♪ これはサービスよん」
「悪いね、いただくよ」
ジェニファーになら事の顛末を話すのは問題無いと、流は今日一日の事を話す。
「それはまた凄いわねん……しかも最後は悪魔でしょ? ミーですら数回しか会った事ないわよん。それによく倒せたわねん、偶然一度だけ倒したら白い粉になったわん」
「あぁそれな。あれは塩らしいぞ? そして倒し方は個体により弱点の場所が違うから、それを全部潰さないとだめだ」
「なるほどねん、納得だわん。あの時一思いに潰したからねん」
「本当に豪快なオネエだよ、アンタは」
潰された悪魔に同情しつつも、これからの事を少し相談する。
「この後、殺盗団絡みはどうなると思う?」
「そうねん……まさかのオルドラ大使が黒幕だなんて、ウチの領主様も黙っていないでしょう。しかも悪魔だったんですからね。最悪戦になるわん」
「やはりそうか……その引き金を引いたのは俺だと思うと、少し思う処があるな」
「とは言え、多分オルドラ側は知らぬ存ぜぬで通すでしょうねん。悪魔が勝手にやった事だってね」
「あぁ……」
確かにその方がオルドラが取る手法としては濃厚だった。
正式にオルドラが悪魔を召喚して、手駒に使っていた等と確証があれば断罪されかねないのだから。
そう考えると何故オルドラと契約した悪魔から、契約内容について漏れていないのか? またそれは現在契約中で秘中だからと考えても、これまでの歴史上でジェニファーも遭遇したと言う悪魔がいるのなら、なぜこの世界には悪魔との契約条件が知られていないのかが不思議に思えた。
「まぁ戦はそんなに心配しなくても大丈夫と思うわよん。ただ、この町で今後粛清の嵐が吹き荒れるでしょうね」
「確かにそうなるだろうな……」
二人はリットンハイムが指揮する部隊が入口から出て行くのを見ながら、明日には届けられるであろう「内通者達のリスト」を得た憲兵隊が次にとる行動を予測し、重い溜息を吐くのだった。
それから二時間ほどジェニファーと楽しく過ごした後、屋敷へと向かう事にする。
「ふぁ~。何時だ……って、もう二十五時半かよ」
日本人故、なぜか寝ないと一日が終わらないと思い込む癖がある流だったが、ギルドを出ると、そこには見慣れた顔が寝そべっていた。
「んあ? ラーマンじゃないか。まさか迎えに来てくれたのか?」
「……マ」
「おいおい、そこまでしてくれなくてもいいのに、悪いな本当に」
「……ママ」
「え? 別にいいけど……」
ラーマンは流を乗せると、おもむろに歩き出す。
その速度は何時もの街中での通常速度だった。
「でさ、どこへ行くんだい?」
「……マ」
「着けば分かるって? そりゃあなぁ~」
そのまま流とラーマンはヒタヒタと流の屋敷付近まで来ると、更に奥へと進む。
少し進むと、そこには大きな公園が見えて来た。
大きな公園に相応しい大木が数本見え、公園の照明たる魔具がぼんやりと照らしているのが幻想的だった。
そんな大木の中でも一際大きい木がある所へ、ラーマンは移動しているようだった。
「ラーマン、あの木が目的地なのか?」
「……マ」
「そうなのか。お、そろそろ見えて来たな……ってデカイなこれ!!」
近くまで来ると、その大きさが良く分かる巨大な木が立っていた。
葉は横に良く広がり、幹は直径十メートル程で、枝葉まで入れれば三十メートル程あるだろうか。
しかし背は三階建ての建物程と思ったよりも低かった為、遠くからはここまでの物とは思わなかった。
「で、これを見せたかったのか?」
「……まま~ま」
「え? しっかり掴まってろって? 一体何――うわ!?」
突如ラーマンは流を乗せたままとても器用に木登りをする。
背中で騒ぐ流を気にせず、スルスルと目的地まで登った。
「よ~来たのぅ、お若いの」
「は……え?」
木を登ると、そこには木々に囲まれた広く平坦な空間があり、その中央には白銀のラーマンが椅子に座っていた。
その空間は木の上なのに部屋のようになっており、魔具による照明が間接的に設置されて落ち着いた場所になっていた。
「え……っと、あんたは?」
「ふぉふぉふぉ。その子から聞いておらんか? ラーマンの長をやっとる颯と言う者じゃ」
「あ、いや聞いてたけど……ハヤテさん? 違うな、颯……この言葉でしっくりくる」
「うむうむ……それよりお主……やはり、そうなのか」
一人で納得し始めた長・颯は涙を流し始め、何度も何度も頷くのだった。
ふと気配を感じギルドの一角にある、落ち着いた空間を見ると、そこには変態が手招きしていた。
「ようジェニファーちゃん。元気だったか?」
「アハン♪ ボーイこそよん。聞いたわよん、殺盗団……壊滅させたんですって?」
「なんだ、流石に耳が早いな」
「一応ココの守護者ですからねん♪ さ、そこにお座りなさいな」
