日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第五章:殺盗団を壊滅せよ

158:ドブネズミの噴水

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「ここがネズミの巣か……」

 一見すると倉庫のようにも見えるが、よく見ればそれは偽装と分かるほど凝った作りだった。

 窓には格子が嵌められ、侵入者を拒むような作りになっているし、三段ある階段を登ってすぐ横には、倉庫警備の担当者ような恰好の人物が、詰所であくびをしていた。
 その詰所の奥には武器が何時でも使えるように、何本も壁に置かれているのが見えるのだから。

「さて、どうするかな。『百鬼の眼』は参が調べたいって言うから置いて来ちまったしなぁ。『氷盾の指輪』はそのまま装備してるから問題ないが……とりあえず、今回は侵入じゃないから堂々と行くか! ならこれを使うべきだな」

 流は腰のアイテムバッグから銀色に輝く、「腕章」を出す。
 それはこの世界で流の身分を堂々と示す物であり、また自身の攻撃力と防御力を向上させる「巨滅の英雄++」の魔具であった。
 その素材は何かの金属繊維のような物で織り込まれており、巨滅兵を模ったエンブレムと++と刺繍がしてある物だった。

「うーん。不思議だ……ピンで止めてもいないのにずり落ちない。魔具スゲー」

 腕章に付喪神が宿っていたら、「そこじゃない!」と突っ込まれそうな事に感動した流は、そのまま階段を何事も無いように鼻歌交じりで上がっていく。

 すると当然の如く、詰所の担当者が流を止める。

「あ~何だね? ここは倉庫だよ。隣からの持ち出しの許可があるのかい?」
「あるぜ、ほらコレだ」
「はぁ? ……なぁッ!?」

 流は「巨滅の英雄章」を、グイッと見えるように引っ張って見せる。

「そ、それは巨滅の英雄の証ですか?」
「良く知ってるな、で……お前は殺盗団だな?」
「ッ!! て、敵――」

 美琴を高速抜刀し詰所ごと斬り捨てるが、それはあまりに綺麗な切断だった。
 中の男も敵襲を知らせるために一度立ったが、流の一閃により椅子に座るように腰を落とす。
 男はそのまま動かず、中も外も何一つ動かない綺麗なままで、まるで時が止まったようになる……ただ男の首筋には、一筋の赤い線がにじんでいただけだった。

「叫ぶな、ばれちゃうだろ? だが実にいい反応だった、お陰で探す手間が省けたよ。それより何だこれ、斬撃の威力上がってるぞ。これは巨滅の英雄章の効果か? ヤバイな。検証はまた後だな……」

 予想外に力が乗って斬れた事に驚きつつも、今の仕事に集中する。

「さてと、気配察知――いるな、上に十一……下に二十と言った所か。以外に多いぞこれ。仕方ない、まずは左側の部屋から訪問しますかね」

 建物の中に入ると中央に廊下があり、その左右には部屋があった。
 そこの気配を探ると、ばらけてはいるが二十の気配を察知する。

 その最初の部屋を開け、六人程の柄の悪い人相の男達へ流はこう言い放つ。

「タイヘンダー ボルツサマガ呼ンデルゾー(棒)」
「な、なんだテメーは!! なぜ頭目の名前を知ってる!?」
「はい、ギルティ~」

 両手の人差し指を相手に向けて「ギルティ」宣言をした後、美琴を逆刃にすると、六人を流れるように打ち捨て気絶させる。

「うむむ、手練れ? これが? まあいっか、楽な仕事は歓迎だ。さて……」

 隣の部屋へ続く扉があり、その先にも気配を感じる事三人。
 ヒタリ、ヒタリと歩く流は扉をゆっくりと開ける――が。

「んじゃ、おじゃましま~ッ!? うわっと、危ないだろ馬鹿! お客様に失礼だろ!」

 扉を開けた瞬間、その隙間からいきなりナイフが飛んで来たのを美琴で弾き、そのまま部屋へと侵入する。

「……そんな物騒な客はいらねぇよ。で、お前は何だ?」
「巨滅の英雄ですの!」
「馬鹿にしてるのかテメェ……もういい、殺れ」
「あぁもう、文明的なお話しましょうよ」

 そう流は溜息を吐きながらも、足を止めず三人を逆刃で打ち捨てる。

「グッハ……て、テメェ話し合いをするんじゃ……」
「漢ってやつはな、過去に拘らない生き物なんだよ」
「クッ……ソガ……」

 そう言うと、この部屋一番の責任者のような男は気絶する。
 そして美琴さんのジットリとした視線が、どこからか刺さる気がする。妖刀、げに恐るべし!

「さ、さ~て。続きをしましょうかね?」
 

◇◇◇


 流が二つ目の部屋を制圧する少し前、入口の詰め所へ交代の男が現れる。

「おいジル。交代の時間だ、出て来いよ。…………どうしたジル? 早く出てきやがれ」

 交代の男は何時までも返事の無いジルへ苛立ちを覚え、ドアノブを引く事にする。
 すると抵抗も無く「ドアの上はそのままで、自分の首辺りから下のドア」だけが静かに自分の手元へ引き寄せられる。

「……は? な、何だこれ。お、おいジル?」

 男は上に残っているドアをそっと開ける……。するとそこにはジルがいた。
 しかしジルは身じろぎ一つせず、目を見開き、座ったまま一点を見つめている。
 その時一匹のハエがジルの瞳に止まったかと思うと、そのまま飛び立つ。

「なぁ……冗談はやめろよ。そんな事しても俺は怖くねーぞ? 冗談やってねーで、交代の時間だ……おい、その首の赤い筋は何だ?」
「…………」
「オイ! ふざけるのもいい加減にしやがれ!!」
「…………」
「クッ!? このッ、いい加減にしねーか!!」

 男はジルの肩を強く引き寄せた瞬間――それは起こる。
 
「ぎゃああああああああああああああ!?」

 突如ジルの首が勢いよく真上に吹っ飛んだかと思うと、真っ赤で生暖かい噴水が狭い詰所の中に満ち溢れる。
 男はジルのネットリとした噴水をモロに被った事でパニックになり、詰所の壁へ手を付くと、壁は綺麗に崩れ去る。

 そしてジルだったものと、男は詰所の下敷きになった。
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