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第六章:商いをする漢
190:土産を楽しもう
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「嵐影はどこかなっと……。あ、いたいた」
嵐影は屋台の隣でお尻を付き、右手に果物を持ったまま流へ左手で手を振る。
「ちゃんと大人しく待ってたか? ご店主、うちの嵐影が世話になったな」
「おう兄ちゃんのラーマンかい? 大人しい所か大助かりだよ。あまりに美味そうに食べる物だから、買いに来る客が多くてな。いい宣伝になるぜ」
「ははは、良かったな嵐影。お店もお前のお陰で繁盛したみたいだぞ?」
「……マ~」
「そんなに美味いのか? ご店主。俺にも、いや商売に差し支えない量を全部売ってくれ」
「え!! に、兄ちゃん。本当かい? 常連のために少し残しとけばいいから、後は持って行ってくんな!」
「じゃあこの嵐影の背中に乗せれるだけ乗せてくれ。あと俺のアイテムバッグへ入れるから」
「あ、ああ! 分かった、ありがとうよ!」
露天から買った赤緑の実はとても甘く、さわやかな酸味とハイビスカスの花の香のような、優しい香りがする物だった。
露天商から積めるだけ買い込んだ流は、嵐影の背中に揺られながら幽霊屋敷へと急ぐ。
ふと上空を見ると、そらは高く青空が広がり、遠くには入道雲が見えている。
「はぁ~なんかこう言う瞬間ってとっても幸せだな。最近殺伐としすぎだったし……」
最近の事を思いながら、流は買った果物をかじりつつ、嵐影の背中でボーっと空を見上げるのだった。
嵐影に乗りそれなりの速さで屋敷へ戻ると、使用人達が出迎えてくれていた。
屋敷の前に到着し、嵐影から降りるとメイド達が一斉に「元の呼び名」で出迎えてくれる。
「「「お帰りなさいませご主人様」」」
「おおぅ? 一周回ったのね。セバスは中に?」
「はい、正面ホールでお出迎えの用意をしています」
「了解、いつもありがとうな。あ、そうだこれ食べてくれよ」
流は腰のアイテムバッグから先程買った果物をメイド達に渡す。
「わぁ~よろしいのですか?」
「ああ、何時も世話になってるから、ちょっとした礼だよ」
「ありがとうございます、後でいただきますね!」
「この嵐影の背中にある箱も全部そうだから、みんなで食べてくれ」
「ありがとうございます! 皆も喜ぶでしょう」
「頼む、それと今日客が三名来るからすまないが準備を頼む」
「承知しましたご主人様!」
メイドと別れ屋敷の扉の前に来ると自動で開閉する。
中には執事達三人とメイドが待っていた。
「お帰りなさいませ御館様」
「ただいまセバス。悪いが今日客が十九時に三人来る事になったんだが、問題無いか?」
「もちろん問題はございません。お料理は香辛料を使った物がメインでよろしいでしょうか?」
「ははは、流石だなセバス。それで頼む。それと土産に何か見繕っておいてくれ。男性二名に女性が一名だ」
「承知しました」
「おっと忘れる所だった。これを皆で食べてくれ。さっき食べたけどとても美味い果物だったんだよ」
アイテムバッグから果物を取り出すと、執事達三人とメイド達へ配っていく。
「なんと、御館様のお手づからいただけるとは。一同を代表してお礼を申し上げます」
「いやいや、気にするなよ。もっと気楽にいこうぜ?」
「ありがとうございます。では早速準備に取り掛かりますので、御前失礼致します」
「ああ頼むよ、皆もよろしくな」
「「「承知しました」」」
「嵐影は自由にしててくれ。三階に来てもいいし、庭で遊んでいても良いぞ」
「……マ」
「そっか、なら三階で待ってるからな」
嵐影が上れるようにすっかり改築された階段を、嵐影はするすると上る。
やがて流が魔具の昇降機で三階へ着くと、嵐影は流へ鼻を押し付けて迎える。
「おっふ。何だよ、今下で別れたばかりじゃないか。甘えん坊だなぁ」
「……マ」
「ははは、可愛い奴め~」
嵐影をエレベーターホールでモフモフしていると、執務室から壱と参がやって来る。
「壱:お帰りやす古廻はん。どったんでっか、嵐影とそんな所で?」
「フム。お帰りなさいませ、おいでにならないので見に来てみました」
「あぁ悪い。嵐影が甘えて来るからついな。ほれお前達もここをモフってみろよ」
「壱:おお~。ふかふかでんな~」
「フム。これはまた何と言う手触りでしょうか。これは癒されますなぁ」
「だろう? ラーマン自体が癒されるだけど、特にこの嵐影は別格なんだよな」
「フム。確か古廻様が名付けをなさった事で特殊個体になったと聞きましたが?」
「そうなんだよ、嵐影の爺さんもそうだったらしいんだが、とても大事な儀式らしいぞ」
「壱:そうなんでっか……はて、どこかで聞いた気が……?」
そんな話をしながら嵐影をモフっていると、もう一人のケモノ娘が扉から出て来る。
「おかえりなさいませ、古廻様。嵐影も良いですが、私をモフっても良いのですよ?」
「フッ……それは俺の美的センスへの挑戦と見ていいのかな、〆よ?」
「ひぅ!? し、失礼しました……その……夜に寝所でなら……」