ジェニファーは自然な手つきでドリンクを作ると、それを流の前に差し出す。
それは見るも鮮やかな、青と紺が混ざり合う寸前で留めている不思議な物だった。
「お疲れ様♪ これはサービスよん」
「悪いね、いただくよ」
ジェニファーになら事の顛末を話すのは問題無いと、流は今日一日の事を話す。
「それはまた凄いわねん……しかも最後は悪魔でしょ? ミーですら数回しか会った事ないわよん。それによく倒せたわねん、偶然一度だけ倒したら白い粉になったわん」
「あぁそれな。あれは塩らしいぞ? そして倒し方は個体により弱点の場所が違うから、それを全部潰さないとだめだ」
「なるほどねん、納得だわん。あの時一思いに潰したからねん」
「本当に豪快なオネエだよ、アンタは」
潰された悪魔に同情しつつも、これからの事を少し相談する。
「この後、殺盗団絡みはどうなると思う?」
「そうねん……まさかのオルドラ大使が黒幕だなんて、ウチの領主様も黙っていないでしょう。しかも悪魔だったんですからね。最悪戦になるわん」
「やはりそうか……その引き金を引いたのは俺だと思うと、少し思う処があるな」
「とは言え、多分オルドラ側は知らぬ存ぜぬで通すでしょうねん。悪魔が勝手にやった事だってね」
「あぁ……」
確かにその方がオルドラが取る手法としては濃厚だった。
正式にオルドラが悪魔を召喚して、手駒に使っていた等と確証があれば断罪されかねないのだから。
そう考えると何故オルドラと契約した悪魔から、契約内容について漏れていないのか? またそれは現在契約中で秘中だからと考えても、これまでの歴史上でジェニファーも遭遇したと言う悪魔がいるのなら、なぜこの世界には悪魔との契約条件が知られていないのかが不思議に思えた。
「まぁ戦はそんなに心配しなくても大丈夫と思うわよん。ただ、この町で今後粛清の嵐が吹き荒れるでしょうね」
「確かにそうなるだろうな……」
二人はリットンハイムが指揮する部隊が入口から出て行くのを見ながら、明日には届けられるであろう「内通者達のリスト」を得た憲兵隊が次にとる行動を予測し、重い溜息を吐くのだった。
それから二時間ほどジェニファーと楽しく過ごした後、屋敷へと向かう事にする。
「ふぁ~。何時だ……って、もう二十五時半かよ」
日本人故、なぜか寝ないと一日が終わらないと思い込む癖がある流だったが、ギルドを出ると、そこには見慣れた顔が寝そべっていた。
「んあ? ラーマンじゃないか。まさか迎えに来てくれたのか?」
「……マ」
「おいおい、そこまでしてくれなくてもいいのに、悪いな本当に」
「……ママ」
「え? 別にいいけど……」
ラーマンは流を乗せると、おもむろに歩き出す。
その速度は何時もの街中での通常速度だった。
「でさ、どこへ行くんだい?」
「……マ」
「着けば分かるって? そりゃあなぁ~」
そのまま流とラーマンはヒタヒタと流の屋敷付近まで来ると、更に奥へと進む。
少し進むと、そこには大きな公園が見えて来た。
大きな公園に相応しい大木が数本見え、公園の照明たる魔具がぼんやりと照らしているのが幻想的だった。
そんな大木の中でも一際大きい木がある所へ、ラーマンは移動しているようだった。
「ラーマン、あの木が目的地なのか?」
「……マ」
「そうなのか。お、そろそろ見えて来たな……ってデカイなこれ!!」
近くまで来ると、その大きさが良く分かる巨大な木が立っていた。
葉は横に良く広がり、幹は直径十メートル程で、枝葉まで入れれば三十メートル程あるだろうか。
しかし背は三階建ての建物程と思ったよりも低かった為、遠くからはここまでの物とは思わなかった。
「で、これを見せたかったのか?」
「……まま~ま」
「え? しっかり掴まってろって? 一体何――うわ!?」
突如ラーマンは流を乗せたままとても器用に木登りをする。
背中で騒ぐ流を気にせず、スルスルと目的地まで登った。
「よ~来たのぅ、お若いの」
「は……え?」
木を登ると、そこには木々に囲まれた広く平坦な空間があり、その中央には白銀のラーマンが椅子に座っていた。
その空間は木の上なのに部屋のようになっており、魔具による照明が間接的に設置されて落ち着いた場所になっていた。
「え……っと、あんたは?」
「ふぉふぉふぉ。その子から聞いておらんか? ラーマンの長をやっとる颯と言う者じゃ」
「あ、いや聞いてたけど……ハヤテさん? 違うな、颯……この言葉でしっくりくる」
「うむうむ……それよりお主……やはり、そうなのか」
一人で納得し始めた長・颯は涙を流し始め、何度も何度も頷くのだった。
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