「そうか……」
おもわず見つめ合う二人。流はその目をジッと見つめ、〆は潤んだ瞳で頬を染める。
嵐影は屋台の隣でお尻を付き、右手に果物を持ったまま流へ左手で手を振る。
「ちゃんと大人しく待ってたか? ご店主、うちの嵐影が世話になったな」
「おう兄ちゃんのラーマンかい? 大人しい所か大助かりだよ。あまりに美味そうに食べる物だから、買いに来る客が多くてな。いい宣伝になるぜ」
「ははは、良かったな嵐影。お店もお前のお陰で繁盛したみたいだぞ?」
「……マ~」
「そんなに美味いのか? ご店主。俺にも、いや商売に差し支えない量を全部売ってくれ」
「え!! に、兄ちゃん。本当かい? 常連のために少し残しとけばいいから、後は持って行ってくんな!」
「じゃあこの嵐影の背中に乗せれるだけ乗せてくれ。あと俺のアイテムバッグへ入れるから」
「あ、ああ! 分かった、ありがとうよ!」
露天から買った赤緑の実はとても甘く、さわやかな酸味とハイビスカスの花の香のような、優しい香りがする物だった。
露天商から積めるだけ買い込んだ流は、嵐影の背中に揺られながら幽霊屋敷へと急ぐ。
ふと上空を見ると、そらは高く青空が広がり、遠くには入道雲が見えている。
「はぁ~なんかこう言う瞬間ってとっても幸せだな。最近殺伐としすぎだったし……」
最近の事を思いながら、流は買った果物をかじりつつ、嵐影の背中でボーっと空を見上げるのだった。
嵐影に乗りそれなりの速さで屋敷へ戻ると、使用人達が出迎えてくれていた。
屋敷の前に到着し、嵐影から降りるとメイド達が一斉に「元の呼び名」で出迎えてくれる。
「「「お帰りなさいませご主人様」」」
「おおぅ? 一周回ったのね。セバスは中に?」
「はい、正面ホールでお出迎えの用意をしています」
「了解、いつもありがとうな。あ、そうだこれ食べてくれよ」
流は腰のアイテムバッグから先程買った果物をメイド達に渡す。
「わぁ~よろしいのですか?」
「ああ、何時も世話になってるから、ちょっとした礼だよ」
「ありがとうございます、後でいただきますね!」
「この嵐影の背中にある箱も全部そうだから、みんなで食べてくれ」
「ありがとうございます! 皆も喜ぶでしょう」
「頼む、それと今日客が三名来るからすまないが準備を頼む」
「承知しましたご主人様!」
メイドと別れ屋敷の扉の前に来ると自動で開閉する。
中には執事達三人とメイドが待っていた。
「お帰りなさいませ御館様」
「ただいまセバス。悪いが今日客が十九時に三人来る事になったんだが、問題無いか?」
「もちろん問題はございません。お料理は香辛料を使った物がメインでよろしいでしょうか?」
「ははは、流石だなセバス。それで頼む。それと土産に何か見繕っておいてくれ。男性二名に女性が一名だ」
「承知しました」
「おっと忘れる所だった。これを皆で食べてくれ。さっき食べたけどとても美味い果物だったんだよ」
アイテムバッグから果物を取り出すと、執事達三人とメイド達へ配っていく。
「なんと、御館様のお手づからいただけるとは。一同を代表してお礼を申し上げます」
「いやいや、気にするなよ。もっと気楽にいこうぜ?」
「ありがとうございます。では早速準備に取り掛かりますので、御前失礼致します」
「ああ頼むよ、皆もよろしくな」
「「「承知しました」」」
「嵐影は自由にしててくれ。三階に来てもいいし、庭で遊んでいても良いぞ」
「……マ」
「そっか、なら三階で待ってるからな」
嵐影が上れるようにすっかり改築された階段を、嵐影はするすると上る。
やがて流が魔具の昇降機で三階へ着くと、嵐影は流へ鼻を押し付けて迎える。
「おっふ。何だよ、今下で別れたばかりじゃないか。甘えん坊だなぁ」
「……マ」
「ははは、可愛い奴め~」
嵐影をエレベーターホールでモフモフしていると、執務室から壱と参がやって来る。
「壱:お帰りやす古廻はん。どったんでっか、嵐影とそんな所で?」
「フム。お帰りなさいませ、おいでにならないので見に来てみました」
「あぁ悪い。嵐影が甘えて来るからついな。ほれお前達もここをモフってみろよ」
「壱:おお~。ふかふかでんな~」
「フム。これはまた何と言う手触りでしょうか。これは癒されますなぁ」
「だろう? ラーマン自体が癒されるだけど、特にこの嵐影は別格なんだよな」
「フム。確か古廻様が名付けをなさった事で特殊個体になったと聞きましたが?」
「そうなんだよ、嵐影の爺さんもそうだったらしいんだが、とても大事な儀式らしいぞ」
「壱:そうなんでっか……はて、どこかで聞いた気が……?」
そんな話をしながら嵐影をモフっていると、もう一人のケモノ娘が扉から出て来る。
「おかえりなさいませ、古廻様。嵐影も良いですが、私をモフっても良いのですよ?」
「フッ……それは俺の美的センスへの挑戦と見ていいのかな、〆よ?」
「ひぅ!? し、失礼しました……その……夜に寝所でなら……」
「そうか……」
おもわず見つめ合う二人。流はその目をジッと見つめ、〆は潤んだ瞳で頬を染める。
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